悪いお話が二つ
投稿時に何重かでコピーしてしまったようです。
確認不足で申し訳ありません。
修正しました。
「とりあえず、悪い話であればここで話すのもなんだから奥の部屋に行こうか」
ハインツに連れられ以前ブラッド・ウルフの事を話した部屋へと入った。
向かい合うように置かれたソファーにお互いに座るとハインツが口を開いた。
「それじゃあ、あまり悪くない方の悪くない話から頼むよ」
どっちのほうが悪くないのかな?俺には判断できないよ。教えてナイえもん。
《ギルドに対する敵対行為と取れる行動の方が重大な件になるかとおもいます》
つまりイグニスの事から話せば良いんだね!
「明日の昼くらいに竜種がアトシュに来るって言えば伝わります?」
「成程、竜種が街に・・・それ一大事だよね?」
普通に竜種が街に来るなんて言ったら驚いてしまうか。一応イグニスのこともちゃんと伝えておかないとね。
「安心してください。ここに来る竜種は知能があるので。竜種の中では龍王と呼ばれているそうですよ」
「そうですか、龍王ですか。って龍王!?」
あれ?ハインツ龍王知ってるの?普通古代竜までじゃなかったっけ?
「ハインツは龍王について知っているんですか?」
「ああ、僕達エルフの中でも一部しか知らないけどね。各属性の竜種の頂点に立つのが龍王だと伝えられているよ」
どうやらエルフの一部では龍王の事が伝えられていたようだ。
世間に伝えてしまうと龍王に挑む馬鹿が現れる可能性があるため、エルフの中でのみ秘匿されているらしい。
「それで、その龍王がこの街に何のようがあってくるんだい?」
どうやらハインツは龍王がこの街にやってくることについて現実を受け入れたようだ。
「途中で気が変わったりして別の所言ってくれたら嬉しいんだけどなー」
受け入れていなかったようだ。
「他のところに行くのはありえないと思いますよ。火龍王、イグニスの目的は俺ですから」
「君が目的なのか。それなら君が街を出ていけば解決だね!」
え、俺街を追い出されるの?
「別に街を出ていってもいいですけど、イグニスとはアトシュで待ち合わせしているので、俺がいない事に気がついたイグニスが何をするかわかりませんけど。それじゃあ、後はがんばってください」
そう言って席を立とうとする。
「ごめんごめん。冗談だからこの街に好きなだけいてください」
イグニスを止めるすべは無いからね。俺がいないと知って暴れられるくらいなら、俺が街にいたほうが安心だよね。
「まあ、正確には俺だけが目的じゃないんですけど」
そう言いながら、イグニスとの出来事をハインツに伝える。
「ふむ。つまり、火龍王イグニスが君と会話をしたいが為にレストホルン家の息子さんの奴隷の主を君に変更したいということか」
確かにざっくり言うとそんな感じだな。
「こればっかりは仕方ないかな。街を滅ぼされるなら奴隷を差し出したほうがレストホルン家もいいだろう」
一体幾ら払えば納得してくれるかなー。と言いながらもハインツは納得してくれたようだ。
「一つ目の話はこれで終わりです」
「そういえばまだ一つ目だったね。それに軽い方からお願いしたと思うんだけど…。もう片方はもっと重いの?」
ハインツの顔が少し引きつっている気がするけど気のせいだろう。
「先程の話とつながるんですけど、フレデリックがコルト山の麓まで来て奴隷を回収して行きました。因みに報酬は支払わないと言っていましたよ」
「よし、今から冒険者ギルドアトシュ支店はアトシュから撤退します」
判断早!まあ、イグニスが何やるかわからないし明日の昼までにフレデリックを何とかするよりも逃げるほうが楽だからね。仕方ないね。
「フレデリックの行動だけでは流石に冒険者ギルドの撤退はできないのではないですか?」
冒険者ギルドが街から撤退するのは本当に最後のはずだけど・・・。
「確かに、今回の依頼を達成し終えた時点でレストホルン家には少しお灸を据えようと思っていたんだけどね。流石に依頼を横から掠め取って報酬を支払わないように依頼主が行動するのは完全にアウトなんだよ」
依頼主が達成直前で奪い取ってしまえば依頼主だけが特をする形になる。そうなると依頼を受ける冒険者がいなくなってしまうため、そんなことを許すことはできない。
「一応話はしてみるけど、果たしてどうなることやら」
どうやら、フレデリックの態度は昔からあんな感じらしい。生まれながらに伯爵家、レストホルン家次期当主として育てられたフレデリックは自分は他の人間と違うという意識が出来上がっているらしい。家族が多少咎めても気にもしないとのことだ。
フレデリックの父も少しその傾向が見られたものの、冒険者ギルドに対立するような行動は一切無かったらしい。
ハインツが愚痴のように漏らした情報だと、見切るのも時間の問題に思えるな。
「今日フレデリックが戻り次第レストホルン家に依頼に対する抗議と奴隷に関するお願いをしてみるさ」
多分奴隷は渡してもらえないと思うけどね。と言いながらも行動はしてくれるハインツさん素敵。
「これで報告は終わりです。今日のレストホルン家の件宜しくお願いしますね」
あとはハインツにまかせてしまおうと思い、席をたとうとしたら。
「ああ、そのことだけど、一応証言者として一緒に来てもらえるかな?」
「行かなきゃダメですか?」
「行かなきゃダメです」
笑顔で返すハインツから少し圧力を感じる。『面倒事押し付けたんだからお前も巻き込まれろ』とか思っていそう。
「・・・わかりました。うちのパーティーメンバーのこともあるので夕方またギルドに来ますよ」
またフレデリックに関わらないといけないから今回も二人は留守番かな。今度は宿で待ってもらえればいいか。
そんなことを考えつつ、ハインツに挨拶をしてからギルドを後にした。
「えっと・・・それは困るんですけど。」
「そうよ。私達が何したっていうのよ」
馬車を返却しに行った二人を迎えにレンタル馬車の店まで着くと、フィーアとユイがなにやら店主と言い合っている。
「フィーア、ユイ一体どうしたんだ?」
「ケイ様、すいません。ここの店主が保証金を返却しないと言っているため、ちょっと揉めていました」
どうやらレンタル馬車店の店主が保証金を返したくないようだ。
「理由を聞かせていただいてよろしいですか?」
言葉に圧を乗せて店主へ問いただす。
「馬の様子がおかしいんだよ。倒れられたら補充しないといけないからな。だから保証金を返すことはできない」
成程、どうやら素人には分からない馬の体調でごまかして金をくすねる気らしい。
「わかりました。それでは保証金は馬の補填に当ててください」
「なんだ兄ちゃんわかってるじゃないか。嬢ちゃんたちも兄ちゃんを見習うんだぞ」
ニヤニヤとしている店主を見ながらフィーアとユイが少し寂しそうな顔をしている。
二人にこんな顔をさせたのだ。これで終わらす気は全く無い。
「それでは、この件は冒険者ギルドへ通達しておきますね」
「な、なんで冒険者ギルドが出てくるんだ?兄ちゃん達は冒険者かもしれないけど依頼で使ったなら自己責任だろ?」
「それが、今回の依頼はギルドから緊急依頼として依頼されていたので、何か起きた時の責任は全てギルド側に取ってもらう予定だったんですよ。緊急依頼ということで馬に少し無理をさせてしまったかもしれないので、ギルドに説明しておきますから安心してください」
俺が説明をすると店主の顔が真っ青になっていく。
商人が冒険者ギルドを敵にまわすとどうなるか。街単位ですら見捨てられるのに個人なんて簡単に切り捨てられるだろう。最悪ギルドから違法な商売を行っている商人として処分される可能性もある。
「な、なんだ。緊急依頼なら言ってくれよ。俺達商人はギルドにはお世話になっているから緊急依頼なら馬の補填何て気にしないから安心してくれ」
店主はそう言いながら保証金の返金処理を行ってくれた。
「なんか悪いな」
「気にするなよ。緊急依頼ならしかたないんだよ」
悔しそうに言う店主を脇に置いてフィーアとユイを連れて店を出た。
後でハインツに会う時にこの店の事を伝えようと心に誓った。
「ケイ様、ありがとうございます。流石ですね」
「ほんとよね。私達が何言っても聞き入れなかった店主を一瞬で言いくるめちゃうんだもの」
「いや、仮に保証金が帰ってこなかったら本当にギルドに請求する予定だったからね」
ぽかんとしている二人を何とか動かして宿へと向かう。
明日までの予定なんかを二人に伝えないとね。
そろそろ仕事が落ち着くので更新増えるかもです。




