コルト山から下山
『金狐化』それがクレハの持つユニークスキルだ。
鑑定レベル9で得たスキル詳細確認の出番だ。スキルの詳細はいつもナイが教えてくれるからね。流石のナイも他人のユニークスキルの詳細までは分からないらしい。
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金狐化:全身の毛が黄金に輝き身体能力が増大する。スキル発動中スキルレベル-1本分の尻尾が増え、尻尾の数に応じて効果が増大する。スキル発動中は魔力が消費され続けるがスキルレベルが上がると消費量は減少する。
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純粋な強化スキルみたいだがスキルレベルに応じて威力が強化されるスキルらしい。スキルレベルに応じて尻尾が増えて最終的には九尾になるらしく、ちょっとだけ厨ニ心が動かされた。
これだけ強力なスキルを持つクレハをフレデリックに渡したらどうなることやら。
「アイラの言うとおりクレハも一緒に俺のところに来れるように説得できるか?」
あの馬鹿の元にクレハを置くよりはアイラと一緒に俺の奴隷としてしまったほうが彼女の今後を考えれば少しはマシになると思う。
流石にあれだけ周りに怒鳴り散らせる奴だ。気に食わないとかいう理由だけで奴隷に手を出す可能性もある。
『そこの獣人もか。一人増えた程度ならたいして変わらぬよ』
イグニスも協力してもらえるようだ。
「ということだけど、クレハはいいかな?」
「ん、大丈夫」
本人の了承が一番最後になってしまったが問題ないようだ。
「よかったー。クレハちゃんこれからも一緒だね―」
アイラはイグニスに連れ去られる前からクレハと一緒だったらしく、離れるのが寂しかったようだ。
「まだ決まったわけじゃないぞ。君たちの今の主人を説得してからだ」
流石に龍王に脅されて拒否するとは思えないが、あの性格だから少し苦労しそうな感じはする。
『たかが人であろう?我がお願いすれば了承するであろう。仮に拒否するならその場で殺してしまえばいい。奴隷であれば主が死ねば解放されるではないか』
「殺す時は本当に最悪のときだけにしてくれよ。できるだけ穏便にな」
フレデリックが少しでも嫌がった瞬間に殺しそうなイグニスをなだめる。
『お前が言うのであれば仕方あるまい。だが、お前たちに危害を少しでも与えようとしたら容赦はしないからな』
「勿論俺だって仲間が一番大切たからな。俺が貴族に手を出すのはまずいから何かあったら頼むよ」
クレハの事も簡単にだけど片付いたので、そろそろ山を下りるか。
因みにイグニス戦が片付いた所でフィーアに渡すための魔力成長促進スキルを会得してある。
「二人共準備はいいかい?今日は山を降りたらそこで野営するから」
「わかりましたー」
「ん」
二人共準備は問題ないようだ。そもそも二人共何も持たず、服すら着ずにここに連れてこられているんだから準備も何もないんだけどさ。
『今日は野営ということは明日街に向かうのか。それなら今日はお前達と共にいてやるとしよう』
「悪いが止めてくれ。馬車の馬が怖がる」
魔物ですら怖がる馬の前に竜種が現れたらどうなるか想像もできない。最悪ショック死とかしかねない。
「そういうことだから、明後日の昼頃に街の近くまで来てくれ。ギルドマスターには話つけておくから」
『それなら仕方あるまい。明後日の昼に街へいくとするか』
どうやらイグニスも納得してくれたようだ。良かった、保証金は守られたな。
「それじゃ、俺達は行くからまた後でな」
そう言ってイグニスの元を立った俺達は山を下っていたが1つだけ問題があった。
「そういえば二人共何も着ていなかったんだよな。靴もないの失念してた」
そう、二人共裸足なのだ。山を下るのに基本的には土の地面を進んでいるが時々小石を踏んで怪我をしてしまっている。
「アイラ一回止まって、また怪我してる『ヒール』」
アイラが怪我をしてしまったので一度呼び止めて回復魔法をかける。
「ありがとうございます。でもそんなに心配しなくてもこれくらいの傷なら大丈夫ですよー?」
今までの環境のせいなのか、奴隷だからかアイラもクレハも怪我をしても気にせず歩こうとしていた。
「傷は大した事ないの分かるけど、そこから病原菌が入ったら大変だからね」
元の世界でもこの世界でも医療知識は無いが、破傷風等の危険もあるから怪我をして直ぐに直すべきだろう。この世界にはワクチンどころか抗生物質もないだろうし。
「クレハも、怪我したら直ぐに言ってくれ。さっきみたいに隠さないように」
「さっきのは言ってないだけだもん」
「屁理屈言ってないで次はすぐ言うこと。いい?」
「ん」
少しゴネるクレハを宥めつつしっかりと報告するよう言いつける。ホウレンソウ大事。
「それにしても二人共なんでそんなに俺に回復されるの嫌なんだ?」
怪我をしたら俺に言うだけなのに、何をそんなに嫌がるのか分からない。
「私達は奴隷なので、マスターの魔力を無駄に消費するわけにはいけませんからねー。それに、マスターは先程イグニスさんと戦っていたので魔力も減っているのかなーって思いまして」
成程、奴隷は主人の手を煩わせるわけにも行かないし、イグニスと戦って消費している俺を心配してくれていたのか。
「奴隷とかその辺は気にしないでくれ。アイラに何かあったら俺がイグニスに何て言われるかわからないし。魔力もある程度回復できているから安心してくれ」
「それでしたら怪我したらすぐに言いますねー。クレハちゃんもいい?」
「ん。大丈夫」
これで少しは二人共自己申告してくれるであろう。
「そういえば二人はどうして奴隷に?犯罪を犯したようには見えないけど」
これから一緒に過ごすのだろうし、一応二人の事を知っておいたほうが良いだろう。
「犯罪奴隷じゃないですよー。私はお昼寝してて気がついたら奴隷狩りの人たちに捕まっちゃってました。その後フォーカスの奴隷商に運ばれた後にフレデリック様に購入されました」
成程、人攫いに捕まって奴隷商に売られたのか。
「奴隷商に買われた時にスキルを正直に答えたら思った以上の金額になっちゃったみたいなんですよねー。召喚術は一国に10人もいないレアスキルみたいですから」
召喚術めっちゃレアスキルだったよ。
「でも、マスターの魔術系スキルの数も凄いですよねー。風、空間に光も使えるんですもんね。しかもかなり高レベルの魔術強化のスキルもお持ちですよね」
「ああ、俺のスキル知らない人から見るとそう思えるのか…」
俺が使っている魔法は個人魔法1個のみだが、使っている魔法はこの世界の魔法に当てはめると何種類にもなる。それに、魔法の威力は基本的に同じ魔法であれば、同じ威力になるが、俺の魔法は自由に出力を変えることが出来る。
この世界で魔法の威力を強化するためには『魔術強化』等のスキルが必要となる。一応魔法を使い続けていればそのうち覚えられるスキルらしいが・・・。
「ちがうんですか?ま、まさか!もっと魔術系スキルを?」
「俺のことはそのうち話すから安心してくれ。今回のことが終わり次第だけどね」
流石に完全に仲間になりきっていない二人に俺の秘密について教えるわけにもいかない。
「うちは両親が奴隷だったから」
つまり、生まれながらにして奴隷だったということか。偶々フォーカスの奴隷商に居た所をフレデリックが購入していったらしい。クレハは未成年かつ奴隷の為スキルはわからなかったが、フレデリックはクレハを見つけて直ぐに購入に踏み切ったようだ。
「フレデリック様は鑑定石を持ち込んで居たようなの。私も調べられたから間違いないわよー」
どうやら高額な商品の購入で確実を期す為に高価なアイテムである鑑定石を使用していたようだ。
「成程、それでクレハのスキルを確認して購入に踏み切ったわけか」
あいつがユニークスキル持ちを欲しくなるのは当たり前だろう。
「パパにはうちのスキルは信頼できる人以外には教えないように言われてた」
クレハの父は高位の鑑定スキル持ちだったようで、クレハのスキルについては知っていたようだ。
「獣人族は稀に種族ごとに身体強化系のユニークスキルを持った人たちが現れるんですよー。クレハちゃんもその一人ってことです」
おいアイラ、何故お前が威張る。
「成程、それならそのうちクレハには鑑定阻害系のアイテムを身につけてもらったほうがいいかもな」
以前俺のスキルを鑑定できないようにナイに訪ねたら鑑定を阻害するアイテムやスキルの存在を教えて貰えたため、そのようなアイテムが存在することは知っていた。
「ん、その辺はお兄ちゃんに任せる」
二人について色々話しているうちに麓までたどり着いた。
「やっと帰ってきたのか!さあ!二人を返してもらおうか」
フレデリックよ何故お前がここに居る。
おまけ
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「ご主人遅いわね」
「ねえ、ユイちゃん。助けに行った奴隷の人が女の人だけだったらどうします?」
「そうね、あの馬鹿のことだから購入する奴隷は女が多いんじゃ…ってフィーア何してるの?」
「何もしてないですよ?ただケイ様に近づく女の人を見極める準備をしているだけですよ」
「見極めるだけでなんで包丁研いでるのよ!」
「なに変なことを言っているんですかユイちゃん。槍だと間違えて殺しちゃうかもしれないじゃないですか」
「変なこと言っているのは貴方の方よ!うぅ…ご主人早く帰ってきて!」
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おまけ話はフィクションです。
こう言えってフィーアに言われました。
昨日投稿する予定が忙しくて今日になってしまいました。
申し訳ありません。
次の投稿は週末あたりになるかと思います。
追記
活動報告にも書きましたが、twitterアカウント作りました。
そちらにも感想、ダメ出し等していただいて大丈夫です。




