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奴隷救出

 異世界生活28日目、俺は二人に馬車の番を頼みコルト山を登っていた。

 ナイにレッドドラゴンの位置を確認してもらった所、4時間程度でレッドドラゴンへ辿り着くようだ。

 因みにレッドドラゴンに囚われた奴隷の数を教えてもらった所二人だということも判明した。昨日確認しておけばもう少し夕食も豪華になっていたかもしれないな…。昼はナイの索敵圏外だったから仕方ないけど。


 「もうそろそろ目的の場所に着きそうだけど、一応『特技生成(スキルクリエイト)』のクールダウンが終わる直前に乗り込むか」


 レッドドラゴンは『個人魔法(オリジナルスペル)』で対竜魔法を作ればなんとかなるかもしれないけど、もしもの時のために残しておく予定だ。


「少し早く着きそうだから軽く昼を食べてから行こうかな」


 出発前にフィーアが作ってくれた弁当を収納から取り出し昼食を取る。収納内では時間経過が無いのでできたて同様だ。



 昼食を食べ終えるとレッドドラゴンが居る山のくぼみ――カルデラへ到達した。


「あれがレッドドラゴンか」


 カルデラの中央部分に居る巨大な赤い生物、あれがレッドドラゴンかとナイに確認するまでもない。

 ここに来るまでの道すがらナイに竜種について幾つか確認したことがあるが、人類は竜種の事を殆どわかっていないらしい。普通の魔物と同じように魔素から生まれるが、生まれたばかりの竜種は幼生体として生まれ歳とともに成長するらしい。

 また、長年生きた竜種は魔族と同じ様に魔力によって活動を行えるようになる。魔族と違い、魔力を取り込むことではなく、一定の歳と強さに達すると魔素の体から完全な竜の体へと変わるらしい。

 完全な竜の体へ至る前の個体を下位竜、変わった個体を上位竜と呼び、更に歳を重ねて強くなった個体を古代竜と呼ぶらしい。

 因みにフィーアが装備しているウォータードラゴンの鎧は下位竜で、魔素で構成されているらしい。

 今回相手するレッドドラゴンもウォータードラゴンと同様下位竜のため、比較的安全だといえるらしい。竜種は歳を重ねる毎に強くなるが、ハインツは若い個体だから大丈夫とか言っていたな。


「流石にドラゴン相手にするのはちょっと怖いな」


 これまで何体もの魔物を相手してきて恐怖を感じることは殆ど無かったが、ドラゴン相手だと流石に恐怖を感じる。

 よく考えればいきなり命のやり取りやらされているのに恐怖を感じなかったのは俺が持つスキルに安心していたためだろうか。いや、それでも命のやり取りを行う中で恐怖を感じないのは少しおかしい気がする。


「あの女神のせいかな」


 転生時に恐怖耐性を植え付けられてたとしたら納得がいく。魔物がいるこの世界に転生させる時にプレゼントとして恐怖耐性をくれたのだろう。できれば一言欲しかった。

 ドラゴン相手に何も感じないのは流石におかしいからこれが正常だと思っておこうかな。

 そんなことを考えながら『個人魔法(オリジナルスペル)』で姿は勿論、気配や魔力を消して奴隷の基へ向かう。本当便利なスキルだよね。


 拐われた奴隷はレッドドラゴンから少し離れた場所にいるらしく、馬はいなくなっているが馬車の荷台もそこにある。


「助けに来ました。びっくりしたかと思いますが、大きな声を出さないでもらえると助かります」


 荷台に近づき、そこにいた二人の奴隷に姿を消したまま声をかける。

 声を掛けた奴隷は人種でなく、エルフと獣人の少女だった。エルフの方は見た目と年齢が一致しているのかわからないんだけどね。

 エルフの少女は見た目的には俺と同じくらいだろうか、何より体の一部分が大きい。馬車の番をしている二人では話にならないレベルだ。髪は綺麗なエメラルドグリーンで目も同じ色をしている。

 方や獣人の少女は背丈はユイより小さい。顔立ちも少し幼く見えるので、ユイより歳下なのだろう。栗色の髪に金色の目を持つ。狐耳と尻尾があるので、狐の獣人だろう。

 二人は声をかけた時に少し驚いた反応をしたが、状況を理解したのか黙って頷いた。


「理解してくれてありがとうございます。ここから連れ出すんですけど、先ず服を着てください」


 そう、何故か二人は全裸だった。奴隷の搬送中に拐われたのだからその時の格好だと考えれば納得出来るが…。収納から俺のシャツを2枚取り出して二人に渡すとそれを着用してくれた。エルフの子はシャツ一枚だと丈が足りないようなので下も追加で渡した。獣人の子はシャツ一枚で問題なさそうだな。

 食事を暫く取っていないだろうが、この場で食料を渡すわけにもいかないから、山を降りるまで待ってもらうことになる。

 二人をどのように連れ出そうか考えているとふいに声が頭に響いてきた。


『人よ、我が領土へ足を踏み入れて何のようだ』


 どうやらレッドドラゴンに見つかってしまったようだ。気配も魔力も姿すら遮断しているのになんで分かるんだよ。

 というか、レッドドラゴンって話せるのか。


「あんたに連れてこられた二人を救いに来たんだ」


 姿を表しレッドドラゴンへ話しかける。


『我は話し相手を求めて人を連れてきているだけだ。満足すれば返そうと思っておったわ』


 どうやらレッドドラゴンが人を拐うのは話し相手を求めてらしい。


「それで、どれ位で満足して二人を開放するんだ?」

『うむ、そうだな…。1年程でどうだ』

「一年も話し相手になるのかよ!それにその間の食事はどうするんだ?」


 このレッドドラゴンが飽きるまでとかじゃないからまだ短いけど…。


『我の食事を少し与えようとしているのだが、二人に拒否されてしまうのだ。人は皆我から食事を分け与えられても拒否して餓死してしまうからな。まあ、死体は我が糧となる故心配するな』


 餓死させて食べる習慣の理由がわかりました。話し相手求めるのが原因です。


「ち、因みに与えようとしている食事って?」

『この山の麓で取れる動物の肉だ。肉だけ渡すと殆どがそんな物食べられないと文句を言ってくる』

「生肉をそのまま渡しても人は食べられないぞ。火を通したりしないとな」

『成程、人は肉をそのまま食べることが出来ないのか。稀に食べるものもいたが長生きはしなかったな』


 野生の獣の生肉を処理もせずに食べたら寄生虫や病原菌に侵されてしまうだろう。


『良いことを聞いたな。これからは人を連れてきたら肉と火を渡してやろう。火なら我が炎から作ってやれば良いのだしな』


 あ…、与えちゃいけない知識を与えちゃいけない奴に渡してしまったようだ。


『人よ礼を言うぞ。これで我はこれから先連れてきた人を殺してしまわずに済みそうだ。

「できれば肉だけじゃなくて野菜とか果実とかも与えてやってくれ。勿論塩なんかもね」

『なんだ人はまだ色々と気を使わなければいけないのか。面倒なものよ」


 そんなことを言いながらも楽しそうに俺の話を聞いているレッドドラゴンだった。


『うむ。お前のおかげで我の知識もまた増えた。これで煩い水龍王に文句を言われることも減るだろうな』

「水龍王って?」

『ああ、そういえば人は我ら竜種を3つに分けているようだな』


 先程ナイに聞いた下位竜、上位竜、古代竜のことだろう。そう思いレッドドラゴンに伝える。


『我ら竜種の中でも大体その認識だがその中にもう一つだけ上の存在がいるのだよ。龍王と呼ばれる各属性最強の竜種がな』


 各属性最強、つまり火水地風光闇空無の属性の竜種で一番強い個体がそう呼ばれるのだろう。


『龍王になるためには龍王を倒すか指名されて後継者となるしか無いから必然的に最強の一匹になるのだよ』


 成程、龍王になるためのシステムも存在しているらしい。


「そういえば、お前はなんでそんなことまで知っているんだ?」

『我は火龍王イグニスだからな!』


 おい、レッドドラゴンとか言ったエルフ一発殴らせろ。


竜種についての説明が多いですがイグニスさんも登場です。

エルフと狐っ娘はもう少ししたらちゃんと登場するので安心してください。


それにしてもシャツ一枚の幼女って最高ですよね。


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