ブラッドウルフ1
朝食を食べ、森の中に入るとブラッドウルフのいる場所へ一直線に進む。
異世界生活25日目、さあブラッドウルフ狩りをしようか。
「ブラッドウルフはこの先にいるようだ。これより少しでも先に行くと奴の感知範囲に入りそうだからここで最終確認を行おうか」
昨夜のうちに打ち合わせは終えているため、簡単におさらいをしておく。
「先ず、俺がブラックウルフをできるだけ処理する為に広範囲の魔法を使うから処理しきれなかったブラックウルフを二人で片付けてくれ」
ブラックウルフは20体程居る。その為、どうしても倒しきれない部分があるだろうからね。
「ブラックウルフが全滅した所でブラッドウルフとの戦闘だ。二人がブラックウルフと戦っている時はできるだけ俺がブラッドウルフの気を引き付けておく」
ブラッドウルフを引きつける役を二人にしてもらうのは危ないからね。広範囲魔法で負傷しているブラックウルフなら危なげなく処理できるはずだ。
「わかったわ。ブラックウルフを倒す時は必要に応じてライトアローも使っていくわね。そっちの方が早く処理が終わりそうだし」
「そうだね。但し、3発までだよ。3発使う場合も他の魔法を使いすぎないように気をつけて」
今のユイに使えるライトアローは5発だけだ。使いすぎて倒れられても困るし、ブラッドウルフ戦に魔力を温存しておきたいからね。
「わたしは魔力を使わないように戦うのですよね?」
「そうだ。勿論、危なくなったら使ってもらって構わないよ」
これで昨日のおさらいは完了だ。後はブラッドウルフ戦をどうするか。それは実際にブラッドウルフと相対してから考えると決めている。敵の能力わからないからね、仕方ないね。
「それじゃ、行くよ」
打ち合わせを終え、魔物の群れへ向けて歩きだす。
《ブラッドウルフに感知されました。ご注意ください》
あちらもこっちに気付いたようだ。
「ブラッドウルフがこっちに気付いたみたいだ。フィーア、ユイ気をつけて。」
小声で二人に伝えると小さく頷いて返事をしてきた。
「先ずはブラックウルフから!『ウインドカッター・レイン』」
ブラッドウルフの周りにいるブラックウルフに向けてスライム相手に一度だけ使用した範囲魔法を発動する。今回は前回よりも広い範囲だが、増やし続けた魔力と消費削減のおかげで魔力が枯渇することもなかった。一応ブラッドウルフも範囲に入っているから当たってもらえるとと嬉しいな。
《全ブラックウルフへの直撃を複数確認しました。残個体数は7です。ブラッドウルフへのダメージは確認できません》
予定通り全てのブラックウルフへ当たったようだ。ブラッドウルフにダメージは無かったようだけど…。魔力の残量はどれくらいだろう。
《魔法使用後の魔力量は全体の70%程度です》
30%くらいしか消費していないのか、思っていたより魔力量が増えているようだな。
「フィーア、ユイ!残りのブラックウルフは7体だ!ダメージは入っているから後は任せたぞ!」
「「はい!」」
作戦通りに生存しているブラックウルフを二人に任せて俺はブラッドウルフの相手をしようかな。
ナイに案内されてブラッドウルフの前までやってきた。どうせ相手にも位置はバレているのだから隠れる必要も無いだろう。
ブラッドウルフは5m程のサイズの狼で黒い毛と赤い毛が混じっているようだ。
「GAAAA!!」
こちらを確認したブラッドウルフが威嚇してくる。
『ウインドカッター』
躊躇いなく風の刃をブラッドウルフに放つ。しかし、ブラッドウルフに当たった瞬間に風の刃が弾かれてしまった。
「オークを一撃で倒せるくらいのウインドカッターでも傷一つつけれられないのか…。これは厄介だな」
《ウインドカッター直撃前に魔力反応がありました。詳細の確認の為、鑑定スキルの使用を要求致します》
俺はナイに言われるがままに鑑定スキルを発動する。
【
種属:ブラッドウルフ(魔族)
所有スキル:血操術Lv7、自動回復Lv5、指揮Lv2
】
思った以上にスキルレベルが高いな。先程のウインドカッターを弾いたのは血操術かな?他にそれっぽいスキル無いからね。
《ケイ様の想像通りです。ブラッドウルフを覆う毛の中で赤い毛は自身の血を通し続けているようです。その血を使用して血操術で一時的に防御力を上げたようです。》
成程、全身を覆う毛に血がある為、全身が武器であり防具でもあるのだろう。
それと種属にある魔族ってなんだ?
《魔物は魔素から生まれ、その体は魔素で構成されています。しかし、魔力を吸収し続けることにより極稀に体の構成が魔素から実体化する事があり、実体化した魔物のことを魔族と言います。魔族は通常の魔物と違い、魔力を用いた攻撃を行うことができるようになるため、通常の個体より強力になります》
成程、魔物が使う魔法は魔素を消費して使う為、魔力を消費する魔法と比べて威力が多少落ちる。勿論、階級が高い魔物になれば消費する魔素量が増えるため脅威となるが。
魔力を集める方法は、魔力を持つ生物を大量に食すことらしい。つまり、このブラッドウルフは大量に人間を食してきたのだろう。
「思ったより厄介だな…」
ブラッドウルフが有する血操術の防御力がどの程度なのか分からないが、その防御力を上回る攻撃をしないといけないのだ。一応、血操術の発動にも魔力を消費するようなので、どちらが先に魔力がなくなるか消耗戦に持ち込むこともできるだろう。
「とりあえず、どれくらいでダメージが通るか確認しておくか『ウインドカッター』」
先ずはさっきの2倍からだ。飛ばされた風の刃は先程と同じように弾かれる。
「これでダメなのか…。それじゃあ次だ『ウインドカッター』」
次は更に2倍の威力だ。これでダメだと面倒くさいなあ。
「GYAAAAAAA」
今度はブラッドウルフの足にダメージを与えることに成功したようだ。ブラッドウルフも今まで通り防御しようとしていたらしく、想定より威力があったために傷を負ったようだ。
これでやっと軽いダメージを与えられるのか。もっとダメージを与えるなら更に威力を上げる必要がありそうだ。
《ケイ様、ご注意ください。ブラッドウルフのダメージは回復しました》
そんなことを考えている間にブラッドウルフの傷が癒えたようだ。自動回復スキルの回復力が思ったより高かったようだ。
「回復力もそこそこあるみたいだな…、そっちも厄介だな」
そんなことを考えていると、ブラッドウルフが咆哮を上げながらこちらへ向かってくる。あれだけ攻撃していればそうだよね。
突進してくるブラッドウルフを魔法で身体強化を行い回避するが、横を通り過ぎた所で血の針を飛ばしてきた。飛ばされた血の針を直撃する物のみ風の刃で処理しつつ更にブラッドウルフから距離を取る。
「あんな攻撃もしてくるのか…。色々と厄介だな、一応使っておくべきか『ウインドアーマー』」
距離を取った所にまた血の針が飛んでくるが風の鎧が軌道を変える。どうやら血の針は風の鎧で防げるようだ。
「まさか遠距離攻撃をしてくるとは思わなかったけど、問題なく防御できるようだな。後は攻撃をどうするか考えないとな…」
あとは本体からの攻撃を受けなければ大丈夫だろう。しっかり回避すれば相手の攻撃を受けることは殆ど無いだろうし、あの硬い防御をどう抜くかが問題だな。
「あの防御をどう抜くか、後はそれだけだよ」
「わかりました。厄介な相手ですが、頑張ります!」
「その防御力じゃ私は役に立たなそうね…。悔しいけど今回は回復に専念するわ」
ブラックウルフ達を片付けたフィーアとユイが合流する。
「さあ行こうかフィーア、ユイ。ブラッドウルフ退治を始めるよ!」
「「はい!」」
やっとここまで来ました・・・。
そういえば気がついたらPVが3万超えてました。
読んでくださる読者の皆様ありがとうございます。




