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フィーアの初戦闘

 異世界生活14日目、見慣れた天井だ。地中の拠点の天井が異世界で一番見慣れた天井なのが少し悲しい。


「ご主人様、おはようございます」


 そんなことを考えていたらフィーアが声をかけてきた。俺が目を覚ます前に既に部屋に入っていたらしい。


「おはよう、フィーア。待たせちゃった?」

「いいえ。わたしも先程起きたところなので」


 何このやり取り。デートの待ち合わせで30分くらい前に来たのに今来た所って返す感じのやつみたい。


《フィーア様が言ったことは本当のことです》


 違ったみたい。待ち合わせ丁度の到着だったみたい。


「それじゃあ食事にしようか」

「はい」


 食事を食べると拠点を出て行く準備をする。準備と言っても特にやることはない。服を収納したくらいだ。フィーアの服も勿論収納させて頂きました。


「それじゃあ行こうか。先ずはゴブリン1体と戦ってみよう」

「わかりました、よろしくお願いします」


 先ずはゴブリン1体だ。ソルジャーでもいいけど相手のスキルない方が戦いやすいらしい。戦闘の予定も立てたし早速ゴブリンの森へと入っていく。

 ナイ先生!近くのゴブリンまでよろしくお願いします!


《承知しました。近くのゴブリンまでご案内致します。複数体いた場合はどうしますか?》


 3体以内であればそこまで案内して、それ以上は回避してくれると助かる。回避が難しい場合は俺の方で処理するよ。


《承知しました。ご案内致します》


 ナイのサポートを受けて歩きだす。


「そうだ、アーチャーから急に矢を受けたら危ないから一応防御用の魔法使っておくね『ウインドアーマー』」


 フィーアと俺に風の鎧をかけておく。


「ありがとうございます。昨日の拠点もでしたが、こんな魔法見たことも聞いたこともありません。これは一体…」

「ああ、俺が使う魔法は少し特殊なんだ。バレると大事になりそうだから内緒にしてくれると助かる」

「はい、わかりました。ご主人様との秘密ですね?」


 フィーアが笑いながら俺との秘密と言ってくる。守りたいこの笑顔。


「それじゃあゴブリンを探そうか。先ずはこっちだ」


 ナイに案内された方へ進んでいくと少し先にゴブリンが2体いた。こちらにはまだ気がついていないようだ。


「フィーア、先ず俺が1体倒すからもう一体は君が倒すんだ。無理だと判断したら俺が手を出すけど良いかい?」

「わかりました。頑張ります!」


 フィーアは何度か深呼吸をすると、まっすぐ前の獲物(ゴブリン)を見た。


「それじゃあ行くよ『ウインドカッター』」


 風の刃を片方のゴブリンに向けて放つ。直後、ゴブリンの首が宙を舞い魔素へと変わる。


「い、行きます!」


 フィーアがゴブリンに向かって突き進んだ。


「ギャア、ガガガギャア!」


 相変わらず何を言っているのか全く分からんが相手も臨戦態勢になったようだ。棍棒片手にフィーアへと突き進む。


「はああああああああ!」


 フィーアは飛び出した勢いそのままにゴブリンに突きを放った。それをゴブリンは棍棒で右側から叩くことによって回避しつつ距離を詰めた。槍の弱点である近距離での戦闘を行う気なのだろう。


「っ!」


フィーアもそれがわかっているのだろう、弾かれた槍を体ごと半回転させ、持ち手の部分でゴブリンの胴を打った。胴を打たれたゴブリンはそのまま弾き飛ばされて背中から地面へと転がった。


「やああああ!」


フィーアはその隙に槍を持ち直すと地面に転がるゴブリンに槍を突き刺した。ゴブリンは回避できずそのまま頭を貫かれた。


「ギャアアアアアアアアアアア」


 断末魔の叫びを上げると魔素へと戻っていった。


「はあ…はあ…」


 勝者であるフィーアは肩で息をしていた。初めての戦闘だったのだ。実際に動いた以上の体力消費があったのだろう。


「フィーア、お疲れ様。大丈夫?」

「はあ…はあ…。は、はい。だ、大丈夫です」


 大丈夫には見えない。怪我はしていないけど体力や精神はかなり疲れているのだろう。


「少し休憩しようか。それと反省会をね」

「わ、わかり…ました」


 フィーアはそこまで言うとペタンと地面に座り込んでしまった。


「あ…。す、すいません!」

「いいよ、初めての戦闘だったんだ。緊張もあっただろうしかなり消費しちゃったんだろうね。そのままでいいから少し反省会をしておこうか」


 先ず、最初の突進だ。槍で一番威力が高いのは助走をつけた突きだろう。しかし、それは諸刃の剣であり、相手がその突きを回避するとその瞬間無防備になってしまう。

 今回ゴブリンが回避ではなく棍棒で槍を弾くという選択肢を取ったため、槍の軌道が逸れた為、フィーアが持ち手の部分で攻撃することができた。これが回避され、棍棒を体にぶつけられていた場合、ゴブリンが棍棒を振るう力とフィーアの突進の力が合わさり大ダメージを受けていただろう。

 槍の一番の特徴はリーチが長いことだ。そのメリットを初手で捨ててしまったのは最悪の一手であろう。


「そうですね。頑張らなきゃって思ってしまって体が勝手に…」

「初めての戦闘だからそれは仕方ないね。次はリーチを守りながら戦ってみようか」

「はい!次こそは…」


 フィーアが体の前で手をぐっとして頑張るポーズをする。凄く可愛い。


「頑張るのはいいけど、落ち着いてね。心は熱く、頭は冷静にだよ」

「心は熱く、頭は冷静にですか?」

「一心不乱に相手に向かうだけじゃ駄目だ。常に冷静に相手の行動を見ることが大事だよ。熱くなりすぎると周りが見えなくなってしまうからね」

「わかりました。冷静に…冷静に…」

「それじゃあ、次に行ってみようか。いけそう?」

「は、はい!もう大丈夫です」


 そう言うとフィーアが立ち上がる。

 やはり心労から来る疲れだったようで少し休んだだけで直ぐに動けるようになったようだ。


「次もさっきと同じようにゴブリンと一対一で戦ってみようか」

「わかりました。よろしくお願いします!」


 ナイにゴブリンの居場所を教えてもらうと直ぐに見つかった。流石先生。

 見つけたゴブリンは今度は3体。内一体がソルジャーだ。先程と同じくまだこちらに気付いていない。ナイ先生が気付かれるようなルートを教えるわけがない。


「さっきと同じでゴブリン1体だけ残すからね」

「わ、わかりました」

「それじゃあ、行くよ『ウインドカッター』」


 風の刃を2つ同時に作り出しそのままソルジャーとゴブリンの首を体から切り離した。


「い、言ってきます!」


 今度は先程とは違い、突進するのではなく歩いてゴブリンへ近づいていく。


「ガアアアアアア」


 フィーアを敵と判断したゴブリンはフィーアへと駆け出した。奇しくも先程のフィーアとゴブリンの行動が入れ替わる形になった。

 フィーアはそれを見るとゴブリンの進行方向に槍を突き出した。


「ガアア!ギャアア」


 ゴブリンは叫び声を上げながら横に動くことで突き出された槍を回避する。しかし、フィーアもそれを読んでいたのか、槍の軌道が変わりゴブリンの腕を切り裂いた。


「ギャアアアアアアア!」


 ゴブリンは攻撃を回避し、更に攻撃が当たった影響で突進の勢いが完全に止まってしまった。その為、今は槍の間合いである。その間合いを保ちフィーアがゴブリンに突きや払いを繰り出す。時折ゴブリンが前に出そうになるが、後退や槍捌きで間合いを一定に保つことができている。

 少しずつ削られたゴブリンは最終的に足を切られて行動ができない所を突かれ絶命した。


 先程より戦闘の時間はかかってしまったが、槍を使った戦い方としてはほぼ満点の内容ではなかろうか。


「お疲れ様。今度は間合いを取れていたし、良い戦いだったと思うよ」

「あ、ありがとうございます!」


 肩で息をしているものの、先程より消耗は少ないようだ。二回目の戦闘というのもあるだろうが、無理な動きをしていないというのも大きいのだろう。


「それにしても、フィーアは槍を使うの上手いね。その実力で魔物と戦ったことなかったの?」


 フィーアの槍の使い方はかなり上手いと思う。15歳の少女がゴブリンとはいえ、魔物相手に相手を近寄らせずに槍の間合いの中で完勝してしまうほどだ。


「魔物と戦ったことはないです。でも、わたしのお父さんが村一番の槍の使い手だったので…」


 ああ、そういうことか。槍の名手であった父に教えてもらったんだろう。しかし、その父はもう…。


「ごめん、辛いことを聞いたね」

「い、いえ。気にしないでください」


 そう言うとフィーアははにかんできた。


「わかった。この後はゴブリンの森を遭遇した敵と戦いながら抜けようか。日が暮れる前に森をでたいから」

「わかりました。わたしの我儘を聞いてもらってありがとうございます」

「そんなの気にしないで。それじゃあ行こうか」



 この後ゴブリンの森を出るまでに6度戦闘を行ったが、フィーアは一対一であればゴブリン・ソルジャーを討伐することができた。剣と棍棒が変わっただけだからね。

 そして日が暮れる前にゴブリンの森を出ることができた。途中で鑑定スキルのレベルを忘れずに上げておく。すいません忘れてました。ナイ先生ありがとう。


「フィーアお疲れ様。ここに拠点を作るからフィーアはベッド代わりの草を集めてもらっていいかな?」

「はい」


 そう言うと俺はアースクリエイトを使って拠点を作っていく。ゴブリンの森前拠点と同じ間取りだがまあ良いだろう。

 穴の中から出るとフィーアが集めた草が積まれていた。


「ご主人様、お疲れ様です」

「フィーアもお疲れ様。部屋にお湯とタオル置いてあるから体を拭くといいよ」

「ありがとうございます。あ、あと水と桶も頂いてよろしいですか?洗濯をしてしまうので」


 フィーアに水と桶を頼まれたので一緒にフィーアの部屋に行き桶に水を入れておく。その後フィーアの服を出して渡した。


「ご主人様の服も洗濯しますよ?」

「本当?それは助かるよ」

「いえ、わたしはご主人様の奴隷ですから当然ですよ」


 そう言えばフィーアは俺の奴隷だった。半分いや完全に忘れていたよ…。

 フィーアが体を拭き、洗濯している間に俺も体を拭いておく。余った時間で今晩の食事を用意しておく。まあコテの実なんですけどね!

 食事を済ませると明日の予定を確認するが、明日はスライムを倒す以外予定はない。一応フィーアが今日と同じように1人で戦えるようにはする予定だ。明日も頑張りましょう!おやすみ!



**********


 高木 京 (タカギ ケイ)

 種属:人間(転生者)

 冒険者ランク:B

 パーティーランク:D

 装備:火鼠のローブ

 所有スキル

 ユニーク:特技生成(スキルクリエイト)Lv--、案内者(ガイド)Lv--、個人魔法(オリジナルスペル)Lv--、消費削減(コストカット)Lv3

 コモン :鑑定Lv5、収納Lv1


 フィーア

 種属:人間

 パーティーランク:D

 装備:ミスリルの槍、ウォータードラゴンの鎧

 所有スキル

 ???

初めての戦闘シーンです。

え?ケイが戦っていた?あれは蹂躙です。


総合評価100超えました。

ブクマ登録してくださってる読者の方々、本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いします!

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