装備品を求めて
「あら、いらっしゃい」
そういってクリスティーナが迎えてくれた。
「昨日の今日でまた入用かしら」
「今日はこの子に服を買おうと思ってな」
そう言いながら俺の後ろにいるフィーアを前に出す。
「あら、可愛い子じゃない。予算はどれくらいかしら」
「そうだな、予算は1セット3万くらいまでにしてくれると助かる」
多少余裕あるからもう少し高くてもいいんだけど、これから色々必要になるかもしれないからな。
「わかったわ、試着してもらうからこっちきてちょうだい」
「はい」
フィーアは返事をするとクリスティーナと一緒に店の裏に消えていく
一刻ほどたった頃フィーアが帰ってきた。女の子の服選びは長い。これは仕方ない。
「ご、ご主人様、お、お待たせしました」
そう言ったフィーアの服装は先程まで着ていたワンピースではなく、黒いブラウスと同じく黒いキュロットスカートの格好になっていた。前線で槍を使いやすい格好だ。
「ど、どう…でしょうか…」
「とても似合っているよ」
「ほ、本当ですか!」
俺がそう言うと嬉しそうな反応が帰ってきた。凄く笑顔だ。大丈夫可愛よ。
フィーアとそんなやり取りをしていたらクリスティーナがやってきた。
「気に入ってもらえたようで良かったわ。一式で2万バルになるわ。5セットでいいかしら」
「ああ、5セット頼む」
予算より少し安いようだ。支払いを済ませると武器屋と防具屋の位置を訪ねてみた。
「武器屋と防具屋ならこの通りにあるわよ。左にまっすぐ進んだ左手所にあるわ」
「そうかありがと。また何かあったら利用させてもらうよ」
「そうしてもらえると嬉しいわ。またよろしくね」
挨拶をすると店から出ていく。
「それじゃあ、武器屋と防具屋に行こうか」
「はい」
クリスティーナに言われたとおりに店を出てから左に進む。クリスティーナの紹介だから少しだけ、ほんの少しだけ不安だ。
10分程歩くと目的の店が見つかった。左側が武器屋、右側が防具屋のようだ。店の前に剣と鎧が置いてあるから分かりやすかった。先ずは武器から確認しようと思い武器屋へ入っていく。
「らっしゃい。何の武器をお求めだい」
店に入ると筋肉の鎧を装備した店主が声をかけてきた。服は普通の男物だ。怪物じゃなかった。良かった。
「槍を1つ頼む。この子が装備できるやつで」
そう言いながらフィーアを前に出す。
「嬢ちゃんが装備できる槍か。鉄製や鋼製だと少し重いかもな。こっちのミスリル製のはどうだい?」
そう言いながら店主がミスリル製の槍をフィーアに渡す。槍を持ったフィーアが振ったり構えたりを何度か行う。
「この重さなら問題なく扱えそうです」
取扱には問題なさそうだ。残る問題はこいつの値段だ。流石に50万程度が限界だけど…
「問題ないか。そいつは60万バルだが大丈夫か?」
「60万か…。予算を少しオーバーするな。何とかならないか?」
「何とかって言われてもな。うーん…そうだ、何か武器の下取りがあればその分値引きさせてもらうけどどうする」
武器か。俺は今まで武器を使っていないし、フィーアは着の身着のままだったから勿論武器はない。いや、そうだ一つだけあった。それを収納から取り出しながら店主に聞いた。
「今手持ちにこいつしか無いけどこいつじゃ駄目か?」
そう言いながら店主に手渡したのは、キング討伐時にドロップした【王の杖】だ。
「おい兄ちゃん。そいつを下取りに出そうってのか?」
「そのつもりだが、何か問題あるか?」
やはりドロップ品だと下取りしてもらえないのかな。そう考えていると。
「そいつは王の杖だろ。その杖の価値は流石に俺も分からないな。申し訳ないがそいつを下取りは流石に難しい」
「そうか、それは残念だ」
そう言いながら王の杖を収納する。
さあ残り10万バルをどうするか。一応60万バルはある。すんなりかえなくもないが、防具の購入や今後の生活のためにも少しでも多く金は持っていたいと思う。しかし、今回は仕方ないかな。
「そうなると下取りしてもらうものも無いな。しょうがないから60万で買わせてもらうよ」
「そうかい。悪いな」
「いや、心遣い感謝するよ」
「そう言ってもらえると助かる。サービスで砥石を何個かつけておくよ」
砥石をサービスしてもらえた。手入れはフィーアに頑張ってもらおう。自分の装備だし。精算を済ませると店を出る。フィーアはミスリルの槍を装備した。
次は防具屋だ。お隣の防具屋にそのまま入る。
「らっしゃい。何の防具をお求めだい」
そう言って声をかけてきた筋肉の鎧を装備した店主。
「あれ?防具屋も武器屋の店主がやっているのか?」
「武器屋は俺の双子の兄貴の店だ。防具屋は弟の俺が経営している」
声をかけてきた店主は武器屋の店主と同じ顔だ。成程、一卵性双生児ってやつか。
「そうだったのか。間違えてしまって申し訳ない」
「良いってことよ。毎回のことだからもう慣れてる」
よく間違われるのか。双子あるあるなのだろう。
「そう言ってもらえると助かる。それで、この子に合う防具を貰えないか」
そう言いながらフィーアを前に出す。本日3回目のやり取り。
「嬢ちゃんは槍使いか?それなら動く速度が大切だろうから要所を守る鎧だな。重すぎても動きが悪くなるな。そうだ、少しばかし値は張るがドラゴンの鱗から作った鎧なんかどうだ?」
ドラゴンは魔物では無く、魔素から構築されていない。下位の一部ドラゴンは魔素から構築されているらしいが。
ドラゴンの素材を使った防具か。性能的にはかなりいいだろう。問題は店主も言っていたが値段だ。
「因みにいくらだ?」
「100万バルだ。これ以上は引けないし申し訳ないが下取りも受け付けていない」
100万バルか。ドラゴンの鱗の装備ならもう少しするかと思っていたが…。
《100万バルでしたら妥当かと。しかし、ドラゴンの種類によって付与効果が変わるため評価が変わります。》
ドラゴンの種類によって付与効果が変わってくるのか。ありがとうナイ。
「100万か、そのドラゴンの種類は?」
「こいつはウォータードラゴンの鱗だ。鱗一枚を解体して作った鎧だな」
ウォータードラゴンね成程、うん分かんない。ナイ先生教えてください。
《ウォータードラゴンでしたら適正価格かと思います》
ウォータードラゴンは100万バルで適正価格なのか。何ドラゴンが値段高くなるのか。
《上位個体になれば評価は高くなります。最上位は古代竜クラスになるかと》
やっぱ昔から生きてるドラゴンとかいるのね。昔から生きてる分強いと…
「ウォータードラゴンの鱗の鎧ならその値段で買わせてもらうよ」
「そうかい。それじゃあ調整するから嬢ちゃんこっち来てくれ」
「は、はい」
フィーアはウォータードラゴンの鎧を装備した。鎧の調整が終わり、会計を済ませると店主が声をかけてきた。
「そう言えば兄ちゃんの防具は良いのか?」
俺の防具か、考えてもいなかったな。
「そうだな、せっかく出し何かあれば見せてくれると助かる。一応魔術師だからローブでいいんだが」
「兄ちゃん魔術師だったのか。ローブか、それなら火鼠のローブはどうだ?ファイアラットからドロップした火鼠の皮を使った一品だ。火耐性ならそこそこあるし強度もあるから防具としても申し分ない。こっちは30万バルでどうだ?」
30万バルか。ミスリルの槍とウォータードラゴンの鎧ですでに予算は大幅にオーバーしている。しかし、何かあった時に命を守ってくれるかもしれない防具をケチりたくもない。防具をケチった結果死にましたじゃ死んでも死にきれない。
「分かった。そいつも頼む」
「毎度あり」
会計を済ませ店を出る。
「あ、あの。こんなにいいものを2つもありがとうございます」
店から出るとフィーアがお礼を言ってくる。
「これから必要になるものだからね。そこをケチっても仕方ないさ」
昨日稼いだ金を今日一日で半分以上一気に使ってしまった。まだ余裕はあるけどこれからのことを考えると収入は欲しい。
「この後の予定だけど、ギルドに行って何か依頼を受けようと思う。それと、フィーアも登録するか?」
「奴隷は冒険者登録できません。なので、ご主人様とパーティーを組ませてください」
奴隷は冒険者になれないらしい。冒険者になれないけどパーティーは組めるらしい。その辺の仕組みがよくわからない…。
《指名手配犯、奴隷は冒険者になれません。しかし、Cランク以上の冒険者をパーティーリーダーとしてパーティーを設立することができます。その際、それ以外のメンバーは冒険者である必要はありません。パーティーメンバーは最大6名までとなります》
成程、ナイ先生ありがとう。
「それじゃあパーティーの申請をしに冒険者ギルドに行こうか」
「はい!」
次の目的地は冒険者ギルドだ。
フィーアの服装凄く悩んだ。
求)素晴らしいファッションセンス
出)いらなくなったファッションセンス
そう言えば毎回簡単に読みやすい量にしているけどもっとまとめて読みたいですか?
感想欄等に「もっと書けよ」等と言ってもらえれば書きます。書かせて頂きます。
パーティー名を決めていません。暫く出ない予定ですがもしこんなのどう?
と言うものがあればこちらも感想欄にどぞ。




