異世界転生しますか?いいえしません。
目を開けると薄暗い部屋の中だった。確か下校中だったはずだが、ベッドに入った記憶も無ければいきなり記憶が途切れる持病もないはずだ。
薄暗い部屋の中でどれ位たっただろうか。周りを見渡しても壁らしきものは見えず、どこまでも続いている様に感じる。目の前にいきなり画面が現れ文字を表示した。
『残念ですが、高木京様あなたは死にました。』
ドッキリにしては微妙だし、されるような相手も特にいないしな。画面の文字について考えていると表示されている文字が変わった。
『今なら異世界へ転生できます。しますか?』
怪しい・・・怪しすぎる。画面の下に『はい』と『いいえ』が表示されているし。とりあえず怪しいから『いいえ』だよね。特に躊躇いも無く『いいえ』を押すと再度文字が切り替わった。
『転生しないとこのまま死んじゃいますけど良いですか?』
引き止めにくるか。とりあえず『はい』を選択しておくかな。
『本当にいいんですか?』
ウェブサイトの退会処理みたいになってきた・・・。異世界にそこまで行きたいとか思っていないからどうでもいいんだけどな。仮に本当だとしても特に未練ないからこのまま死んでも良いかなとか思ってるし。
未練があるとすれば彼女ができたことがないってことくらいかな。と、考えながら再度『はい』を選択。
『ホントのホントにいいんですか?』
『はい』
出た瞬間に即答である。
『ホントのホントにいいんですか?』
なにこれ?相手の言い分飲んだら負けな気がするからとりあえず全力で拒否するかな。
『はい』
『異世界楽しいですよー最高ですよー。行きたくなっちゃいました?』
『いいえ』
『そんなこと言わず!ほら行きましょう。』
『いいえ』
『とりあえず行くって言いましょ。言ったら楽になりますよ。』
『いいえ』
『お願いします。行ってください。』
『いいえ』
『お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。』
『いいえ』
「なんでですかああああああああああああああ!」
おっとびっくりした。いきなり目の前に少女が現れて大声で叫んだら誰でも驚くだろうけどさ。
「だれ?今のあんたのせい?」
「ワタシは女神です。名前はありません。あっても教えません。」
目の前の少女(自称女神)がよく分からんことを言い始めた。
「そんなことはどうでもいいんです。なんで異世界行かないんですか?普通行きますよね。」
「いや、いきなり死んだとか異世界とか言われて信じるわけ無いだろ。」
「安心してください死んだのは本当です。今証拠見せますから。」
そう言うと自称女神少女がいきなり顔面にパンチしてきた。グーで。殴られた衝撃と共に頭の中に映像が入り込んでくる。
俺が道を歩いているのが見える。そして倒れた。倒れた俺を見ると大量の血が流れ出してきた。それを見てなんとなく理解してしまった。俺は死んだのだと。初めて人の死を見たけどそれが自分の死とは悲しいものだ。
「どうですか?信じましたか?」
「まあ、一応は。」
死んだのはわかった。だが1つ気になることがある。
「ところで急に倒れたからわからなかったけど、俺の死因は?」
「隕石が頭に当たったんですよ。」
「よく周りに被害でなかったな。ゴミみたいなサイズの隕石だったのか?」
「そうです。というよりはゴミですよ。」
「は?」
「ワタシが捨てたゴミの一欠片があなたの頭に直撃しただけです。」
ああ、そういうことね。
「つまり俺の死因は自称女神様ってことか。」
「自称じゃないです!本物です!そして死因もそうなりますね。」
「なるほど。女神様が俺の死因で、殺したから異世界に送ってお茶を濁そうとしているわけか。」
「ななななにを言っているんですか、バレたらまずいから異世界に飛ばしちゃえとか思ってないですよ。」
この自称女神ちょろい。
「それなら俺がこのまま異世界に行かなくても特に問題ないよね。」
「ごめんなさい。許してください。バレたら上司に怒られますからそれだけは。」
上司にバレて怒られたくないから誤魔化そうとしてるよこの自称女神。女神なのに土下座してるよ。少女に土下座される図式は良くない。それより上司に怒られるって理由で殺されて異世界に飛ばされそうなの?ひどくね?
「因みに上司に怒られるとどうなるんだ?」
「地獄堕ちですよ!多分…。うぇ~ん。と゛お゛し゛よ゛お゛。」
あ、泣いた。
「それは結構辛いな。」
女神(仮)でも人を殺すと地獄行くのか。事故で殺しても即地獄行きは流石に可哀想だ。こいつに殺されたの俺だけど。流石に大声で泣き続ける女神(仮)が可哀想だから異世界転生くらいされてやるか。
別に減るもんじゃないし。むしろ命増えるし。
「わかったよ、異世界に行ってやるよ。」
「ホントですか!?」
一瞬で泣き止んだよこいつ。
「あぁ。但し。何かサービスつけろ」
「それは任せてください!これでも転生司る女神ですから!!」
転生の女神が人殺し・・・。セルフ転生・・・。いや何でもない。
「それでは早速。高木京様、これから向かう世界には魔法や魔物が存在します。高木京様の世界で言うところのファンタジーってやつですね。」
「異世界転生って時点でファンタジーだけどな。ところで、転生って言ってるけど生まれ変わりなのか?」
「生まれ変わりでもいいですけど、現在の姿でお送りすることもできますよ。今から行く世界では黒髪は少し珍しいです。見た目も少しは変えられますけどどうしますか。」
せっかく異世界に行くなら早めに楽しみたいから生まれ変わりはなしだな。
見た目も珍しいってだけなら変える必要もないだろう。
「今のままの姿でいけるなら今の姿で頼む。」
「わかりました。それと転生者へのボーナスとして通常であればランダムでスキルを付与していますが
、今回は特別に自由なスキルを1つ差し上げます。」
通常ランダムなスキルを1つ選んで貰えるらしい。とりあえずスキルの概念が気になるな。
「スキルについて教えてくれ。」
「はい、スキルは所有者に特別な力を与えるものです。例えば剣術スキルを持っている人は剣の攻撃力が上がったりします。スキルの習得は先天的、後天的の2パターンがありますが、魔法系のスキルは基本的に先天的となります。」
「つまり剣や槍は練習すればスキルを覚えられるが魔法は生まれつきってことか。」
「その通りです。」
武術系のスキルは後で覚えられるから除外、魔法系は基本的に先天的だから候補としては上位だな。若しくは特殊なスキルがあればそれでもいいけど。
「スキルって魔法とか武術系以外になにがあるんだ。」
「後は、『取得経験値○倍』とか『必要経験値○分の1』とか『収納』とかありますよ」
「ん?レベルの概念もあるのか?」
「スキルにはレベルの概念がありますが、生物にレベルの概念はありませんよ。」
つまりスキルレベルを上げる為に必要な経験値が減ったり取得経験値が増えたりするのか。レベルが上がれば攻撃力が上がったりしそうだしこれも有用なスキルだな。
「因みに、俺が欲しいスキルが現存していない場合はどうなるんだ?」
「その場合今回限りのスキル、ユニークスキルとして付与します。」
つまり、なんでもいいってことか。
「じゃあ、スキルを作れるスキルをくれ。」
「はい?」
1つだけ願い事を叶えてくれるという物語を読んだら思う人もいるだろう。それなら願い事の数を増やしてくださいって。
つまり、願い事・・・スキルを大量に作る権利をよこせということだ。
「えっと・・・流石に・・・それは・・・」
「え?ダメなの?じゃあ異世界行くのやめようかな。」
普通であればこの手のお願いはダメだろうが今回は俺がマウントを取っているからな。無理にでも押し通すつもりだ。
「わかりました。」
折れるのはやいな。
「その代わり幾つか条件をつけさせてください。」
流石に自由に神と同じ権限を持たせるのはまずいみたいだ。条件次第では頷こうかな。
「その条件とはなんだ?」
「それは・・・。」
駄女神の話をまとめるとこんな感じだ。
①スキル生成は1日一回魔力を消費することにより発動できる。
②作成時に魔力が足りないと作成できない場合もある。その場合は再度使用可能となるが保有魔力が半分となる。
③使用者の保有可能スキル数はスキル生成スキルを除き30個。
④既存のスキル、新規のスキル共に作成可能。
⑤スキルを作成する代わりにスキルレベルをあげることができる。
因みに1日一回は使用後のクールタイムが24時間ということになる。ログインボーナスじゃないから日付による切り替えでは無いらしい。あくまでスキルということである。
「保有スキル数が少ない気がするけど、概ね問題は無いな。」
「それなら良かったです。早速転生の準備を行いますね。」
女神(笑)がそう言うと足元が青く輝き始め、魔法陣のようなものが展開された。
「それでは高木京様、良き異世界ライフをお楽しみください。」
女神がそう言った後は目の前が真っ暗になった。また死んだんじゃないよね?
「うん。完全に異世界だなここ。」
目が覚めた俺を迎えたのは一面の草原だった。日本じゃ見たことない景色だからね!
異世界ライフが少し楽しみになってきた。
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高木 京
種属:人間(転生者)
所有スキル:特技生成(ユニーク)
初めまして。夜桜れんといいます。
初投稿なので生暖かく見守ってください。