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ようやくちーとです!!

ようやくチート回です。





……多分

今日はずいぶん遅くなったが、それとは逆に俺の顔はにやけていた。


「んふふふふふふ」


あ、思わず笑みがこぼれてしまう。今回は割のいい仕事を複数こなすことができたのだ。今、俺の懐には日本円でいうところの二十万ほどが入っている。


これで笑いが止まらないやついようものか。


今回は下水に溜まったモンスター退治や農家のみなさんのモンスター退治のお手伝いとかの仕事をさくさく終えられることが出来たのだ。そして懐にはガッポガポ。


「でゅふふふふふ」


どうしても笑いが止まらない。


この金で少しくらい贅沢を、いや、ここはセルフィナさんやエルフィナさんに手土産一つでも買って帰るか。ああ、夢が広がるなぁ。


俺が、そう考えていたところ、


「………」


参ったな、どうやら囲まれてしまったらしい。


帰り道を急ぐのに人気の少ない近道を使ったのがまずかったか。今度からは是非とも人通りの多い道を通ることにしよう。


「なぁ、あんたさぁ金持ってんの?」


ああ、嫌だ。やっぱり絡んできやがったチンピラその一。


俺は無視してそそくさと通り過ぎようとするが、


「なぁ、無視すんなよ」


通せんぼしてくるチンピラその二。


「ちょっとだけ貸してくんない?ちょっとだけでいいから」


馴れ慣れしく肩を組んできやがるその三。こうやって逃がさないつもりなんだよなぁ。


なおも無視して通り過ぎようとするとその四が、


「何時までも無視してんじゃねーよ!!」


バキッと一発顔面を殴ってくる。おお嫌だ野蛮人は。


俺がその一発に思わずたたらを踏むと、その五が待っている。手に持っているのは、刃物ーーー!?


ドスッ


そいつは躊躇なく俺の脇腹を狙いやがった。


それを見ている周りのチンピラ共はニヤニヤと笑っているだけでーーー、おっと全身鎧姿の奴がフルフェイスの兜の奥で仰天していたくらいか。


あと一人がそれを確認するように見据えていやがる。


「あーあ、やっちまったな」


半笑いでそれを見て言うチンピラ三。


「まあいいじゃねーの、こんなの生きてたってゴミなんだし」


酷いこと言うなチンピラ四。


「まあ、運がなかったってことで」


チンピラ一がいうと全員が引き上げに掛かろうとする。


なるほど、どうやらこいつらは偶然で俺を狙ったわけではないらしい。待ち構えていて俺を狙って始末するのが目的だったのか。


とすると、こいつらは金で雇われた刺客というところ。あえてチンピラを使ったのは単なるチンピラがらみのいざこざに見せかけようとする意図からかな。


「おい、早くいこーーーー」


チンピラ三がチンピラ五に話しかけた瞬間、チンピラ五は目をむいた状態で崩れ落ちる。ついでに顎に膝蹴り食らわしといてやるか。


「---テメェ!!」


思わぬ俺の反撃にそいつら全員がナイフを取り出し手に構える。


「おい、バラすぞコ」


チンピラ二が言い終わる前に固めた拳でストレート。躱す間もなくそのまま顔面にヒット。


「---アグッ」


振りぬいた拳の勢いで後頭部から地面に落ちるチンピラ二。革手袋と鉄拍子で固められた一撃で前歯が全部折れてやがる。


おまけに顔面を踵で踏みつけてやろうとかと思ったが、ちょっと気の毒なので一応やめておく。


「オラァ!!」


頭に血の上ったその三が俺の肩にナイフを尽きたてる。


「……あれ?」


突き立てようとするのだが、


「おい、むん!!」


突き刺さらない。そりゃ一応鎧は着てるが、それ以上に体の肉とそれにかけてある強化魔法の恩恵か、そんなナイフでは傷一つ付かんぞ?


「ほいっ」


俺はチンピラその三の拳をナイフごと握り潰す。


「あれ、お、いででででででっ!!」


めきめきいうそいつの手。手を握りつぶされるような痛みに思わず腰をかがめて膝をつく。


「ほれ」


丁度いい高さに顔が来る。それをスピンターンで上手いこと顎を蹴ってやる。


「ぐばぁ!!」


そいつは折られた歯を盛大にまき散らしながらぶっ飛んでいく。あの分じゃ顎もいったかな。しばらく流動食のお世話になるなかわいそうに。


「おいマジでころ」


俺の肩を掴み、身体をこっちに向かせようとするその一。


その瞬間、みぞおちに決めた一発でそいつは白目をむいて崩れ去る。あ、一発くらいおまけにやっとく方がよかったかな?


「---さて」


四人までは片付いたが、あと残る一人。随分と顔色が青ざめて悪そうですが?


「な、なんなんだよお前!?」


そいつはナイフを向けながらガタガタ震えてやがる。


「お、お前はいじめられっ子の雑魚勇者じゃなかったのかよ!?お、俺らを騙したのかよ!!?」


騙したとは人聞きが悪いな。大体、俺はいじめられっ子かもしれないが、一言も「雑魚でクラスで一番弱く、力も頭も全くない」なんて言ってないぞ?


大体、いじめなんて強い弱いは関係ないぞ。まあ、弱い方が狙い易いけどな。そうじゃなくてもいじめの標的になることも多いのだ。


最も、俺はいじめられた反動で更に鍛えまくった。けど、そしたら更にクラスで馬鹿にされるようになったが。


それはさておき、こいつを適当にボコって黒幕を聞き出すか。


じりっと俺が近づくと、そいつは青ざめたまま竦んで動けない。


かわいそうに。こっちの命を狙おうなんてするからこういう目に合うのだ。ちょっと殴られるくらいなら我慢するのに俺は。


俺がもう一歩進もうとしたところ、


ギイン!!


背後から鋭い打ち込み。先ほどの全身鎧が剣を抜いて打ち込んでくる。


俺はとっさにそれをチンピラナイフで受け止める。


「よく受け止めた!!」


そいつが兜の奥から嬉しそうに零す。


「そりゃどうも!!」


受け止めた一撃を強引に押し返す。が、そいつは鎧の重さを感じさせない身の軽さでかろやかに空を舞う。


俺たちは手にした得物を構えて対峙する。


刹那、そいつが得物の長剣で突きを入れてくる。


ーーー速い!


まるで一つの剣が何本にも見えるように感じる突きの速さ。


速いだけではない。時折入れてくるフェイント。それで誘いこっちの姿勢を崩そうとしてくる。


その誘いを退けても、緩急をつけた突き入れが次々に降り注ぐ。


なるほど、かなりの使い手だ。


「ふっ!」


俺はその突き入れの一つを選び、そいつが剣を引くタイミングで思いっきり踏み込む。


「---何!?」


今度はそいつが驚いた。


再びつばぜり合いとなるが、今度はこっちが有利。得物の長さではこちらが短いが、下から突き上げるように剣を合わせている。そいつは剣を抜かれないようにと必死でこちらを抑えにかかる。


「どうやら鷹が爪を隠していたか!!」


そいつは言葉に焦りを滲ませながら、しかしどこか楽し気に毒づく。


「アンタこそ、最初の一撃は当てる気は無かっただろ!?」


俺も負けじと言い返してやる。


「気づいていたか!なら、なぜ受けた!!?」


「どうしてかな!!?」


二人の剣がじりじりと押しあう。そして、徐々に俺の方が押し込んでいく。


お互いに手に力がこもる。その時ーーー


「伏せろ!!」


俺はとっさに力を抜いて身を引く。意外なセリフにそいつの動きが一瞬止まる。


次の瞬間、俺たちのいる道路を舐めるように、炎の奔流が地を舐めていった。


炎は道端で呻いていた男たちを一瞬で消し炭にした。しかし、焼いたのはあくまでもその道幅のみ。あとはその外には何の影響も出さない、抑制と制御が効いた魔法だった。


それを放ったのは、チンピラ以外に俺を見ていたあの男だった。そいつは薄ら笑いを浮かべて俺たちの始末を確信した。


が、


「ぐっ!!?」


そいつの胸にはナイフが突き立てられていた。


そいつの火炎魔法をナイフに込めた魔力で切り裂き、その熱からとっさに身を守ったのだ。


そして、油断していたその魔法の主に力を込めたナイフを投げつけた。


その一撃は狙い通りに胸を穿つ。


信じられないといった顔でそいつは膝をついて倒れる。


そいつが倒れたのを見て、俺は少しばかり安どの息をついた。


「---やったのか?」


鎧の剣士がゆっくりとその魔法使いに近づく。


「見てみ」


俺が促すと、魔法使いの姿は服を残したまま塵と崩れていた。


「…これは?」


「おそらく、使い魔だろうな?」


「使い魔、か」


「そいつを使って、俺とアンタをまとめて消そうとしたんだろ?」


俺は剣士と簡単に言葉を交わす。


「…貴様を狙ったものだろうがな。どの道、こちらを巻き込んでも構わない気であったのだろう」


言うと、そいつは手にしていた剣を鞘に収める。


「おい」


と呼びかけると、


「---今回のことは借りになった」


と言いながらその場を後にする。


「この借りはいずれ返そう」


そういうと鎧の剣士は闇に溶ける。


「----ふーっ…」


俺は思わぬ騒動にため息を一つ吐く。


そして、巻き込まれて灰になったチンピラ君たち。


ちょっと気の毒かなと手を合わせつつ、やっぱり悪いことには加担するもんじゃないなと改めて思うのだった。




ーーーーここはシェフィールド城。魔王軍と戦う前線の拠点となる城だ。


その城に誂られた豪華な一室にその男は居た。


彼は肌にローブを纏いながら営みの後の一服を椅子に腰かけながら嗜んでいた。


「---どうした?」


窓の外の気配に彼は声をかける。


「どうやら、始末に失敗した模様です」


その気配の声は努めて冷静を装っていたが、奥にある震えを男は見逃さなかった。


「そうか、では後で相応の罰を与えよう」


男に告げられると影は身じろぎして姿を消す。


そして彼は忌々し気にグラスの中のワインを飲み干す。


「どうしたの?」


ベッドの上で一糸纏わぬ女がねだるように声を紡ぐ。


「いや、何でもないよ」


彼は感情を心の中に隠し、今一度彼女を味わうためにその唇を自らの唇に合わせた。

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