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おしごとに出発です!

「では参りましょう!!」


カトリナが手綱を引いて馬が歩き出す。


馬車は至ってベーシックな感じの荷馬車だ。幌もついていて、車軸も車輪も中々に気が使われている。


この馬車に荷を積み込んでその町へと運ぶのか。


彼女達母娘の営む道具屋は魔法関係のものを多く扱っているらしい。一つ一つの荷が結構な値打ちのものだったりする。これらの荷をおろせれば、確かにそれなりの金額になるだろう。


だが、これだけの仕事なのに前金も取ってないのはいかがなものか、とちょっと思ってしまう。


まあ、彼女のお母さんおっとりとした美人さんだが、ほとんどこの手の仕事は初めてらしい。右も左もわからないまま、何とか乗り切ろうというのかも。


それは甘いんじゃないかと心配になるが、何はともあれ初仕事だ。


とりあえず、張り切っていこう。うん。



馬はのんびりと街道を歩いている。


日の光も暖かい。


道行く人もそれなりにおり、考えようによってハイキングみたいなもんだな。


セルフィナさんやエルフィナさんも誘えばよかったと思うくらいの陽気。


そういえば、このことをセルフィナさんに言うと「頑張ってきてね」と送り出してくれたな。彼女の期待にもぜひ応えたいところだ。


カトリナと並んで座っているが、彼女ものんびりとした様子である。


このまま何事もなく済むといいが。



しかし、そうはうまく行かなかった。


「…どうしましょう」


彼女も思わず困った口調である。


途中、前を行く馬車が脱輪し、荷が崩れたのだ。


それを彼女はそれを直すのを手伝い、さらに同じようなことが二、三回。


出発がそもそも遅かったのも相まってか、このままでは日暮れまでには町へはつけない。


「まあ、いけるところまで行きましょう。そのあとは野宿でもするしかありませんね」


と言うと彼女もそれしかないと、肩を少し落として言う。


ちょっとしたハプニングになりましたね、と彼女は茶化したように言った。


違いない、と俺もつられて笑った。




とうとう日が暮れてしまった。野宿決定である。


一日前もそんなこと言ってた気がしないでもないが、まあいいか。今回は帰るところもあるし。


俺たちは仕方なく、といった感ではあるが、野宿の準備を始める。


馬車から降りて馬を止め、馬車の車輪に鍵をかける。


広い草原の中なので薪などは拾ってこられない。俺は彼女が用意していた薪に火をおこす。


更に、彼女が取り出してきたのは魔法のライト。


燃料に魔力の込められた石を使っているとのことだが、まるで現代のポータブルなライトだな。いや、便利なものもあるもんだ。


そして、彼女は火の上に即席コンロを置き、簡単ながらも夕食の準備を始めた。



空に満天の星が広がった。


彼女が簡単な魔法の結界を引く。これなら少々の野獣程度なら怖くなさそうだ。


そのあと、俺たちは交代で仮眠を取り見張りをしようということにしたのだが、


「コーマさん」


「はい?」


「コーマさんは何で冒険者になったんですか?」


ズバリ聞いてきた。


「いや、まあ、何というか成り行きというか…」


何とか笑って胡麻化そうとするが、


「…………」


どうやら胡麻化されてくれないらしい。


食い入るような視線の彼女。それに愛想笑いで応えているが、


「コーマさんって勇者様の御一行なんでしたよね?」


嫌な事を思い出させるなこの娘。というか、知ってるんじゃねーか。


「あの、あたし前に見かけたことがるんです」


そうなの?


「その時、コーマさんは勇者様達とは何か違う雰囲気で…」


そりゃいじめられっ子と苛めっ子の差でしょうなぁ。


「---あの、その時一緒にいたあの人は、こ、恋人なんですか!?」


俺は、その時微妙な感じで固まった。


「いや、違うよ」


というか、その時ってどの時だよ。俺にそんなに羨ましい状況があるわけなかろうに。


「で、でも、二人とも、その、とっても仲良さそうで…」


そういう彼女に俺は泣いていいのか悔やんでいいのか分からない表情を投げかける。


「違うよ」


と念押しするが、


「で、でも…」


と食い下がろうとする。


いくら言われても、そんな状況があるわけない。あったら、もっと違う人生がーーー


「ーーー火を消せ」


俺は周りの空気の変化に気づく。


「は、はい」


俺に言われてカトリナは素直にランプの灯りを消す。


俺はたき火の火を消し、辺りの様子を見渡す。


「あの、見えるんですか?」


「まあな」


俺はスキル外で許された範囲での知覚魔法を使い、気配の正体を見る。200メートル先に騎馬に乗った一団。十人程度か。


そいつらは未だに馬に乗ったまま近づいてくる。が、目印を失いどうやら戸惑っているようだ。


このまま引き下がってくれればいいが、そうはいかないらしい。


そいつらは馬から降りてこちらに向かってくる。


ーーーやはりそうなるか


俺はため息をつきながら、そいつらを迎え撃つ準備に入った。







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