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再出発です!

「…はぁ」


俺は完全に途方に暮れてしまった。


こんな異世界でクラスメイトに捨てられ幼馴染にも見捨てられた。おまけに所持金はほとんどない。モンスター退治やダンジョン探索に行こうにも、道具も装備もない。完全に行き詰まってしまったのだ。


黙っていると涙が出そうになる。しかし、話す相手などどこにもいない。


やることも、なすこともなく、ただ俺はとぼとぼとこの街をあてもなく彷徨うばかりだった。


「---あの、コーマさん?」


ふと声をかけてくる人がいる。


ああ、確か彼女はまだ俺が訓練していた時に何度も通っていた酒場の女将さんだった。


「どうしたんです、そんなに元気の顔して」


そう微笑んでくる彼女。


俺はその時ずいぶんささくれていたのだろう、何か嫌味一つでも言って追い返してやりたかった。


しかし、それは出来なかった。


その前に俺は涙を零していたのだ。


何度拭っても止まらない涙。


わけもなく、涙を流す俺を見て彼女は慌てて、


「と、とりあえず、こっちに行きましょう。ね?」


小さい子供をあやすように俺の手を引く。


そして、彼女ーーーセルフィナさんは言ってくれたのだ。


自分の店は、今人手が足りない。だから手伝ってくれないか、と。


俺はその言葉ににもなく飛びつき首を縦に振った。


完全に誰からも見捨てられたかと思っていた。


しかし、ここに一人でも俺を気遣ってくれる人がいた。そのことだけで、俺の胸にぽっかり空いた穴が少し埋まったような気がした。


手伝いは明日からで言いといわれ、俺は取り合えずベッドの上に横たわっていた。


今日から野宿、というかホームレスになるところだったところに彼女の一言。地獄に仏とは正しくこのことだ。


これからどうするかなと、天井を見上げていると、


「いいですか、コーマさん」


扉を叩く音がした。


いいですよ、と答えると、金髪をポニーテールにまとめた女性、俺より少し年上の彼女が入ってきた。


彼女の名はエルフィナ。この酒場の女将さんの娘さんであり看板娘だ。しかし、昼は冒険者ギルドで事務の仕事もしており、町でも評判の美人母娘だ。


彼女は部屋に入ってきたので俺は起き上がると、彼女はその隣に腰かけてくる。


「…大変だったんですね」


そう彼女に言われて、俺はどうにも微妙な気持ちになった。


先ほどまでなら思わず弱気になるが、女将さんのおかげである程度気持ちに落ち着きができたおかげか、少し気恥ずかしいながらも、自分の置かれた状況を何とか彼女に説明することができる。


俺の話を聞き終わり、「そうですか」と彼女は言うと、すっと立ち上がる。そして自分の部屋に来るようにと促し、俺が彼女の部屋に遠慮しながら入ると、そこは俺が想像していたようなものとは少し違っていた。


部屋全体は明るく、よく整理されている。それに、女性らしい飾りつけや、意外にもいくつものぬいぐるみがあるのは少し新鮮に映った。


しかし、それ以上に目を引いたのは、部屋に置かれていたいくつかの武具だった。


所謂ファッション用の武具ではない、本格的なもの。幾度か使用された跡があり、何度も使い込んだものまである。


「---これは?」


俺がそれを指すように言うと、彼女は少し照れくさそうに、


「これ、前にあたしが使っていたものなんですよ」


俺は思わずへぇ、と声をあげてしまう。花のように可憐な彼女だが、考えれば冒険者ギルドに勤めているのだ。彼女が冒険者、それもかなりの使い手であっても何の不思議もない。


「---コーマさん、使ってみませんか?」


彼女の申し出に俺は思わず胸がどきりとした。


ついさっきまで明日のことを考える余裕がなかったのに、あまりのご都合的な急展開に少し戸惑いを隠せない。


「どうします?」


と、彼女が美しい大きな青い瞳で俺を覗いてくる。


その目を見て、俺は決めた。


もし、これが何者かの意図ならそれは仕方ない。今の俺にはそいつの手の中で踊るしかない。


もし、これが単なる幸運ならこれを逃すほど馬鹿なことはない。


俺は決意を固め、彼女に告げる。


「--是非、使わせてくださいっ」


勢い込んだ俺の言葉に彼女は多少面を食らっていたが、それでも優しい笑みで快諾してくれた。


俺はその剣を手に取り感触を確かめる。


少しまだ手に合わない。


しかし、良い剣だ。


その剣を取り、俺は思った。


これからが俺の本当の始まりになる、いや、始まりにするのだと。


そして、今は俺を救ってくれた恩人たちの為に剣を振るおうと誓ったのだった。





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