表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

チンピラちっくないじめっこです!

ーーー勇者 それは強き力を持つもの


ーーー勇者 それは世を導くもの


ーーー勇者 それは魔を打ち払い光をもたらすもの


伝承の通り、異なる世から現れた彼ら。


人々は尊敬と畏怖の念を込めて彼らを勇者と呼んだ。


そして今、その勇者が目の前にいる。


「おう、なんか言えよコラァ!!」


チンピラ語を携えて。




俺は流石に頭を抱えた、この再会に。


だって、こいつら勇者だろ?俺と違って。


それなのに、なんでこんな所で盗賊なんかやってるんだよ。


「ねぇ、こいつらアンタの知り合いなの?」


ひそひそ声でモニタが聞いてくる。


俺は引きつった顔でこくりと頷く。


「なぁ、なに無視してんのクソマサちゃん?」


「なんか調子こいてんの?」


ニヤケ声にも妙な苛立ちが含まれている感じがする。何、いらついてんるんだか。


「おい、無視すんなよ!!」


無視するなと言われてもどう返せばいいかよく分からない。そもそも、こいつらとは仲が良くない、というかはっきり言って悪い。というか、苛めっ子といじめられっ子、そこに何の会話のキャッチボールを見出そうというのか。


「はぁ、マッジでうざいわー」


刺々しい言葉をぽんぽんぶつけられてるな俺。なんか以前の嫌な思い出が蘇ってくる。


「ってか、何様よこいつら」


妙にこいつらに向けた言葉に険があるなモニタ。苛立ち具合ではこいつらより上かも知れない。


「---まあいいわ。


例えこいつらが勇者だろうとなんだろうと、盗賊に手を貸していた可能性が高い以上、ちゃんと話を聞く必要がありそうね」


彼女は利き手で剣を水平に構え、切っ先を二人に向ける。


「はぁ!?俺らが盗賊に手を貸してたん!?何か証拠あんの!?」


完全にモニタを舐めた口ぶりだなコイツは。


「---そうね。まだどうか分からないわね」


彼女は気づかれないようにゆっくりと足を進め前傾に構える。


「だから、この後ゆっくりと取調室で話を聞いてあげるわよ!!」


軸足を蹴り、跳躍する。間合いを一瞬にして詰め、二人の喉元に剣先が突きつけられる、筈だった。


彼女の剣は届かなかった。距離を詰めるために飛んだ半分程度のところで動きを止めている。いや、固まっている!?


ーーー不味い、この魔法は!?


俺が動き出すのが先か、フードの一人が魔方陣を開く。そこから伸びた触手が彼女を絡めとるーーー




ごちん!


「っ、たーーーっ!?」


俺とモニタの頭と頭が綺麗にごっちんこ。目から火花が飛ぶような衝撃というやつだな。


「なにすーーー!?」


抗議の声を上げようとする彼女の口を強引に手で塞いで、静かにと人差し指を口に当てて合図する。


まだ彼女は何か言いたそうだったが、周りの状況を見てとりあえず意見を引っ込める。


部屋の中にはもうもうと煙が立ち込めている。その中で、俺とモニタはホールに備え付けられていたソファーの陰に隠れていた。


俺がそこから連中の姿を伺うのを見て、彼女も今がどういう状況なのかを理解する。


「どういう状況なのよ、これ?」


彼女はひそひそ声で聞いてくる。モニタ自身、いまいち状況を把握できていない。先ほど自分はあの二人に飛びかかっていったはずだ。それなのに、次の瞬間にはソファーの陰でこいつに片手で抱きしめられていた。


ーーーー抱きしめられていた!?


ぼんっ!と擬音が付きそうな勢いで彼女の顔が真っ赤になる。理由を聞いたら怒られそうだからやめておこう。


俺は気を取り直して先ほどの質問に答えてやる。


「---固定魔法だよ」


「?固定魔法?」


モニタはきょとんした顔をしている。確かに魔法の分類上は存在しない、いわゆる系統外魔法というやつだからな。


固定魔法。その名の通り、あらゆるものを固定することができる魔法。それが動物だろうが何だろうが、それこそ時間すらも固定することができる。


「そんなの無敵じゃない…!?」


確かに一見すればそうだ。


しかし、この魔法がなぜ認知されない魔法なのか。それは習得の難しさもあるが、防御方法はそれほど難しいものではないところにある。


はっきり言って、通常の対抗魔法や解呪魔法があれば簡単に効果を消すことができる。


「なんだ、大したことないじゃない」


それも一理ある。しかし、固定魔法はどの対象に魔法を掛けられるかの確認が取りにくい。魔法をかけられるまでは何に、誰にかけられたのか分からないのだ。それに、認知度や使い勝手の悪さゆえにほとんどが目にしたことのないもの。従って、知識や対処方法を知らなければ恐るべき魔法となる。


そして、俺が知る限りではこの魔法をここまで自由に使えるのは一人。


間違いない、あいつは転移してきたクラスメートの、いわゆる勇者の一人、近江下だ。


……なんだか頭が痛くなってきた。


ついでにもう一人の心当たり、あいつは多分、蓮本だろう。


俺は大きなため息を思わず漏らす。


「どうしたの?」


相手の様子を伺いながら、俺のため息の理由を聞いてくるモニタ。


「まあ、ちょっと…」


俺は曖昧に答えを返す。ああ、できれば会いたくなかったなぁ。


「で、そのコノエシタとハスモトって何なの?」


言わなきゃダメなんだろうか。…ダメなんだろうなぁ。


近衛下はクラスのカーストの中じゃ中堅くらいだ。良くもなく悪くもない、と言うところだが、何のことはない、相当の屑だ。


あいつは自分の地位はもっと上だと強烈に思っている、まあ、かなり自己愛が強いんだな。それだから何とかして上のほうに行きたい。が、反面すごく努力を嫌がる。何でも、以前多少の努力をしようとした事があったらしいが、あっさり数日で挫折。それ以降、努力することを猛烈に嫌がるようになり、ついでにコツコツと頑張るやつを非常に憎むようになった。


そのせいで、俺は何度、授業用のノートを捨てられたことか。犯人を突き止めても、「証拠はあるのかよ!」で、証拠を出すと、「それくらいで騒ぎ立てるのかよ、器ちっさ!!」だし。碌な思い出がない。


蓮本もカーストは同じくらいだが、こいつも自己愛が強い、が、嫌な方向は近衛下とは違うんだよな。


こいつは上の奴の足を引っ張って引きずりおろしたがるタイプ。だから、何かとワザとへましたり茶化した感じで悪ふざけをするんだが、露骨なんですぐにバレる。するとカースト下位の俺たちの方に責任を押し付け、「なぁ、お前がやれっていったんだよなぁ」とか言ってきやがる。こっちが反論しても、周りはカースト下位の俺たちをいたぶる方に回って何も聞く耳を持ちやがらない。そのせいで何度無駄に頭を下げさせられたことか。


あ、思いだしたら涙出てきた。


「…最低よね、あいつら」


本当、そう思うよ。


「で、なんでやり返さなかったのよ?」


ぐぅ、そこをつかれると痛い。いや、色々あるんですよ、カーストの事とか教師とかの認知の事とか。


おまけに、こいつらそこそこモテるんだよ。顔もそこそこイケメンだし、体型もモデルっぽい瘦せ型だし。普通に女の子を侍らしてたもんなぁ。


それに、持っているスキルが強力なんだなぁ。


近衛下の固定魔法は、大抵の対象は一撃で固定してしまう。それこそ火山の噴火くらいなら片手で止めてしまう奴だ。


おまけに蓮本の召喚魔法は手が付けられないくらいに強力だ。あいつにかかれば、この前戦った魔獣くらい鼻くそほじるくらいの手間で呼び出しやがる。それも何匹も。確か、あいつは神獣でも呼び出せたんじゃないかな。以前、呼び出した召喚獣に町の一つを襲わせて壊滅させてたって聞くし。


呆れるくらいに強力なスキルを持ってやがるんだよなこいつら。それに比べて、俺のスキルは地図製作。


…言っててますます空しくなってきた。


「で、どうするの?カースト下位のいじめられっ子さん」


「誰がカースト最下位で虐められてばかりで布団の中では毎日枕を濡らし続けるダサ男だと!?」


「そこまで言ってないでしょうが!?


で、どうやって勝つの?」


彼女は簡単に聞いてくる。


「おいおい、相手はチート能力者な勇者様だぞ?」


俺は皮肉交じりの笑みで返すが、


「あら、でも勝てるんでしょ?」


疑問も何もなく、あっさりと応える。


やれやれ、どうやら彼女は本気でチートな勇者様相手に勝利するつもりでいるらしい。


仕方ない。俺も彼女の言葉に乗り、勇者様方相手に勝利を収めることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ