くらすめーととの再会です!(最悪)
俺とモニタは洞窟の中を進んでいた。
洞窟といってもそれは自然のままではない、随分と人の手が入ったものだ。
通路の床はきれいに整地され真っ平らな道になっており石のタイルすら整然と敷き詰められている。
壁にしてもそうだ。固い壁面を加工しきちんと成形されている。
ところどころには照明用だろう光の魔法による照明器具が取り付けられており、使用されれば暗闇の中に迷うことはない。
通路のわきには排水用の溝まで整備されており、ここに費やされた労力の大きさを物語っていた。
「それじゃ、行くわよ!」
「待て待て待て」
ずんずん先に行こうとするモニタを俺はひとまず制止する。
「何よ、ここまで来たらあとはドーンとぶつかるだけじゃない!!」
本当に脳筋だなこいつは。
「あのな、敵が待ち構えているのになんの構えもなく行こうとするんじゃない」
「そんなのどーだってなるじゃない!」
気持ちが先走ってうずうずしてるな。このままじゃ本当に敵の罠に頭から突っ込みそうだ。
「ほら、一旦落ち着いて深呼吸しろ。ヒッヒッフーッって」
俺の言葉を一応受け入れて深呼吸をするモニタ。
「ヒッヒッフーッ、ヒッヒッフーッーーー」
うむ、素直でよろしい。
「で、どうするのよ?」
若干落ち着きを取り戻した彼女は少し不満げな目つきで聞いてくる。
「まあ待て、さっきも言った通り、俺たちは今、この洞窟のここら辺にいる」
先ほど書いた簡単な地図を取り出して見せてやる。
俺たちのいる場所は洞窟の入り口からやや離れた通路の中。
この洞窟は一本の主要通路を中心に蜘蛛の巣のように通路が張り巡らされている。
その一つ一つを詳細に解析するのはかなり手間がかかりそうだが、取り合えず俺たちが向かうのは入り口方面。これを主要通路を遡って向かっているところだ。
入口までには特に大きなホールがある。田舎の少年野球のグラウンドなら入りそうな巨大なドームだ。入り口に向かうにはこのホールをどうしても通過しなければならないが、これだけの場所だ。敵の一つや二つ待ち構えていないわけがない。
「あら、そんな事ないじゃない。敵があたし達に気付いているならとっくに迎撃に来てるはずだもん」
なるほど、それも一つの意見だろう。しかし、敵が気づいていてもあえて泳がせている可能性がある。いや、むしろその可能性のほうが高い。
「……なんでよ」
じとーっ、とした視線をぶつけてくるモニタ。
「まあ、これを見ろ」
俺は照明用の魔法で手にした地図を照らしながら説明する。
「今、このホールには十人強の敵が集まってきている」
「ふんふん」
地図の上にぼやーっとした光が幾つも光る。
「こいつ等はここから動いてないだろ?」
「確かに動いてないわね」
「もし俺たちに気づいてないとしたら、他の仕事もある。この場から動かないのは不自然じゃないか?」
「えー、そうかなぁ」
彼女は俺の説明に不満そうな声を上げる。
「本当に気づいてなくて、ただ単に休んでいるだけかもしれないじゃない」
彼女の指摘通りの可能性はもちろんある。しかし、だからと言って、待ち伏せの可能性も否定しないわけにはいかない。
「んで、結局どうするわけ?」
イライラした感じの口調になっているな。どうやら考えるより強引に突破するのが好きなんだよなこいつ。
だが、どのみち敵が立ちふさがっている以上これを何とかしなければ先には進めない。
「---そうだな」
俺は彼女に一計を話す。
「アンタのほうがよっぽどえげつないじゃない!」
彼女の非難めいた笑いをしり目に俺たちは障害を排すべく歩を進めた。
盗賊どもは俺たちを今や遅しと待ち構えていた。
そいつらは俺たちがホールの出入り口に当たるドアの付近まで来たのを見て一斉に武器や魔法をそこに向けてくる。
こいつらも何らかの探知魔法でこっちの動向を把握しているみたいだな。
そう思いながら俺は道具の中から、丸い玉を取り出す。
モニタは佩いていた剣を抜く。
今回は前回のような大振りのものではない。狭い通路や場所でも扱いに困らないように刀身はかなり短い。
彼女は扉から少し離れて立ち、剣を正眼に構える。
刀身に青白い光が集まり、全体が稲妻のように青く光る。
「---はぁっ!!」
刹那、彼女の振り下ろした剣閃が光を帯び分厚い扉を打ち破る。
打ち破られた扉は風に舞い上げられた木の板のように宙に舞い上がり、その重量を思い出させるような轟音を立てて落下する。
その光景に集まっていた盗賊たちは絶句した。
本当に開いた口も塞がらない。
思いもよらない光景にしばし思考停止に陥る連中だったが、
コロンコロンコロ
三つの玉が投げ入れられ、連中の目が思わずそこに集中する。
次の瞬間、
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
その玉が強烈な光と、そして音を放つ。
100万カンデラの光と120dBの音が一斉に目と耳を焼く。
のたうち回り、または驚愕のまま身動きできない盗賊たち。
そこに一気に躍り込む。
「でやああああああ!!!」
モニタの放った剣閃が三人の男をまとめて吹き飛ばす。
その勢いでホールの壁にたたきつけられ、衝撃でそのまま失神。
「ぐぉ!?」
俺は目を覆ったまま視界の回復しない一人の頸椎を手刀で打つ。
すると、あっさりと倒れる盗賊。
続けて身もだえている奴の後ろに回り込み、
きゅっ
「--はぅ」
優しく頸動脈ごと締め落としてやった。
「----っ!」
頭を振ってなんとか態勢を整えようとした奴の鳩尾を拳で刺して悶絶させると、その光景を見て一瞬たじろいだ奴の顔面を蹴り飛ばす。
その一撃でそいつは気を失うが、ひょっとしたら鼻が折れたかもしれない。
少し悪いことをしたかなと思いながら、目を抑えながら魔法の杖をかざしていた奴の顔をつかみ、そのまま足を引っかけて河津落としを決めてやる。
ゴンッ、と勢いいい音がなったが、まあ死んではいないだろう。
「---あ」
何とか視野を確保したばかりの男の顔面に一撃を加えて再び視野と意識を奪うと後ろを向いて逃げようとした奴の後ろから飛び掛かり、
「…はぅ」
今度もそっと締め落としてやる。
俺が片付けている間にモニタのほうも整理が済んだようだ。
あと倒れた男が三人増えている。
「な、何なんだよお前らは!?」
最後に残った一人。ーーー盗賊たちの首領らしき男が俺たちを竦んだ声で怒鳴りつけた。
腰を抜かし、泡でも吹きそうなその男。
「こいつが、ガンボか?」
「……んー、違うわね。ガンボはこんな目がデカくないし、ついでにもうちょっと背が高かったと思うし」
なんだ、空振りか。すると、本人はいないのかそれとも別の場所で待機しているのか。
とりあえずその男を締め上げて聞き出すか。そう思って俺がそいつに近づこうとしたところ、
ギィ…
男の背後のドアが鈍い音を立てて開く。
そこから出てきたのはフードを被った二人の男、いや、少年か。
その表情を窺い知れない二人を見て男の表情が晴れ、ついで毒々しい嫌味を吐く。
「おい、お前ら何処に行ってやがった!?全く、これだからお前らみたいなクソガキは使えねーんだよ、あぁ!?」
それを聞いてフードの奴が、ピクリと動く。
「さっさとあのガキ共を始末しねえか!?テメェらが犬のクソにーーー」
「やまかしいこのハゲ」
フードの一人が男の腹を靴のつま先で思いっきり蹴りつけた。
「うげぇ!?---テメェ…」
フードに蹴りつけられた勢いで口から涎と吐瀉物を吐き散らしながらそいつを睨みつけるが、
「誰がクソガキだ粗大ゴミヤローが」
もう一人が今度は顎を蹴り上げる。どこか嚙んだのか、男の口から思わず血がしたたり落ちる。
いきなりの事に頭が回らない様子だったが、その男はさらに厳しい視線で刺す。
しかし、それは二人の機嫌を逆撫でることにしかならない。
「なんだなんだなんだその目は!?ブッ殺そうか!?」
安いチンピラのようなセリフのフードの少年。しかし、男はますます憎しみの視線で二人を睨みつける。
それを見てフードたちは溜息をつく。
「あー。もういいわ。さっさと死ね」
その言葉の次に少年は手を男に向けてかざす。
手のひらから放たれた光が、光の魔方陣を組み上げ、そこから現れたのは巨大な竜の牙。
「---ヒッ」
その言葉が男の最後の言葉となった。
魔方陣から突き出された竜の口に男の体は吸い込まれ、
くしゃり
そのまま咀嚼。
ぐしっぐしっと二、三度顎を動かすと、そこには大量の血と男の者だっただろう肉片がこぼれ、
ごくん
不味い肉の塊でも無理やり口に入れられ不快そうな顔の竜が姿を消す。
あまりの凄惨な光景だった。思わずモニタの視線をマントで隠して正解だった。くちくちと肉を漁る音に、珍しく身を縮こませている。
「あーあ、マジでつまんねぇ…」
「今度はお前の番か、クソマサ!!あぁ!?」
俺は安い威嚇をする二人の声を聴いて以前の悪い予感が的中したことを実感した。
このフードの二人は、俺と同じくこの世界に転移してきたクラスメートのうち二人。
いわゆる、勇者様だった。
ようやくクラスメートとの再会です。




