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潜入作戦です!

彼らは獲物が来るのを待ち望んでいた。


情報によれば、この道を通るはずだ。


彼らが今や遅しと待ち焦がれていると、


ーーーー来た。


狙い通りだ。


彼らの待つ獲物ーーー金貨を大量に輸送する馬車が。


彼らが聞いた話では護衛の数はそれほど多くないということだ。それもそうだろう、先日の戦いでこちらの威力が知れ渡ったのだ。それなのにわざわざ命を捨てようという数寄者もそう多くはいない。


彼らは満を持して襲い掛かる。


呼び出したのは大型のドラゴン三体。


かなり大型のものだ。あの程度の馬車なら爪で一握り出来るだろう。


突然の襲撃に、馬車の護衛たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


情けないものだ。彼らは口を歪めて嘲笑した。


このような臆病者の群れなど竜の一吹きで皆殺しにできる。それも面白いかと思ったとき、引き上げの合図が出る。


彼とて所詮、雇われの身だ。雇い主にいちいち逆らうのも面倒だ。


彼は竜に命じて馬車をつまみあげさせ大量の金貨を奪って行った。




「おい、しっかり運べよ」


「分かってるよ」


数人の男たちが手分けして馬車の荷を下ろしていく。


金貨の詰まった袋がぎっしりと詰まった箱を下すのは数人がかりで魔法の強化ありでもかなりの労力を要する。


それらを荷台に乗せ倉庫にしまうとようやく一段落だ。


彼らは愚痴を零しながらも次々に作業にかかる。


ようやくして荷物の整理が終わると仕事は一息をつく。


彼らは仕事からの解放感を手にそこから去っていく。


誰もいなくなり静まり返る倉庫。


ガタガタガタッ


一つ、いや数個の箱が音を立て、そして、


「ぷっはーーーーっ!!」


卵を破るヒヨコみたいに出てきたのモニタだった。





「ようやく外に出られたー」


「へいへい……」


解放感に喜ぶモニタだが、同乗していた俺は疲れからあまり喜びを感じられなかった。


何せ、狭い空間にこいつと二人っきり。


体と体、密着した状態で長時間身動きが取れなかったからだ。


少しでも動くと、この馬鹿っ、とかどこ触ってんのよ変態って言われる。俺は気を使いながらほとんど身じろぎすらできずに閉じこもっていたのだ。


俺はすし詰め状態だった体を伸ばしながら周りを確認する。


辺りには明かりはない。しかし、気配を凝らしてみると、どうやらここはかなり大きめの倉庫らしい。奥のほうまで金貨が詰まっているであろう箱が積まれている。


どうやら奴らのアジトへの潜入は成功したようだ。周りの様子からして辺りに警戒の目もとりあえずはないようだし。


「しかし、こんな簡単な作戦が上手くいくとは」


「まっ、あたしの天才的頭脳の勝利ってやつ?」


モニタは自信満々に胸を張るが、そんなに大した作戦でもないだろ。


あの時、モニタが考えた作戦は「わざと覇者を奪わせて、その荷の箱の中に潜んで敵のアジトの場所をつかむ」というもので、まんまと成功した形になっている。


それでも俺としては不安は拭えないわけなのだが。


「それで、この後どうする?」


俺の声にモニタは堂々と、


「決まってるじゃない!!


このまま敵のアジトを一気に突破して大将首を狙うのよ!!」


うむ、見事に何も考えてないらしい。


「それより、ここの場所を知らせるほうが重要だと思うんだが」


「そんな面倒なことしてられないわよ。


大体、ここが連中の本拠かどうかも分からないし、それにもたもたしていたら敵が逃げちゃうかもしれないじゃない」


「そんな考えでどうするのよ一体」


横から声が挟まれる。声の主はエルフィナさんだ。


「確かにあたし達は敵のアジトへは侵入できたわ。でも、ここが何処かも分かってないのよ?」


「そんなの、敵を壊滅させればあとでいくらでも分かるじゃない」


「だからそんなに簡単に物事が運ぶわけないでしょ」


腰に佩いた剣の調子を確かめながら呑気に答えるモニタだが、エルフィナさんはそれを頭を押さえながら見ている。


「あの、あたし達って、いま何処にいるんでしょう…?」


エルフィナさんと同じ箱に入っていたカトリナが心配そうに聞いてくる。今回のことには彼女は巻き込みたくなかったのだが、彼女のあまりの熱心な頼み込みについ参加を許してしまった。


俺は緑色の少女の頭を、ぽんっとなでると、


「心配は要らないよ。一応、大体の場所は分かっている」


「そうなの?」


と、彼女ではなく不思議そうな顔で聞いてきたのはモニタ。


「ああ、俺たちは今、バルデ山地の近くの洞窟に設けられた倉庫にいる。地上まで約80メートルってとこか」


「ほう、そんなに細かいところまで分かるのですか」


感心したのは従者のオルト。この総勢五人が今回の潜入したメンバーの全員だ。


「ああ、もう少し詳しく言うと、バルデ山地の西端、馬車が襲われた所から100キロほど運ばれたとこらへんかな」


「……ふーん、そうなんだ」


モニタは一見興味なさそうに、しかし重要なことに気づいた風で会話を遮った。


「それで、どうしますかな?」


従者自体もそれに気づいたが、それを振り切るように今後の方針を訪ねる。


「決まってるじゃない、正面突破よ!!」


力強く拳を握って宣言するモニタ。


「アンタの頭にはそれしかないのかしら…」


とモニタのことを若干心配するエルフィナさん。大丈夫です、こいつにはそれしか考えありませんから。


最も、今のところそれしか選択肢はなさそうだ。この洞窟の地図は大体把握出来たが、どのみち敵との交戦は避けられない構造になっている。


やれやれ、これでは俺たちが罠に嵌めたのか、それとも嵌められたのか分からないな。


俺は思いながら突破のための手はずを練った。






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