バカとスキルと夜更かしです!
「…うっ」
視界が歪む。
頭も痛い。
目を開いたら、木の枝の間には星空が広がっている。
今は夜なのか。
ーーーー夜!?
彼女は思い出した。
そう、今まで盗賊団が襲来しその配下の獣たちと戦いを繰り広げていたのだ。
身を慌てて起こすと、
「---っ!」
足に痛みが走る。
足首をどこかで痛めたのかも。
それに、腕やわき腹もジンジンと痛む。ああ、そういえば巨竜の一撃を食らったんだったっけ。
簡単に手当てされてはいるが、本格的な治療や回復魔法での治療の跡はない。
何処の誰かが治療をしてくれたのだろうが、これではしばらく動けそうにない。
「---ふぅ」
彼女は動くのを諦め、再び横になる。眼の前にはたき火に火が起こしてある。誰かは知らないかすぐ近くに人がいるのだろう。
彼女がそう考えたとき、
「おう、目が覚めたか」
そいつが帰ってきた。
「----で、またアンタなわけなのよね…」
まあ、何となくそんな気はしていたが。
ぱくぱくごくん。
眼の前で焼いてやった焼き鳥を平らげると、モニタはようやく人心地ついたようだった。
「んで、どういう状況なわけ?」
なんで上から目線なんだこいつは。
「だから言っただろうが。
お前があのバケモンに叩き落されたらから、それを受け止めてやったのっ。
そしたら崖下までのダイブだよ。いやホント死ぬかと」
「だからそれは悪かったって」
「とりあえず目を覚ましたのは良かったけどな。
これじゃ動くのは朝になってからだな」
俺は彼女のけがの程度を見ながら言った。
あの時、怪物から不意の一撃をくらい気を失ったモニタは魔法の制御を失いそのまま急降下。慌てて受け止めたが、そこはすでに空の上。
そのあとは二人揃って崖下へロープなしでのバンジー敢行。
その下が上手い具合に森になってたからよかったものの、なければ木の枝とかでショックを受け止められなかっただろうなぁ。
そう思いながら焼けた肉を一つ口に運ぶ。
「---ねえ、これアンタがしてくれたの?」
彼女は包帯をさすりながら聞いてくる。
「そうだが?」
と返すと、モニタは「…そう」と言って横になる。
「---少し休むわ。このままだと動けないだろうし」
俺がそうか、と言うと、彼女は少し安心した顔で眠りにつく。
「…変なことしないでよね」
と要らぬ心配に、
「安心しろって、俺は一応ロリコンじゃないんでな。
手を出すならもっと悩ましボデーなぐふっ!?」
「一言多い!!」
それはそうかもしれないが、わざわざ手に付けたハンドグローブ投げつけることもあるまいに。
夜が明けて、俺たちは朝飯もそこそこに動き出した。
昨日の戦いの後、一団がどうなったか気がかりだったし、モニタは随分従者のことを心配しているようだ。
崖から落ちて、モニタを一応手当した後、俺はあの付近の様子を一応伺ってみたが、既に大きな戦闘は行われてないように見えた。
恐らく敵も手持ちの戦力を使い切ったのだろう。
あれ以上の戦いはないと思ったが、それでも彼女はかなり気がかりのようだ。
とりあえず俺たちは森の中を突っ切って、一団がいると思う崖の下まで行くことにした。
「…重くない?」
背中に背負っているモニタが聞いてくるが、
「いや、大丈夫だけど」
実際、彼女は結構軽い。こいつの来ている鎧は胸当てを中心にしたものでもともと動きやすいようにパーツが少なくなっているが、それでも軽い。何か装備を付けているとは思えないくらいだ。
そう思いながら歩いていくと、
「ねえアンタ、どんどん進んでいくけど大丈夫なの?」
ずんずん深い森の中を進む俺に、少し心配げに聞いてくる。
「ああ、大丈夫」
「なんでそう言い切れるのよ?」
「だって、それが俺のスキルだからな」
モニタは少し合点がいかないらしい。
俺の持っているスキルーーー地図作製は何も地図を製図するだけの能力ではない。
地図を作成するための情報を集める技術一般が含まれているのだ。
「そうなの?」
とまだ納得がいかない様子のモニタ。
「ああ、だから地図を作るために必要な情報を集める魔法や方角を正確に把握する感覚、罠や野獣とか、そういったものを感知する能力や魔法なんかも含まれるな」
「ふーん。だからあの時敵が来たって分かったわけ?」
「そういうこと」
一応納得してくれたらしい彼女。これはこれで大した能力だと自分では思っている。---いるんだが、やっぱり聖剣とか召喚魔法とかの方が格好いいよなぁ。
「そういえば、さっきからモンスターに合わないけど、それも分かってやってるの?」
「そうだよー」
それを聞いて妙に納得した様子。これはこれで役に立つのだ、ホント。
「おっ、見えてきたぞ」
示した先は、一団が上にいるだろう崖の麓、そこにいたのは彼女の従者とあと数人の冒険者の姿。
「---、モニターーっ!!」
おーおー、嬉しそうにしちゃって。
顔を綻ばせながら駆け寄ってくる姿に、背中の彼女も思わず下りて駈け出そうとするが、
「----っ!!?」
怪我のことを忘れていたらしい。思わず痛みで顔をしかめるが、
「よっと」
そのままでもなんだ、俺は彼女を抱きかかえて、まあ俗にいうお姫様抱っこの状態で運んでやる。
「ちょっ、ちょっと!?」
少し慌てた様子だが、わざわざ背負いなおすより早い。
息を切らせた従者が彼女を受け取ると、ようやく一息つく。
やれやれ、これで一安心かな。




