盗賊退治にいきましょう!
ギルドの受付でエルフィナさんと話していると、知った声が聞こえていきた。
「あら、何してるのアンタ?」
嫌味な響きを含んだ声はこの間、目を付けられてしまったちんちくりん。
「誰がちんちくりんよ!!?」
読むなよ人の心を。
「まあいいわ。ところでアンタ何してんの?」
「何って仕事の話だが」
「へぇ、仕事の話ねぇ…」
彼女は含み笑いを潜ませ、俺の手元の受付票を覗いてくる。
「あらぁ、いつものお仕事?大変ねぇ」
にやにやと嫌らしい笑みを振ってくるが、
「いいだろ別に」
それほど相手にせずに仕事の受付を済ませる。
「アンタみたいな腰抜けじゃリスクの高い盗賊討伐なんて考えっこないんでしょうけど」
くすくす笑いながらこっちを煽ってくる。
「言いすぎですよ、モニタ」
後ろから彼女を制するオル。するなら最初からしろよ。
「まあ、せいぜいコスい仕事をちまちまとこなしていなさい。国を脅かすような相手にはアンタじゃ単なる足手まといだろうから」
彼女はせせら笑いながら従者を引き連れて去っていく。
「なんなんですかあの人は、一々コータさん見つけては絡んできて」
その態度に腹を立てたのか、エルフィナさんの口調もどこかキツい。
「そういうお年頃なんじゃないですか?」
俺は努めて平静を装いながらそのコスい仕事とやらの受付に入るのだった。
草原の道を行く一団がある。いや、一団ではなく一軍か。彼らの一人一人が歴戦の勇者であり、飛ぶ鳥さえも恐れて声を出さない。
盗賊ガンボの討伐隊の人数は百人を超えた。いや、二百以上いる。
腕利きの猛者たちが集結し、その盗賊を誘き寄せたところを討とうというのだ。
盗賊はかなり手ごわいと聞く。何せ、何度も王国軍を出し抜いた連中だ。しかし、これだけの戦力がいれば十分だろう。むしろ、多すぎで費用効果が悪いくらいと感じるほどだ。
厳めしい者、又は奇異な者。様々な戦士が揃う中、彼女ーーーモニタも自分の従者を従えて一団に加わっていた。
「---で、なんでアンタがいんのよ?」
と、彼女が相変わらずの口調、というか困惑気味に顔をしかめながら聞いてくる。
「いや、ほら、出張屋台で」
「んなこと聞いてないわよ!!」
モニタは嚙みつきそうな勢いでまくし立てた。
「大体、なんでアンタがこんなところまで来てるわけ!?アンタみたいなのがいると危ないでしょ!?」
「誰が『お前みたいなそこらの幼児より役に立たない案山子以下の突っ立ってるだけの雑魚人間』だ!?」
「そこまで言ってないでしょ!?」
「まあまあモニタ。これでも食べて落ち着きましょう」
割り込んできたのは相変わらずの笑顔の執事。
「あら、おいしい。甘辛いタレが素朴ながらもいいコク出してるじゃない。これに香りがついた鶏肉によく絡んで、ってそうじゃない!!
なんでこんなところまで来て焼き鳥売ってんのよ!?」
向こうの屋台で焼き鳥を焼いているのはセルフィナさん。香草焼きもいいが、甘辛い焼き鳥も好評で次々と売れていく。
「はい、お一つどうぞ」
笑顔と共に、セルフィナさんに鳥の香草焼きを一つもらうモニタ。それを一口食べると、
「あ、あっさりしててとってもおいしい」
「あら、良かったわ。脂身を落としておいたから少し味気ないかと思ったんだけど」
「こう、あっさりとしたところに透き通るようなハーブの香りが」
続けてそれをもきゅもきゅと口に運ぶ。
「あの、お口直しにエナジーサワーなんて如何でしょう…?」
遠慮がちに、カトリナ自慢のお手製エナジーサワーーーー魔力回復薬を一つ差し出す。モニタはそれを口にすると、
「へえ、気が利くじゃない。普通だと癖があって飲みにくいエナジーサワーにも香りがつけてあるのね。これなら食事をしながら魔法力も回復できる、ってそうじゃない!!」
差し出されたサワー片手に言っても説得力が無いぞ。
「だから、何でこんなところまで来てこんなもの売ってるのよ!?」
「あ、あの、お口に合いませんでしたか…?」
おずおずと聞くカトリナに、
「あ、いや、良く出来てて口に合うわ、ってだからそうじゃなくて!?
何で貴女みたいな娘がこんな危ないところまで来てるのよ!!?」
ぐいぐい迫るモニタ。
「そうねぇ、日が落ちる前に町に帰らないと危ないわよねぇ」
料理をしながら少し困った顔のセルフィナさん。
「そうですねぇ。もう少ししたら帰ります?」
「そうしようかしら?」
危険な盗賊の討伐任務の最中の一団の中だというのに、ほとんどピクニックに来たノリの屋台と移動魔法店。
微妙な表情で何も言い出せなくなっている彼女をよそに、空は青く透き通っていた。




