クラスごと異世界転移です!
底辺というものはどこにでも存在する。それは人間がいる限り、いや、生物が存在する限りどこにでもあるものだ。例えばソシャゲにもあるSSRとNキャラの絶対的格差。クラス最底辺の俺は食物連鎖における、なんだ、その、例えれば草食動物がした糞、の中に含まれるバクテリアが吐き出す分解酵素の如く、ただひたすら
貶され貶められる毎日だ。正直、死にたい。
はぁ、何でこんなことになったんだろうか。クラスの中じゃ悲しくなるくらいに最底辺。いくら嘆いても取り返しがつかない。
成績や運動なんかでは説明できないクラスカーストの罠。それと知らずに嵌まり込んでしまった俺。どんだけ間抜けなんだろうか。ああ、人生やり直したい。
「よう今日も来たのか、クソマサ」
「あー、くっせー。正直たまらねーねこの臭い」
「早くクソはクソらしく便所に帰ってくれねーかなー」
上位カースト共が好き勝手に言ってきやがる。誰がクソマサだ。俺には梁島宏真っていうちゃんとした名前があるんだよ!!
…そんな風に言える元気があったらなぁ。
「…はぁ」
そうため息をつきながら席に着く。
「…あんまり気にしちゃ駄目だよ」
一応声を掛けてくれたのは、矢鳴香奈。所謂幼馴染、というやつだが中学に入ったらめっきり話さなくなった。たまに顔を見ても軽く会釈されるだけの関係性。しかし、高校で再び同級生になってからはそこそこ口を聞いてくれるようになった。まぁ、俺があまりに露骨に苛められてるのを見かねてかもしれないが。
それでも二、三言いうと他の友達のところに行ってしまうのだが。
「はぁ…」
こんなことが今週はあと五日も続くのだ。最悪だ。
早く一週間、いや、せめて放課後にならないかと祈るばかりだ。
そんな鬱々とした気持ちも同じ底辺仲間が居ればすこしは気が休まるというものだが、二人共全然来ない。なんでだろう。そういえば、一人は部活、一人は試験で公欠か。
…ということは今日は一人。
嫌すぎる。
どうあっても、嫌すぎる。
普段なら三分の一分割されている、嫌みと嫉みとよく分からないものが今日に限って言えば一分の一で俺に降りかかってくる。
ああ、嫌だ。
いっそ、今日はトイレに入っていたい。
いや、全日中トイレのお世話になりたい恥ずかしがらずに。
そこまで振り切れない自分の不甲斐なさに嘆きながら今日も一日が始まろうとしていた。
ーーーはずだったのだが、
「---!!?
何だ!?」
誰かが大きな声で叫ぶ。
ガクン、と突如教室が揺れる。
「地震!!?」
誰かの悲鳴につられて俺は思わず窓の外を見る。
いや、これは地震ではない。
窓の景色が、大きくゆがむ!?
ぐにゃり。
空間が音もたてずにひしゃげ、広がり、支離滅裂に変化していく。
この明らかな異常にクラスの中が絶叫で溢れる。
「なんだ、なんだよ!!?」
「わ、わわわわわ!!!?」
「お、おかぁさぁーーーん!!!?」
普段、あれだけいきがっている連中の慌てふためく顔を見るのは楽しいが、これはいつまで続くんだ?
天井の蛍光灯のバチバチいって消えるし。
…まあ、そのうち落ち着くだろ。
連中が怯え竦んで縮こまって座り込んだりへたり込んだりしているおかげでこっちは普段よりだいぶ気楽だ。すると、
ガタン!!
「「ぎゃああああああーーーーーー!!!!!!」」
「「きゃああああああああーーーーー!!!!!」」
クラス中の男と女、両方が同タイミングで叫ぶとともに最後のひと揺れが来た。
そのあとは、打って変わって、しんとする。
天井の明かりもない、窓から差し込む光もない。完全に暗闇の教室。いや、窓の外に何か火のようなものが微かに見える。あれは蠟燭の火か?
そう考えていると、ガラリ、と教室の扉があく。
怯え切った目でそこに注視する生徒たち。
そこに現れたのは、年端もいかない、おそらく自分たちよりも年幼い少女。
彼女は年齢にそぐわない、朗らかさと安心感を含めた声で俺たちに優しく言った。
「---ようこそ、異世界の勇者の方々。
私共は貴方たちをお待ちしておりました」




