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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

秘封倶楽部の短編二次創作

温もり、2

作者: 秋津珠音

なんだこれ

次の休みにはどこに行くのが良いか私は考える。

とは言っても行楽に行く訳ではない。

どこに行くにせよ実際に行くのは深夜帯。

おおよそ普通の、真っ当な人達が行くような時間ではない。

私達はいいのだ。

色々な所へこれまで何度も行き、色々な体験をしてきた私達は普通の真っ当な人、とはとても言えないだろうから。

私達は普通ではない。

互いに気持ち悪いと言い合うような目を持っているのだから。

考えても行き先が決まらなかった私は、どこに行くのか考えるのを止めた。

考えるのはまた何か面白い情報を入手してからでいい。

とりあえず次の休みにはあてもなくふらふらと夜の街を散歩しよう。

それはそれで楽しそうじゃないか。


私達はサークル活動と称して、禁じられた結界暴きをしているのだ。

しかしなにもしなくても相方には境界が見えているのだ。

見えてしまうことは仕方ない、ならばそれに興味を持つのは悪くないはずだ。


……なぜメリーには境界が見えているのか、そして私にはどうして人間GPSのような力しか無いのか。

たまに彼女の持つ力が恐ろしいと共に羨ましくなる。

私はそっと溜め息をついた。

こんな事は考えても仕方ない、それにメリーの持っている力がどうあれ、彼女が私にとってかけがえのない存在なのは違いないのだから。


そっと隣で眠るメリーを見た。

人形のように整った顔をした彼女は、不思議な力を秘めた瞳を閉じて安らかに寝息をたてている。

私は気持ちよさそうに眠るメリーを起こしてしまわないように、そっと顔にかかった髪を手でよけて頬を撫でる。

白磁のように白く美しい頬は柔らかい。

私はその頬に顔を近づけるとそっとキスをした。

絹のように艶やかな髪からは私のものと同じシャンプーの香りがする。

しかし私と同じはずのその香りすらとても魅力的な香りに感じるのは、きっと香りがメリーからしているからなのだろう。

少し身動ぎをしてメリーは瞳を開いた。

まだ眠いのだろう、開かれた瞳はトロンとしている。


「ごめん、起こしちゃったわね」


「蓮子?どうしたの?」


「ううん、メリー。なんでもないの。しいて言うなら私も寝ようかと思って。隣、寝てもいい?」


「ええ、いいわよ」


一言二言、言葉を交わすと私はメリーの隣に横たわる。

向かい合ったメリーから体温が伝わってくる。

もっとその心地好い暖かさを近くで感じたくて私は彼女に寄り添った。

顔をあげるとメリーと目があった。

彼女はクスッと笑うと柔らかそうな唇を開く。


「もっとこっちに来てもいいのよ?」


私はそう言ったメリーと布団の中で抱き合った。

服越しに彼女の体温と鼓動を感じる。

首筋を甘い吐息がくすぐった。

その感覚だけで私の鼓動がはやくなる。

私だけドキドキしているのも少し恥ずかしいからちょっとメリーをからかってみようと思う。


「ねぇメリー、もっと近くで貴女を感じたいんだけど……」


「充分近くじゃない。これ以上近くでって言ったら服を脱ぐしかないわよ?」


口元に笑みを浮かべメリーはそう言った。

きっと冗談で言ったのだろう。

しかしメリーのこの発言はちょうどいい、私は今メリーをからかおうとしているのだから。


「うん……そうね。ダメかな?」


こんな事を言うのはきっと眠さで頭がぼやけているせいだ。

いくらからかおうとしているとは言え、普段の私ならこんな事は恥ずかしくて絶対に言えない。


「……ダメではないけれど、きっと寒いわよ?」


「大丈夫よ、メリー。貴女と暖めあえばいいのだから」


「……蓮子どうしたの?いつもの貴女ならそんな事絶対にいわないわよ?」


「……私だって恥ずかしいわよ。こんな事言うのは」


恥ずかしい。

部屋が暗くて良かった。

きっと今私の顔は真っ赤になっていることだろう。

メリーをからかっているのにこの顔をメリーに見られたら、逆に私がからかわれてしまう。


メリーがクスッと笑ったのがわかった。


「そう。なら言わなければいいのに。……それで、服は脱ぐのかしら?」


きっと今メリーはニヤニヤしている事だろう。

声で私をからかおうとしているのがわかる。

しかしそうはいかない。

今は私がメリーをからかうのだ。


「そうね。脱ぐわ」


はっきりとそういうと私は服を脱ぐふりをした。

メリーが隣でわたわたと慌てるのがわかる。

きっとメリーの心臓も早鐘をうっていることだろう。

「え、えぇ!?本当に脱ぐの?私も!?……って蓮子、貴女脱いでるふりをしているだけじゃないの。なんなのよ、もう……」


早速バレてしまった。

私は相手を騙したりするのが苦手ならしい。

しかし慌てるメリーを見れただけよしとしよう。


「ふふっ、メリー、おやすみ」


「もう、蓮子ったら。驚かさないでよ。……まぁいいわ、おやすみ、蓮子」


今の私にはこうやってからかうくらいしか出来ないけれど、もっと近くでメリーを感じたいというのは本当のことだ。

まだ早鐘をうっている私の心臓を誤魔化すようにメリーの胸へ顔を埋める。

するとメリーの鼓動がいつもより速いことに気がついた。

驚いて鼓動が速くなっているのだろうか。

それともメリーも裸で抱き合う発言にドキドキしていたのだろうか。

そうだったらいいな、なんて思いながら私はメリーを抱き締めた。

なんだこれ…


蓮子ちゃんかわいい

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