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リトヴィー家の執事  作者: 蒼咲猫
リトヴィー家の…執事見習いです。
8/18

私、主と出逢いました。

 お待たせしました。

サブタイの読み方は、「わたくし、てんしとであいました。」です。





 執事長に案内されて到着した部屋は、私が普段立ち入りを禁じられている場所の中でも、奥の方にある場所でした。

 今更緊張してきた私は、それを隠すように深呼吸して、目の前の扉をノックしました。


「レクト様、ラディアスです」

「…………」

「……?失礼します」


 返事がないことに一瞬戸惑いましたが、私の推測が正しいのであれば、それは仕方のないことだと思い直し、扉を開けました。

 そしてーー









 さらさらと風になびく、薄い金の髪にできた天使の輪。

 小さく呼吸を繰り返す唇は仄かに赤く、頬は僅かに赤みを帯びて、その肌は透き通るように白い。

 揺りかごに揺られながら日の光を浴びて、気持ち良さそうに寝ている主。

 良くできた一枚の絵画のようなその光景に、暫く動くことができませんでした。


ーー天使……?


 そんな言葉が頭をよぎる程、「レクト様」の周りの空気が神聖さを帯びていた気がしました。

 レクト様は、クロアル様やシュナリア様ーークロアル様の奥様、つまりリトヴィー公爵夫人。元シグルト王国の第二王女にして、社交界を取り仕切る美女ーーの血を受け継いだお方、将来はきっと美男になるのでしょう。


 あどけない寝顔をしている私の主(てんし)は、見たところ1歳ほどの、幼児でした。




「ーーん~…ふぁっ」

「!」


 私がじっとレクト様の寝顔に見いっていると、レクト様は小さく声をあげて、その目を開かれました。


ーー蒼い目……


 目を覚ましたレクト様は、部屋にいる私にきょとん、と瞬くと、ゆっくりと首をかしげていた。

 その目は、シュナリア様に似た蒼い目。

 その目を見た瞬間、何故クロアル様があんなにも警戒していたのか、その謎が一気に解けました。



 ここ、シグルト王国では、蒼い目は特別視されている。

それは何故か。その答えは簡単で。

このシグルト王国の王族の目が、代々その色なのです。

そう、『王族の』。

 今まで蒼い目をした者は、王族以外には産まれることがなかったのです。

それは、例え王族の誰かが降嫁しても同じで。

 この方ーーレクト様のことが表沙汰になれば、王国が混乱に陥るのは必至。

下手するとリトヴィー家は、王からの信頼を失うでしょう。

 いえ、今でもリトヴィー家のことを疎ましく思う貴族はそれなりにいます。

彼らにレクト様のことが知られれば、まず間違いなく、これ幸いとリトヴィー家を貶めてくるでしょう。

そして、きっとレクト様の命ーーもしくは身柄ーーを狙ってくるのでしょう。


 自分で言うのも何ですが、私はレクト様の執事に最適だったのでしょう。

産まれもはっきりーーどころかこのお屋敷ですし、親は両親共にリトヴィー家に仕えています。

その親もある程度の地位にいますし、私は執事としてのいろはを執事長直々に叩き込まれています。

さらに、幼い頃より、リトヴィー家に尽くすように躾られています。

そして、私が転生したが為に、物覚えもいい方ですし、精神年齢は(肉体的年齢的に見て)あり得ないほど高いです。

 と、ほんの少し例をあげただけですが、クロアル様にとって、私の存在はレクト様の執事にうってつけだったのでしょう。



「ん、あー」

「……お初にお目にかかります。本日より、レクト様付きの執事となります、ラディアスと申します。以後よしなに」

「だーむ、ちょぶーー」


ーー駄目だ、理解できない…。


 残念なことに、三歳の私の理解力では、主の言いたい事を理解することはできなかったのです。

その事に、執事失格だと絶望した私は、この幼い主の言いたい事を、絶対に理解するのだとーーえぇ、とても燃えましたとも。

……様子を見に来たらしいーー大方私が何かしていないかの監視だろうーーメイドがドン引きする程には。



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