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リトヴィー家の執事  作者: 蒼咲猫
学園編
17/18

執事の手のひらの上で

時間なくて中途半端なトコで終わってます!

メイドさんが主役(?)な番外編モドキです。


下衆が出てきます。

不快に思う方は退避してくださいませ。



 ーー左腕を横に地面と水平にピンと伸ばして、庇うように、けれど堂々と。あくまでも礼儀正しく立つ、執事服を着た彼の背の向こうに。

 彼の目が孕む、静かな威圧が込められた光に。

 そして己では敵わないと、はっきり判るほどの圧倒的な実力差に。

 一瞬にして現れた、絶対的強者の登場に。

弱者へと転落した事を悟り、ガタガタと無様に震える、三人の男たちがいた。


ーー嗚呼、可哀想に。


 実力差すらも判らなかった男たちを冷たく見ながら、私は自分の作戦(やくわり)が巧く嵌まったことに歓喜した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーside マイリーン



 あの時の先輩との会話が、その後の私の人生を、決定的に変えた。



『ーーマイリーン・デュカリシア、貴女に頼みがあります』


 そう声をかけてきたのは、屋敷内でも知らない人はいない程の有名人、ラディアス先輩。

 レクト様の学園行きが決まって、その準備に追われているはずのラディアス先輩は、私を捕まえると、淡く微笑んで告げた。


『頼み、ですか……?』

『えぇ。

 ーー貴女に、レクト様付きのメイドとして、学園に同行して貰いたいのです』


 頭の中が真っ白になる程の衝撃だった。

メイドではない(・・・・・・・)私が、メイドとしてレクト様の学園行きに同行する。

 学園行きまでの残り時間は、一ヶ月弱。

どう考えても、メイドとして仕込むには短すぎる期間。

無茶だと思う反面、高揚している自分がいることに、気がついていた。


『私、が?学園に同行を?』

『はい。学園(あそこ)に行く価値はあると思いますよ?』

 ーー貴女にとっても、きっと悪い話ではないでしょう?マイリーン・デュカリシア。


 言外に告げられた言葉に、先輩の手のひらの上で踊らされていた事を知った。

 先輩には、私がもう学園に行くと決めたことも、その理由も。きっと、全てお見通しなのだろう。

 そう思うと、とても気持ちが楽になって。


『承知しました、ラディアス先輩』


 零れるように、笑顔と共に言葉が出てきた。

 ありがとうございます、という言葉は受け取ってもらえなくて。

『ただ、利害関係が一致しただけですよ』と苦笑した先輩の言葉の意味を、後日私は知る事になる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ーーーー聞いてんのか、女ァ!」

「無視するとは、いい度胸じゃねぇか!ああ"ん?」

「ーー何か、私に御用でしょうか?」


 「学園」内、リーチェ寮裏口前の、人目のない場所にて。


 いつの間にか、ニタニタと卑らしい笑みを浮かべた男たちに壁際まで追い詰められていた私は、嗤いそうになるのを堪えて首をかしげた。

 空気を読まない発言をした私が気に障ったのか、一人の男の顔が怒りで赤く染まる。


「俺達はグロウシィツ男爵家の者だぞ!」


 怒鳴るように言われた言葉に、呆れた顔を隠すのに全力を注がなくてはならなくなった。


ーーグロウシィツ男爵家。

 ここ数十年で台頭してきた新興貴族で、初代当主は元は商人だった。

 その類い稀な商才で、男爵家としては破格の資産を持っているとされている。

 が、現当主夫妻は浪費が激しく、領地の治安は悪化の一途を辿る。悪化する民衆の生活に反し、収入は以前とそれほど変わっていない。

 現当主は黒い噂が絶えない人物で、好色家といわれている。


 ……簡単に挙げただけでこれだけの情報が出てくる家の者だと威張られて、呆れるなと言う方が無理がある。

 そもそもこの学園内で身分を持ち出しても、一切意味がないのだと気付かないのだろうか?

 仮にここが学園外だとして、リトヴィー家は公爵家。男爵家とは比べものにならないほどの差がある。


「はぁ。……それが何か?」


 怯える必要が皆無のために、平然としている私が生意気に見えたのだろう。


「んだとテメェ……!」

「やんのかゴルァ!」

「生意気なんだよ女が!」


 簡単に挑発に乗った男たちに、嗤いを零した。

もう、この勝負の決着は決まった。


「残念ですね、グロウシィツ家の方々。

 ーー貴方たちは、ここで終わりです」


「んだと!こののクソ女ァ……!」

「ハッ、上等だ!久々の上玉だ、犯し尽くしてやる!」

「泣いて謝るんだったら、許してやらんこともないぞ?俺達は慈悲深いからなぁ!」


 一斉に拳を握って振り上げる男たちを見ながら、込み上げてくる嗤いを押し殺す。


「くすくす。無駄ですよ?」

「あ"?」


 誰もいない(・・・・・)壁に向かって拳を降り下ろす男たち。

 男たちは、全く手応えがなかったことを不審に思うよりも速く、背後からかけられた声に振り向く。

 立っていたのは、無傷の私。

 いつの間に、とすら思わなかったのか、怒りで顔を真っ赤にした男たちは、今度こそ、と手を挙げて突っ込んできた。


 そして、黒が走って。

気づけば、ダァン!という音と共に男たちは背を地面に打ち付けていた。



 ーーそして話は冒頭へと戻る。



「大丈夫ですか、マイリーン」


 一瞬にして現れたラディアス先輩は、いつもと全く変わらない微笑みを私に向けた。


「ぇ、えぇ、平気です」


 自分でも判るほど、動揺しているのがバレバレの声。

ーー今のは、一体。

 見たことのない、流れるような体術だった。

 私の疑問を見抜いているだろう先輩は何も言わずに、ただ、いつものように微笑んだ。


「ならよかった。……さて」


「この方々、一体どうすればいいでしょうか。


 ーーねぇ、学園初等部の理事長様?」 

フラグとか伏線ががが……。

なんで勝手に動くかな、マイリーンとかラディアス、名前すら決まってないグロウシィツの三人衆(笑)。



誤字脱字など教えてくれるとありがたいです、今回は特に。

こんな場面(展開)見てみたい!とかリクエストあれば遠慮なく教えてください!

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