学園都市『ヒゥラ』にて
たいへん長らくお待たせ致しました!
……が、今回は説明会です。
久しぶり過ぎて、変なところがあるかもしれません!
そのときは教えてくれると有難いです!
「シグルト王国リトヴィー公爵家のレクト様ですね……。はい、確かに」
「こちらが寮のカードキーとなります。紛失された場合、再発行にはお時間をいただきます」
「注意事項は御手元のパンフレットにありますので、3日後の入学式までに目を通しておいてください」
「そ、それでは、生徒会の誘導に従って学園をお進みください」
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リトヴィー家を出発してから、ちょうど1週間後の今日。
ついに、私達は『学園』のある街ーー『ヒゥラ』に無事到着しました。
道中、それほど脅威ではありませんでしたが、次から次へと湧いてくる『暗殺者』には、流石に手を焼きました。
……主に、カーツとミュカが。
軽口は程々にして、ヒゥラについて説明しましょう。
ヒゥラの街は、人口およそ三万人(学園の学生を含む)。
この世界、『ユーティリティ』では、王都には及ばないものの、そこそこの大都市と言えるレベルの人口です。
ヒゥラは所謂『学園都市』という類いの街で、街の中心には学園が、その周囲に学生向けの店が……というように、文字通り『学園』を中心として存在し、栄えている街です。
さらに、大陸中から生徒が集まるため、国籍も身分も種族も多種多様です。
それ故の問題も数多くありますが……。
それはまた機会があれば、お話しさせていただくことに致しましょう。
さて。
『学園』についての説明を、この辺りでしておかなければいけませんね。
まずは……。
『学園』についてのおおまかな知識を。
滅多に呼ばれない学園の正式名称は、『ネレム総合学院』。
この大陸唯一の魔法教育専門学科があり、それ以外にも様々な学科が存在する、この世界でもトップクラスの超エリート校です。
当然、この学園を卒業したとなれば、相当な箔がつきますし、就職にも困らないでしょう。合格すれば身分証明変わりにもなりますし、受験だけする人も多いようです。
貴族平民問わず、広く生徒を集めている学園は、希望する生徒に対して前世でいう奨学金のような援助を行っていますし、成績優秀者に対しては授業料や各種施設の利用料金が免除されます。他にも様々な工夫が行われていて、金銭面で苦しくなって退学する、という生徒は殆どいません。
所属国は一応シグルト王国ですが、学園内の完全なる自治権を持っていて、国が学園に関わることもありません。実際、シグルト王国は学園に土地だけ譲渡しているようなものですし、他国から見ても学園は『どの国にも所属しない』教育機関です。
学園の理事長など、下手な小国の王以上の権力を持っていますし。
そのため学園では、学園外での如何なる権力も通用しませんし、学園内に学園外の権力が蔓延ることもありません。
ーーそう、それがたとえ王族であっても。
学園では、『学園に在籍する限り、すべての生徒の外の立場はないものとして扱われる』という方針があるようです。何事にも例外は存在しますが。
しかしこの言葉、受け取り方によって大きく意味が変わってきます。
……が、それもまた機会があれば又、お話致しましょう。
また、学園は初等部(二年間)と中等部(二年間)、高等部(四年間)からなり、更にその上に学術院(三年間)があります。
……前世の日本で言えば、初等部は小学校、中等部は中学校、高等部は高校、学術院は大学、といったところでしょうか。前世の同年代と比べると、こちらの世界の方が精神的にも学習スピード的にも上なようですが。
但し、学術院に上がる為には、高等部の最終学年までに特に優秀な成績や実績を残さなければなりません。毎年十数人しか通らない、相当な狭き門だと言えます。(一学年の人数は、おおよそ1000人です。)
たとえ学術院に入れたとしても、留年や落第等で上の学年にいけない人もいますし、さらに年齢上限(最終学年時に25歳)に引っ掛かり退学を余儀なくされる方もいるので、結果的に人数はどんどん減っていきます。
それでも学術院を卒業した暁には、どの国も競って好待遇で迎え入れようとしますし、たとえ平民であったとしても、下手な貴族よりも大きな発言力や権力を持つようになります。
10歳で入学し初等部の第一学年になり、18歳で高等部の最終学年になり卒業します。学術院へ上がる場合、最短21歳、最長25歳で卒業します。
但し、飛び級をする生徒も極僅かながらも存在するので、一概にこうとは言えませんが。
そして、世界各地から生徒が集まるため、学園内には寮が存在し、ほぼ全ての生徒が寮で生活することになります。
寮は貴族と平民、さらに男女別で分けられますが、それ以外では国や種族で分けられることはありません。
尚、貴族寮と平民寮の違いは、従者や護衛の部屋が有るか無いかと、部屋の大きさや数、一人部屋か共同部屋か、食事場所についてくらいです。詳しくは、レクト様のお部屋に到着してから説明致しましょう。
また、外部受験という制度もありますが……。
まぁ、受かる人はそれほど居ないとだけ言っておきましょう。
ただ、例外もありまして……。
それには、この学園にある魔法教育専門学科が関係しています。そもそも魔法教育専門学科とは、魔力を持つ全ての人が入らなければならない学科であり、学園の生徒のおよそ八割が入っています。
が、稀に10歳以上になって唐突に魔力を発現させる人が存在するので、その人物に対しては編入試験が行われます。
10歳以上になって魔力を発現させる人物は、一般的に一属性特化型の魔力を持っていて、非常に強力なため、学園に入り魔力の扱い方を知ってもらわなければ危険です。よって、特待生という形で学園に編入することになります。
但し、学園に入るための試験を突破できなかったり、成績が規準ラインを下回ったり等で退学になる場合は、魔力そのものを一生封じることになります。
ああ、いけませんね。話しすぎました。馬車が学園に着くまでに、荷物を纏めておかなければいけません。
学園については簡単に言ってもこれぐらいありますし、これからはその都度説明することにしますね。
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そして、話は冒頭に戻ります。
私達は学園の正門横にある検問室にいます。
と言っても、豪華な作りの部屋で、簡単な質問と本人確認その他細々とした手続きをしているだけですが。
現在私とミュカがレクト様の側に付いて検問室に、ネロとカーツが馬車を駐車スペースに、マイリーンが荷物を寮に運ぶという手筈になっています。
検問室の中には私達の他に、門番兼警備員であろう学園専属の騎士服を見に纏い、剣を腰に下げた男が二人と、恐らく手伝い兼見学の、学園生徒用の騎士服を着た赤髪の少年が一人。
どもってしまい男達に鋭い視線をぶつけられた赤髪の少年は、さっと顔を白くさせつつ、私達が入ってきた扉とは逆方向の扉を開けて、部屋から出るように促しました。
恐らく、その先に生徒会の誘導役がいるのでしょう。
一応学園内の道は全て頭に入れてありますが、彼らに任せた方が良いかもしれませんね。
え?何故外部には機密のはずの学園内の道を全て知っているか、ですか?
私はレクト様の執事ですから。
……答えになっていない?
当たり前です、答える気はありませんから。
つまり、企業……いえ、執事秘密というわけです。
次回からはちゃんとした学園編になる……予定。
感想やコメント、お待ちしてます!
蒼咲猫は『チーズケーキ』メンタルらしいので、甘口辛口コメントどんとこい!でも無視は辛いな……って人(猫?)です(笑)




