告白
「最初はね ちょっと懲らしめるだけのつもりだったの
その人はセクハラが酷くてね 何度も体を触られたわ入浴の介助のときとかね
毎日思い悩んだわ あるとき小説かなんかでヒ素を使ったトリックが有ったの
野良猫やゴキブリに使うとか言って 彼からヒ素を手に入れる事が出来て
使ってみた訳 即入院 そして亡くなったわ 」
「でも事件にならなかった」
「そう そしてそれから何度か苦手な人 問題の有る人にに対して使ったの
もちろん 亡くなるまでは行かなかったけど 全員退去させる事が出来たわ」
「熊野サンも」
「熊野サンも問題の有る人だったけど悪い人ではなかったわ。
何か習慣になってて入れてしまった訳」
唖然としながら僕は聞いていた
「呆気なかったな でも今回は事件になってしまって 覚悟はしていたわ」
「院長は何故?」
「今回の事が明るみになって院長から問いただされたわ。
前から薄々おかしいなとは思っていたみたい」
「でも私を庇うために死んでしまった 自殺するなんてね」
「院長はそれだけ良子サンの事を大切に思っていたんでしょう」
「叔母はね 私をこの業界に入れた事を悔やんでいたと言ってくれたわ
私はやっぱり人付き合いが苦手なのよ 無理して変わろうとしたけど
変われなかった」
介護施設では彼女を慕う高齢者の方が多かった
彼女の明るさに惹かれるのだ だが
良子サンのあの明るさは無理をしていたものだったのかと思うと切なかった
「無理し続けた結果がこれ」
寂しく良子サンは笑った。
「自首していただけますよね」
僕は念を押すように言った。
「はーアメリカ行きたかったな ロスも観光したかった」
良子サンは少しすねたような態度を見せた
それからくるりと僕の方を向き
「わかった自首するわ 着替えてくるから 待っててね」
僕は頷いて 外に出た
良子サンの苦しそうなうめき声が響くのはそれから少し後だった。