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ふたり  作者: 龍のすけ
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出会い

課外活動? 僕は大学の事務で職員に聞き返した





一浪の末は行った大学は不本意な大学で 大学には熱心に行かない不真面目大学生になっていた

大学の単位不足を補う一巻として僕は職場体験をするはめになった。


「このままじゃ留年よ』大学の担当職員は言った。

「そうなったらやめます」半ば気怠そうな投げやりな声で僕は言う。


「やめてどうするの?働く訳』

「フリーターかな ははは 転落人生極まれリですね」


何バカな事言ってるの 呆れたように職員は言った


「はい職場体験 どれにする 」 職員の女性はいくつかの候補を持ってきてくれた。


どれにすべきだろうかと考慮した。

僕は介護施設を選ぶ事とした。 私もその日一緒に行くから 40代くらいの女性職員は言った


よろしくお願いします



大学2年の夏 僕は大学の事務に呼ばれた

思いがけない提案を受ける事になった


こうして大学の課外活動で僕は職場体験をする事となった








介護施設は扇町市内の小高い山地に立っていた。 見晴らしがいいが

たどり着くのが大変だ 職員は車で来ていた


大変ねえ 歩くの  


職場体験は3週間だったが これから毎日行かないと行けない


夏休みを利用して職場体験は存在していた。






「見晴らしが良いですねえ」


僕は思わず行った 女性職員も満足そうにうなずく


介護施設では 院長が出迎えてくれた 。


「遠藤と言います。 どうぞよろしく」


「文学部らしいわね なぜここを」 遠藤サンは聞いてきた。

特に理由はなかったが僕はもっともらしい言い訳をつけた。


大学受験を失敗し人生投げやりになっていたのを悟られないように。


遠藤院長は笑いながら頷いてくれた。



「後で施設をご案内します」 ついてくるように言った。


介護視察はこじんまりとした作りだった。 


「ここではね。自分達の力で生活出来ない高齢者の方の介護をする施設なの


30人程の入居者がいらっしゃる。」 遠藤院長は言った。


「明日から来れる? よろしくね」 






次の日から僕は小高い高台にある高齢者施設に通う事となった。


やる事は掃除洗濯 食事補佐と言った雑務だ。  






職長を紹介された まだ若い 年は23歳だそうだ


『遠藤良子です」 遠藤 怪訝な顔をした自分に気随いたのか 良子サンは言った


「院長は叔母なの 」 へーそれで  こちらもよろしくお願いします と僕は言った。



良子サンは全てを束ねる職員だ。パートから男性職員に対しても積極的に指示をしていく。

そのてきぱきとした態度に感動を覚えながら ぐうたら大学生な自分を恥じた。


自分には何が有るんだろう。


「私はね。高校を卒業後看護学校にいって その後こちらに来たの。叔母が院長をしていて安心だし

 あなたは大学で何を学んでいらっしゃるの?」


自分はうまく答えられなかった 大学も所詮滑り止めである。

大学で何を学び 将来に生かすか それすら全く。


「私はね 入居者の笑顔が全てなの この施設は私の全て」良子サンは笑顔で言った。


入居者も痴呆が進んでいる人が多いが 良子サンの手を握ると笑顔だ。

「ほらほら 笑顔が足りない 笑顔が」 

良子サンは僕に声をかけていく。 入居者に笑顔 笑顔。 気ずくと入居者はみんな笑顔だ

大人しい 入居者が多い施設で 良子サンはひまわりのような笑顔を咲かせていた。









「そりゃ 若いのに立派な子だなあ」 叔父はそういった。


叔父は刑事をしている。たびたびこうして会っている


叔父と久しぶりに会い デパートの食堂で食事をした。 研修中の介護施設の話もした。良子サンの事も「どうだ 卒業後の進路は決まったか?」 いやまだです と答えると「介護の分野に行きたいのか」と叔父は聞いてきた そういうわけでもない自分は何が有るのだろう それがわからないのだ


これからどうすればいいのだろう 「叔父さんは警官という職業はどうなんですか」僕は聞いた 「なに 警官になりたいのか?」 うれしそうに叔父ははなす


「そういえば昔から探偵小説が好きだったもんな 推理小説 いやミステリーか」

どれも同じである 「だがな警官は違うぞ 地道な捜査が実を結ぶ 大体あんなテレビや小説に有るような殺人事件が連続で起きてみろ 日本中大パニックだ」 


叔父はいくつかの事件を 面白そうに話してくれた。

別れ際叔父は言った

「また 何か有ったら話そうな いまがお前の未来に取って大事な時期だから」 





研修期間も終わろうとしていた 相変わらず介護施設は緩やかに時は流れ

入居者の老人は良子さんの仕合せそうな笑顔に満たされていた

 

「どうなってるんだこれは」突然響き渡った怒号に僕は思わず振り返った

一人の老人が怒鳴り散らしている 「どうしました 熊野サン」

良子サンが 近くに駆け寄った。

「どうもこうもない 私をまた邪険にあつかっただろう」

熊野と言われる老人は叫び続けた。 良子サンは必死になだめると

車いすを押し部屋まで連れて行った。


「また熊野サン 機嫌が悪そうだなあ」近くに居た同僚が続けた。

「たまにああなるんだよ。全くお陰でこの施設の雰囲気が悪くなる」そうなんですか


「良子サンに任せるしかないね。」 同僚はやれやれというようにかたをすぼめた

しばらく怒号が続いたがやがて静かになった 

「眠ったみたいです」 良子サンは僕のもとに来るとそう言った。



帰りは良子サンと一緒だった。

「もうちょっと入居者に心開いたほうがいいなあ」 と良子サン

「そうですか。自分ちょっと人間関係が苦手で」

「なにそれ いい機会じゃない 治していこうよ 勿体なくない 若いんだから」

良子サンはそういった 改めて見ると正直かわいい 芸能人ににもなれそうな容姿だ それなのにこんな所で老人相手に微笑んで仕事をしている。

こんな綺麗な人が ちょっとした巡り合わせか。


「私もね そんなに人間関係が得意ってわけじゃないんだ」

僕は驚いた 良子サンは入居者だけでなく職員全員からも好かれている

「私はねえ 高校のときに両親を亡くして 叔母が学費出してくれたの

叔母のためにも恩返しをしないとそう思ってこの仕事を始めたんだ」

「でもこの仕事初めて自分が変われたと思ってる。 うん変われたんだ

だから 変われるよ きっと 頑張ってみて」 そう微笑んだ





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