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暖かい場所
何かにとりつかれていたのかもしれない。笹井ナコトも室井はじめも、保科真里もみんな…。
あのクラスで唯一生き残った志摩レイカはそう語った。あの姉湖学園の裏の森は、九年前から呪われていた。九年前、クラスにカメムシ扱いされて自殺した、紅井シズカの呪いだと、志摩レイカは俺にそう訴えた。
自分の身を守ろうとニオイを出すカメムシは、そのニオイ故に駆除される。自分で自分の首をしめている。
人間もそうだ。自己防衛本能。自分の身を守ろうと、面倒ごとを他人に押し付け逃げようとする。
しかしその行為は、人から嫌われる要因になりかねない。恨みを買うことになる。
雪が降ってきた。もう十一月下旬だ。
カメムシは常に、暖かい場所を求めてさ迷っている。人間と同じように…。
やがて、カメムシは現れなくなった。




