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森へ
階段で足を滑らせた千里。床に激突するかと思いきや、そこへまひる先生が走ってきて千里をキャッチした。
「危なかった~…ごめんなさい!わたし、上の階から灯油のポリタンク運んでて、中の灯油が階段に垂れたみたいなの!ごめんなさい!怪我はない!?」
「は、はい…」
千里が無事なのを見ると、私はまた走り出した。
「あ、あのまひる先生、わたし大丈夫ですから」
そう言って千里もまた、私を追ってきた。
走る方向なんてどこでもよかった。校門をでて、いつのまにか学園裏の森に来ていた。
森の中を走っている間に、どこを走っているのかわからなくなった。しばらく私を呼ぶ千里の声が聞こえていたが、それがやがて聞こえなくなった。振り替えると誰もいない。
「千里…?」
私は引き返し始めた。そして、いつのまにか千里を夢中で探していた。
「!!ちさ…」
十五分ほど探すと、千里は見つかった。急な傾斜で足を滑らせたんだろう。傾斜の下にある岩に頭をぶつけて血を流している。せっかく階段で床に落ちずにすんだのに…。
私は、怖くなってその場を立ち去ってしまった。




