相談相手
履いてから気がついた。履いたときに妙な感触がして、靴を脱いだら靴下が潰れたカメムシまみれ。異臭がただよった。
一、二匹なら偶然の可能性もある。でも靴に入っていたのは十匹を越える。明らかに人為的なものだった。それが何日も続いた。
「ひどい…いったい誰が?」
犯人は誰か?私に恨みを買う人物?私のことが気に入らない奴?
「どうしたの?」
ある日、玄関で靴の中のカメムシを取り除いていると、まひる先生が通りかかった。
担任の久佐城は、厳格な性格で、生徒には嫌われがちだ。私も苦手で、心を開けない。でも養護教諭の桐谷まひる先生は、この学園で一番年齢が近いこともあり、話しやすい。まひる先生には相談できる。そう思った。
私は保健室でまひる先生に相談した。
「わたしもこの学園の卒業生だけど、わたしが生徒だったときもあったわ。こういうイタズラが。いじめられていたのはわたしの親友だったんだけど、何もできなかった。わたしがいじめに気づいたときには、自殺しちゃったの…」
「そうだったんですか…」
話には聞いていた。この学園で九年前、生徒が相次いで亡くなったことを。
「まかせて。わたしが当分の間、可能な限り玄関を見張っててあげるから」
それからは、靴の中にカメムシを入れられることはなくなった。
夏が訪れて、カメムシがいなくなったこともあるけど、嫌がらせはおさまった。
かに見えた。




