枯れかけた花
事件が起きて二週間がたった。私はあの日、朝一で保健室にいた。あの男が保健室に入ってきていたら、私もまひる先生も生きていなかったかもしれない。
空席ばかりの教室。机の上に乗った花瓶に活けられた花は、少し枯れ始めていた。
三年で生き残ったのは宍戸甘那、結城真奈美、沢口大我、志摩レイカ、私のたった六人。
「マサトおまえ、よかったな。いつもの体調不良のおかげで殺されずにすんだんだからな。」
「やめなさいよ!そんな不謹慎なこと言うの!」
「けっ!」
沢口がマサトを冷やかしている。あの日、マサトは朝から体調が悪くて、家のトイレから出られなくなり、学園に行かなかった。それ以来、昨日までずっと休んでいた。ようやく体調が整って学園に来たのに、また悪くなりそうだ。
「みんなおはよう」
教室に桐谷まひる先生が入ってきた。久佐城はまだ入院中で、臨時担任だった笹井ナコトも事件を起こして指名手配。代わりの先生が見つからず、ショートホームルームはまひる先生が仕切っている。
あっというまに放課後になった。帰ろうと教室を出ると、甘那が私に声をかけてきた。
「ねぇ彩香、話があるんだけど、いい?」




