絶体絶命
二年前、笹井にいじめ捜査を依頼したのは前田彩香の親…?だとしたら、彩香は誰にいじめられていたんだろうか?たしかに、彩香はクラスで成績は一番優秀で、隙を見つけにくい。いじめてやりたいと思う奴がいてもおかしくはない。おそらく僕が知らないところで、陰湿ないじめを受けていたんだろう。
「千里は前田彩香と仲がよかった。よく彩香は家に遊びに来てたからな。クラスでいじめを受けていた前田にとって、千里は唯一の味方だったろうさ。しかし、千里は死んだ。ナコトに渡された盗聴器を机に入れた数日後にな。俺は、千里にもいじめの矛先が向いて、それがエスカレートして殺されたと睨んでいる」
「いじめてた犯人はわかったんですか?」
「結局わからなかったさ。今、下の階でクラスの連中にナイフを突きだして尋問してきたが、誰も『自分は知らない』だの『関係ない』だの、今のお前と同じ回答をしやがった。でも、もういいんだ。誰が犯人だろうとな…」
「え…?」
「千里を死に追いやった罪は、連帯責任でクラス全員に償ってもらうと決めたんだからな。だから下の廊下を歩いていたこのクラスの生徒は、尋問したあと殺してきた。何人かどこかに逃げ隠れたようだが…職員室の電話は全て壊した。警察は当分来ないだろう。それまでに見つける。…お前を始末した後でな」
もうだめだ。これ以上は抵抗できない。殺されてしまう。不審者が学園でナイフを振り回し、生徒を何人も刺しているというのに、安室さんや先生は何をやっているんだろうか。笹井はどこに…?
「さよならだ…」
教室の隅にある掃除用具入れからモップの棒を取り出したい。しかし彼は僕にそんな余裕を与えてくれず、彼が振りかざしたナイフは僕へと……!




