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卑怯

「なんで、言ってくれなかったんですか?」


帰りの車のなかで、僕は笹井に尋ねた。


「千里と親戚だったことも、もともと先生だったことも…千里の写真のことも、実はずいぶん前から知ってたんでしょう?なんで今まで…」


「少なくとも、ワタシのプライバシーはお前に教える必要がないだろう。お前にだって隠し事のひとつやふたつあるだろう?」


「まあ、そうですけど…」


「千里がお前に好意を持っていたことだって、千里が死んでしまった以上、お前に教えてもどうしようもない。しかし、教えてやったほうがいいかもしれない…と、今朝思った」


「今朝って…」


「お前さっき、はじめを見てやたらと怯えていたな。なにかやましいことでもあるんじゃないか?」


「い、いえ、別に…」


「とぼけるなよ。明らかにお前は何かを隠している。言えよ。お前が言わない限り、車を止めないからな」


卑怯な手口だ。言うまで笹井は僕を返さないつもりだ。

でも、よくよく考えると、千里の兄は足を滑らせた事故だし、生きてたわけだし、やましいことは別にない。第一、あのとき僕は巻き込まれただけだ。真奈美は僕を靴を隠した犯人だと思い込み、強引に森へ連れていったわけだし、巻き込まれただけだ。そこに室井はじめがいたのは、室井が『寄生蜂』の手紙を読んだからであって、千里の兄も僕のことは怒ってないわけだし。別に喋ってもいいだろう。


「実は…」


僕は笹井に、正直に話した。真奈美に口止めされていた事実を、しゃべってしまった。


あの朝、真奈美に引っ張られて森に行ったことも、そこに室井はじめが居たことも、真奈美が彼に殺されそうになったことも。そして、彼が転落して石に頭を打ち、血を流して倒れたことも、それを放置したことも話した。真奈美に口止めされていたということも話した。


僕は卑怯な人間だ。こんな僕の内面を、千里はどう思うだろうか。



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