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向かう先
「あの、なんで僕を付き合わせたんです?」
「なんだ?煮干しラーメン食べたい顔してたから連れてきたんだがな」
「どんな顔ですかそれ…」
僕は今、ラーメン屋『くせんこ』を出て、笹井の車の助手席に乗っている。しかし笹井がいま向かおうとしているのは、僕の家ではないようだ。
「あの、これからどこへ行こうとしてるんですか?」
「室井千里の家だ」
笹井がそう言うと、僕は室井千里の兄のことを思い出した。あれ以来、彼の死体は発見されていない。新次郎や亜留絵が死んでバタバタしていて、彼のことはどこかへ消えていた。
「な、なんで…?」
「線香あげに行くだけだ」
「いや、だからなんで僕も…?」
「お前、クラスメイトだろう?理由としては充分じゃないのか?」
「それなら僕以外にも誘うべき人がいるじゃないですか」
「あ、ほら、お前当時後ろの席だったろう?」
「いや、そうだけどだからって…」
「いいからいくぞ」
絶対なにかある。笹井が千里の家に行くのは『探偵』としてなのか『担任』としてなのか?わからないが、なにかある。




