嫌われ者カメムシ
新次郎が森で遺体となって発見される前日、笹井は教室に残された新次郎の鞄の中から、小さく折り畳まれた紙を見つけた。遺書だった。その遺書によれば二年前、千里を死に追いやったのも新次郎らしい。
以前千里の兄が持っていた、『寄生蜂』の置き手紙には千里を死に追いやったのは真奈美だと書いてあったはずだ。これはどういうことだろうか。
新次郎の遺体が見つかった日、教室でクラスメイトのほとんどが放心状態だった。特に、付き合っていた亜留絵は一番ショックを受けているだろう。マサトは今日も学校を休んでいる。
「てめえのせいじゃねえのか?亜留絵」
「え?」
突然、沢口大我が亜留絵を責め始めた。
「てめえが新次郎にあんなこと言ったから、新次郎は死ぬまで追い詰められたんじゃねえのか?」
「ちょっと沢口!」
学級委員の彩香が間に止めに入る。
「そんな言い方しなくてもいいでしょ!新次郎が死んで一番ショックを受けているのは亜留絵なんだから!」
「けっ!そうだろうよ。自分が殺したも同然だからなあ」
すると彩香は沢口の頬を平手で一発パァンと叩いた。
「なにしやがる!」
沢口は彩香を突き飛ばした。
「ちょっと!何してんのよ!女に暴力ふるうなんて最低!」
今度は真奈美が彩香をかばう。
「けっ!おうおう、お前らはホント、仲良しだよな。で、俺は悪者ってわけかい?ああそうだよ!俺はどうせ嫌われものだよ!どいつもこいつも、まるでカメムシでも見てるような目ェしやがって!」
沢口は自分の机をガァンと蹴り倒し、教室から出ていった。
「おい沢口、どこいくんだ!帰りのショートホームルームまだだぞ!」
笹井が教室に現れた。
「知るかよ、んなもん!帰る」
沢口はかまわず学園をあとにした。
そして翌朝、またしても学園裏の森でひとり、犠牲者が出た。




