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軽蔑

翌朝。僕は昨日の黒い女性を警戒しながら学校へ向かった。所々で近所のおじさんやおばさんに挨拶されるたびにドキッとする。びくびくしながら歩いているうちに、学園の校門まで辿り着いた。そして校門を抜けて校庭に入った。そのときだ。


ボン!


「ひぎゃあ!!」


誰かに背中を平手で叩かれ、思わず怯えた声を出してしまった。振り向くと、用務員の安室さんが箒を持 ちながら立っていた。満面の笑みで。


「おはよう!亀梨ジョウくん!」


「あ、お、おはようございます」


「どうした?朝から元気ないな」


「い、いえ…」


安室さんの笑った顔が怖く見えた。自分にやましい気持ちがあるからだろう。安室さんに対して。


昨日、安室さんの背中についたカメムシを箒で潰してしまった。安室さんはそれに気づいたとき、僕のことをどう思っただろう…?昨日、潰してしまったときに謝っておけばよかったかもしれない。一晩、知らんふりしていた僕を心では軽蔑しているのかもしれない。

人間、表面ではニコやかでも内面はどう思っているかわからない。今の背中への一撃は、昨日のお返しかもしれない。


…今でも遅くない。謝ろう。


「あ、あの…」




「おはようございます」


僕が謝ろうとした、そのときだ。養護教諭のまひる先生が安室さんと僕に挨拶してきた。


「おはようございます」

「お…おはようございます」


まひる先生がいる前で謝るのは避けたい。まひる先生にまで軽蔑されるかもしれない。


「ん?ジョウくん今、なんか言いかけたか?」


「い、いえ、なんでもないです」


僕は逃げるように、二人の前から立ち去った。次に誰もいないときに謝ろうとと、そう思った。




いつもそうだ。そのとき謝ればすぐ済むことを、くだらないことにこだわって、こうやって僕はいつも引きずるんだ。


こんな…こんな些細なことで…。

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