空席
朝のショートホームルームの時間になっても、笹井が来ない。新次郎の姿も、志摩レイカの姿もない。マサトもいないが、マサトはおそらくまた些細な理由での体調不良だろう。真奈美は救急車とパトカーを見て以来、落ち着かない様子だ。それは僕も同じである。新次郎と付き合ってる辻 亜留絵も、新次郎の空席をチラチラみていて落ち着かない。
ショートホームルームの時間が終わり、一時限目も終わった頃に、志摩レイカが教室に入ってきた。いつも志摩の心霊話には耳を貸さないクラスの面々だが、さすがにこの時ばかりは志摩を質問攻めにした。しかし、志摩は詳しく話そうとしない。
「別に。人が死んでいるのを見つけたから救急車呼んだだけよ。それだけのこと。それに、どうせ私の話なんか、誰も信用しないでしょ?」
志摩はそれだけ話すと、あとは何も口にしなかった。苛立っている。よっぽど警察の事情聴取で疲れているのだろう。
のちに、クラスの情報屋、倉科賢作がスマホのニュースを検索し、死んでいたのが遠山新次郎の父親だと知った。それを知って、真奈美は少し落ち着いた様子だったが、亜留絵は心配そうな顔をしていた。
結局、笹井は放課後まで姿を見せなかった。




