傾斜
亀梨静と結城真奈美が校舎に入った数分後、笹井ナコトも学園に着いた。
「おはようございます。笹井先生」
笹井に、後ろから養護教諭の桐谷まひるが声をかけた。
「おはようございます」
「さっき救急車とパトカーの音が近くで聞こえましたけど、笹井先生も聞かれました?」
「ええ。ワタシも聞きました。裏の森でなにか事件があったようです」
「まさかまた…」
桐谷は不安な表情を浮かべる。
二人が話していると、森の方から救急車が戻っていった。それを見て笹井は確信を得たように話す。
「救急車だけが戻った…ということは、誰かが森で死んでいた可能性がありますね」
「やはりまた、あの傾斜でしょうか…二年前の千里さんのように…」
「どうやら、そのようですよ?桐谷先生、笹井先生」
「あ、安室さん?」
現場に行ってきたのか、安室が校門の外から戻ってきた。
「私もさっきの救急車とパトカーが気になりましてね。枯葉集めを中断して森に行ってきました。行ったら現場に警察のほかに野次馬が数人いましてね。その方々に事情を聞いてきました」
「何があったんですか?」
「朝に森を歩いていた人が、傾斜の下に人が倒れているのを見つけて救急車を呼んだそうです。そして、その救急車を呼んだ人は、うちの生徒の志摩レイカさんだそうで、彼女も今、現場にいましたよ」
「え?」
「うちのクラスの志摩が?」




