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黒い女性

名前も性別も間違えられるのはいつものことだ。逆に最初から亀梨静を『カメナシジョウ』と読める方が珍しい。『シズカ』と読むのが自然だし、名前からして女の子だと思うだろう。例外もあるだろうが…。


「きみ、亀梨ジョウくんだよね」


用務員の安室さんと話したあと、校門を出たときだ。声をかけられたのは。僕を待ち伏せでもしていたのだろうか。ひとりの若い女性が僕に声をかけてきた。しかも、僕の名前を呼び間違えずに。


見た目、二十代後半だろうか。顔はタラコ唇に黒縁眼鏡。黒髪でポニーテール。芸人にいそうなタイプの顔だ。黒ネクタイに黒スーツで、葬式にでも行ってきたかのような服装だ。


「はい。そうですけど…」


僕が答えると、黒い女性は胸ポケットから名刺を取りだし、僕に差し出した。


笹井探偵事務所 所長 笹井ナコト


名刺にはそう書かれていた。探偵が僕に何の用だろうか。

「あの、僕に何か…?」


すると笹井ナコトと名乗る女性は、あたりをキョロキョロと見渡した。


「ちょっと…場所を変えて話をしたいんだけど、いいかな?近くに車を停めてあるから…」


怪しい…。学校では、知らない大人にはついて行くなと教えられている。それに、いま渡された名刺も本物かどうかもわからない。変質者かもしれない。名刺に書かれた『笹井ナコト』という名前も、いかにも偽名っぽい。


逃げよう。


「あ!ちょっと!」


逃げた。彼女が僕から目を離したほんの一瞬のスキをついて、無我夢中で走った。むかしから、面倒なことからは、こうやって逃げてきた。何事にも深く関わらない。そうすることによって、平穏な毎日を送れていた。いままで。


「ハア…ハア…」


息切れした。久々に全力で走ったため、全身が筋肉痛だ。はやくも。


後ろを振り返ったが、女が追ってくる様子はない。なんとか逃げ切ったようだ。

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