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早朝の口論

翌朝。僕はいつも以上に早く、六時半前に登校した。学園の門がまだ開かれていなかったので、開くまで少し周辺をうろうろしていた。するとそこに、安室さんが現れた。


「あれ?今日はまた随分と早いねジョウ君。私より早く来てしまうなんてな。私がいないと校門開かないぞ」


「ええまあ…あ、長靴ありがとうございました」


僕は家にあった代わりの靴を履いてきた。安室さんから借りた長靴は、ビニール袋にいれて手に持ってきた。


「ああ。お役に立てたようで何よりだ」


安室さんはポケットから鍵を取り出して、校門の鍵を開けた。


「安室さんはいつも一番乗りなんですか?」


僕がそう尋ねると、安室さんはニコリと笑って答えた。


「そりゃそうだよ。私が鍵を開ける役目なんだからな。学校には昔はあったが今は当直という制度が無いからね。だから寝坊できないし、毎日早起きしなけゃいけないからまだ眠いよ。ハハハ…」


「そうですよね」


「それがどうかしたのかい?ジョウ君」


「いえ、別に…」


安室さんの今の笑顔が、僕の些細な一言で怒りの表情に変わることを考えると言い出せなかった。結城真奈美の机の中に紅いカメムシを入れたのは、実は安室さんじゃないのかと、尋ねることが出来なかった。気が強い真奈美や学級委員の彩香、もしくはクラスで一番反抗的な沢口だったら、僕と同じ立場になったら何の躊躇いもなく問い詰めるだろう。引っ込み思案な僕にはとてもじゃないが、できない。


玄関に着き下駄箱を開けると、昨日カメムシを入れられた僕の靴は洗われた状態で入っていた。洗剤の香りがする。久佐城先生が洗ってくれたのだろうか。


「おはようございます安室さん」


背後から女の声がした。


「おや?君も早いな。おはよう」


真奈美だ。おそらく僕がイタズラできないように、早く来たのだろう。


「亀梨、アンタいつもこんな、早く来てるの?まだ六時半じゃん。まさかまた私の机にイタズラするためにこんな時間に?」


すると安室さんが僕を庇うように反論した。


「ジョウ君を疑うのも大概にしなよ君!」


「安室さん、随分と亀梨の肩を持つんですね。まさかアンタ、亀梨と共犯じゃないでしょうね?実は私の机に昨日イタズラしたのも安室さんだったりして?」


真奈美のいきなりの尋問に、安室さんは深く溜め息をした。


「やれやれ。私まで犯人扱いか。君はどこまで被害妄想が激しいんだ?」


「私は昨日、机にカメムシを入れられて靴を盗まれた上に、亀梨の靴にイタズラした犯人扱いされたのよクサギに。内履きで帰る羽目になって、頭に来てるの!」


「だからと言って、誰もかれも犯人扱いするのはどうかな?私が君の机にイタズラしたり、靴を盗んだというのなら、証拠を見せなよ。昨日も言ったが、私は証拠も無いのに決めつける人間が許せないんだ。」


朝から真奈美と安室さんがやり合う光景を目の当たりにするとは、思いもしなかった。確かに犯行可能なのは安室さんも僕も同じ。しかし証拠が無い。


「まあ、朝から喧嘩はやめよう。さ、二人共教室に行きなよ」


僕と真奈美は安室さんに言われるがまま、教室まで歩を進めた。どうせ今、真奈美は怒っている。ついでだから、聞いてみた。


「まさか昨日の机のカメムシ、自作自演じゃないよね?」


「はあ?」

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