冷たい衝撃
「正直に言おう。私は亀梨ジョウ君、君が盗聴器に気づいて持ち去ったと考えている。後ろの席にいた君なら盗聴器に気づく可能性もあるし、話を聞くと君は誰よりも早く学校に登校するそうじゃないか」
笹井ナコトのいきなりの発言をきいた途端、僕の全身に冷たいものが通った。
「…あなたまで、僕を疑うんですね。僕は…僕は何もしていないのに…」
「あなたまで…?どういうことだ」
僕は、今朝からさっきまでの出来事を笹井に話した。
「なるほど。それでその結城真奈美の机の中に細工できたのは、君しかいないということになるわけか」
「しかし、本当に君がやっていないというのなら、二つの可能性が出てくる」
「二つの可能性?」
「そうだ。ひとつは、紅いカメムシを机の中に入れたのは他ならぬ彼女自身だということ」
「自作自演ってことですか?何のために?」
「それはわからない。あくまで可能性の話だ。君の話を聞いた範囲での、私の推測。そしてもうひとつの可能性は…」
笹井が口にした『もうひとつの可能性』を聞くと、再び僕の体に冷たい衝撃がはしった。
「そんな…」
「もう一度言う。あくまで可能性だ。証拠も無いし理由もわからない。だが君が犯人ではないとすると、可能性はその二つだ。確かめたいか?」
「確かめる…?」
「今の君には、人に疑われているということがどんな気分かわかるはずだ。人を疑うということは、信頼を壊すことにつながる。君がもしこれから真実を確めたいのなら、人を疑わなければいけない。君が嫌われものになるかもしれない。その覚悟があるなら、確かめるといい」
「僕は…」
「私は今の、君が話した事件に興味が湧いた。『寄生蜂』の正体にな。君に覚悟があるのなら、協力しよう。それとも君はこのまま犯人扱いされたままでいるか?」
「……!」
「まあいい。車で家に送ろう」




