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深い森

「ショに連行って…僕をいったいどこに連れていくつもりですか?僕は別に何もしてないのに…」


笹井ナコトは、車を走らせた。車の助手席に乗せられた僕は、笹井に恐る恐る尋ねた。


「逆だ。むしろ、何もしてないからこそ、君に用がある。加害者でも被害者でもない第三者、いわば傍観者ともいうべき君にね」


「どういう意味ですか?」


「単刀直入に言おう。私はいま、イジメについて調査している」


その一言に僕は驚いた。第三者というより、僕は今のところクラスで、加害者とよばれる立ち位置だ。しかし僕がこの笹井という女に会ったのは、結城真奈美の机から紅いカメムシが発見される前の放課後だ。ということは、その件で僕に会いに来たわけではないということだろうか。笹井の車は、姉湖学園の裏に広がる樹海の中の細い道を走っている。僕の普段の帰り道とは逆方向の道にどんどん走っている。


「二年前、君のクラスでひとりの女子生徒が亡くなっているね。名前は室井 千里。そのことで君に聞きたいことがある」


今日ほど背筋が凍る日はないだろう。逃げ出したい気分だった。なぜ二年前の事を今になって尋ねてくるのだろう。それも僕に尋ねる理由が『何もしていない』から?訳がわからないまま、車は目的地に着いたのか、停まった。


「ここが私の活動の拠点だ」


森の中を車で走って三十分くらいたっただろうか。一軒のペンションのような場所に辿り着いた。入り口の看板には『ササイ探偵事務所』と書かれている。


「こんなところに建物があったなんて…」


「どうだ?小鳥のせせらぎが聞こえてくるだろう。癒されないか?ウチは主に職場や学校でのいじめ捜査に力を入れているもんでね。心に傷を負った依頼主がいっぱいだ。そういう人達が少しでも癒されるよう、事務所を森の中に移築したんだ。森林セラピー効果を狙ってね。以前は学園の近くにあったんだが…」


笹井に連れられて建物の中に入った。一階は食堂。事務所は階段をあがって二階にあった。


「一階に事務所を構えると、危ないからな。資料を盗まれるのを防ぐために、二階にしたんだ。さ、座って」


僕は事務所の黒いソファーに腰かけた。すると笹井は僕の側に座った。普通なら、テーブルを挟んで向こう側に座るものなのに。


「面と向かって話すのが苦手な子が多いから、一対一で話す時はいつも横に座るんだ。」


近い。横に座る理由はまあ、納得できなくもないが、近い。少し離れてくれてもいいのに…。仮にも二十代くらいの若い女の人にこうも側に座られると緊張する。いうか、テーブルの向こう側にあるソファーはこれじゃあ、すぐホコリがたまりそうだ。いや、たまっているからこそ座らなかったのかもしれない。


「で、さっきの話の続きだが…」


来た。


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