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序章
耳元を飛び交う蚊のせいで、昨夜はロクに眠れなかった。
駆除しようと電気をつけたが見失い、諦めて電気を消したらまた、耳元でプゥンと不快な音がする。それを繰り返すうちに、カーテンごしに朝日が部屋を明るくした。
お陰で今朝は目が腫れぼったい。ベッドから起きると体もフラフラだ。
あんなちっぽけな虫ケラでも、人間ひとりの一日を左右できる力を持っている。
どんなにちっぽけで些細なことでも、後にそれが、とんでもない重大な事件へと発展することがある。
そう。 あの重大な事件の発端は、ほんの些細な出来事だった。