雨月 魔王討伐!
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王都オールディエル。そこには恰幅のよい王様が住んでいた。人民からは小ばかにされながらもまじめに政治を行っていたので
「王じゃない王」と呼ばれていた。しかし、その王にも最近悩みが出来てしまったのだ。
「む〜ぅ・・」
「王様、どうしたのですか?また、持病のホームシックですか?」
「悩んでいるだけだ!何だ、ホームシックって・・・大体ここがわしの家だし・・・そうじゃない!悩んでいることはここ最近噂されている西の魔王のことじゃ!」
「ああ、最近即位なさって魔物たちを操って世界制服をもくろんでいると噂の?」
「世界制服じゃない、世界征服だ・・・・大体、世界制服ってなんだよ・・・まぁ、いい。とりあえずそんな危ない奴を野放しにしてはおけん。聞けばすべての民を苦しめているそうではないか!」
王様は普段使わない脳みそをフル回転させながらどうしたらいいか考えた。
「先代だったらどうするだろうか?」
「そうですね・・・魔王を倒すにはやはり、勇者などどうでしょう?別に魔法とか使えなくていいですし、とりあえず勇者を探すのがこのような物語にはあっていると思いますよ?」
大臣の意見を聞きながら王様は考えていた。
「ううむ・・・・そうだな、それならば我々にもしなくてはいけないこともあるだろう・・・」
「そうですね、まずは台詞を覚えないと・・・」
「それなら大丈夫じゃ、ちょっと練習・・・来たな?勇者よ・・・どうだ、この世界を半分お前にやろう・・・そして、私の仲間になれ」
「それ、魔王ですね・・・討伐される側ですよ」
「む、それなら改良の余地があるな・・・・所詮はおろかで小さな者よ・・・」
「いや、根本的にいけませんよ!」
こうして、王様たちは勇者に魔王を討伐してもらうことにしたのだった。
そして、数日が過ぎて勇者が一人やってきた。その勇者に王家に伝わっている秘蔵の剣を渡そうとしたのだが渡しそびれてしまい、王様が直接剣の刺さっているところまでやってきた。
「この部屋に来るのも久しぶりだな・・・」
「そうですね、事実・・・この王家に伝わっている剣ってそんなにすごいものなんですか?」
「いや、どうやら使い手を選ぶような剣らしくてな、万人が使えるが、その真の力を出せるものは剣に選ばれたものだけらしい・・・・ちなみにわしは駄目だった」
「まぁ、見ればわかりますよ。まん丸でメタボのあなたに剣は似合いません・・・似合うとしたらソフトクリームなどどうでしょう?」
そんなくだらない会話をしながら扉を開けると二人は動きを止めたのだった。
「・・・王様、珍しい剣ですね・・・背中から翼を生やした人間が見事に剣の納まるべき場所にまるで聖剣のように突き刺さってますよ・・・」
「違うだろ!人間じゃなくて天使だろ!」
「突っ込むところそこかよ!」
くだらないやり取りをしている二人はとりあえず突き刺さっている天使を抜いてやったのだった。ちなみに、剣は天使の近くにまるで産業廃棄物のように置かれていたのだった。
「あ〜どうも、助けていただいた挙句に食事までいただいて・・・」
「いえ、そんなことより・・・あなたは野盗ですか?」
大臣は目の前の天使を値踏みするかのように見ていた。その言葉に王様は呟いた。
「失礼だぞ、この方はきっと野盗ではなく、野党の人だ!」
「いや、違うでしょ?」
「そうですよね、天使さん?」
王様は大臣の言うことを無視してそのようにたずねる。
「・・・こほん、俺は政界征服を狙っています」
「おお、やはり野党の方だ!与党の人物ならば既に政界を征服しているからな!」
「なるほど、そうきたか・・・」
それから数分、そんなくだらない会話が続き・・・ここで平安が訪れる。
「ところで、天使さんは何故あのような場所にいたのですか?」
王様は本題とばかりにコーヒーをすすっている天使に尋ねる。
「・・・それが、わからないんです。目が覚めたらあそこに突き刺さっていたとしか・・・」
「記憶喪失ですか・・・それなら、何か覚えていることとかありますか?」
「・・・・覚えていることですか?」
天使は頭に手を当ててなにやら考え込む。
「・・・駄目だ、レンタルしていたDVDの返却日が今日だったってことしか思い出せない!ああっ、延滞料金が!延滞料金が俺を蝕んでいくぅぅ!!」
「落ち着いて!・・・他に何か思い出せないのですか?」
立ち上がって頭を抱え込んでいる天使を落ち着かせて王様は尋ねる。
「・・・・すみません、他に何も思い出せないようです・・・」
「そうですか・・・いえ、それならそれで構いません。実は、あなたに頼みたいことがあるのですが・・・」
王様はとても言いづらそうに口を開く。
「何でもどうぞ!俺を助けてくれた命の恩人の人の頼みですからなんでも聞きますよ!」
「そうですか、そういってくれるとこちらとしても非常にありがたいです・・・大臣、あの剣をお持ちしろ!」
「どうぞ、王様・・・」
王様は鞘に納まっている剣を天使に見せる。天使はそれを手に取り、鞘から抜き出してみる。
「ああ、これってマジックで使ってる奴ですね?こんな感じに飲み込んで・・・・」
ぶすり!
「・・・ごほん、ぺっ!すいません、最近のマジック道具はすごいですね?本物と大差ないですから痛みも同じで・・・・ごほっ!」
「違います!それはマジックで使われるような剣ではありません!」
あわてて天使から剣を取り上げると咳払いを始める王様。
「・・・ごほん、この剣を勇者に渡してもらいたいのです」
「・・・勇者に渡す?勇者に渡すって何かの隠喩ですか?実際は勇(作という)者(の体に刃を)渡すって意味になるとか・・・」
「ちがいます!魔王を倒すために強力な武器として渡して欲しいのです!」
「はぁ、わかりました・・・その勇者の名前を教えてもらえませんか?それと、できれば写真も見せてもらえるといいのですが・・・・」
「よし、お持ちしろ!」
やってきた写真に目を通す天使。
「・・・あの、鎧兜つけてるんで、顔が見えないんですけど?」
「あ、本当だ・・・しかもこの鎧兜、わしの王国の軍隊が使ってる奴だ・・・」
「ま、まぁ・・・勇者なら伝説の剣がなくても大丈夫ですよ。俺だって小さい頃はよく、レベルだけ上げて非武装で魔王に挑んでましたから・・・・」
「なるほど・・・わしもまぁ、どの程度のレベルで魔王を倒すことが出来るか何度もやってましたからなぁ・・・」
「いえ、実は俺はアクションRPGゲーム、初期レベルでラスボス倒しましたよ?あれは大変だったなぁ・・・やっぱ、腕が必要っすね♪」
「ふふ、実はわしも・・・・」
「いい加減に自慢話はやめてください!くだらない!」
大臣にとがめられて二人は黙ってこれからどうするかを呟いた。だが、結局その日はいい案が出なかったために終了してしまったのだった。
次の日、王様は大臣と天使を呼び出した。
「・・・今日の朝刊を読んだか?」
「・・・まだですが?」
「それが何か?」
手渡された記事に黒煙を上げる城が載っていたのだった。
『レベル上げの糧にされることへの不満なのか!?スライム族とゴブリン族の反乱にあい、魔王討伐!?』
さて、どうだったでしょうか?最後のスライムたちの反乱は実は作者が一番初めに書いた小説で使おうと心に決めていたねたですが、色々あってご破算になってしまいました。あ〜また久しぶりにあの小説のリメイク書こうかな〜・・・・・って、あとがきじゃねぇし!まぁ、読者の方が一度でも忍び笑いなんかをしてくれたら「父ちゃん、俺はやったよ!」と叫びたいと思います。