謀略の鬼たちの邂逅!遠き極寒の亡霊、ミカドの正体
空気が、凍結したように静止して見えた。
静かな月夜である。中天に輝く大きな満月はずっしりとそびえ、雲ひとつ遮る様子がない。微かな風が頬を嬲るのが分かるが、木立を騒がすほどでなく、辺りは死んだように静まり返っていた。
二人の男はゆっくりと、近づいてくる。まるで無防備だった。
「やあ、君か」
ミカドらしき方が、声を上げた。口を開いた瞬間、急に存在感を増す、ずしりと重い底錆びた声だった。
「君が今夜の作戦の立案者か?」
僕は、無言で首を振ってみせた。別に、駆け引きをするような局面じゃない。事実、今回の作戦を取り仕切っているのは、僕ではなく武田信玄だ。
「君じゃないのか。君は確か成瀬真人くん、だったね?」
「人に名前を名乗らせるなら、名乗るのはあなたが先じゃないか?」
虎千代の言うように僕は、鋭く切り返してやった。そう来るならついでに、こっちもかまをかけてやるまでだ。
「もっともあんたのことはもう、分かっている。ミカドじゃない。劔劉士郎、あんたはそんな名前じゃなかったか?」
ミカドはぴくりと柳眉を持ち上げると、物憂そうに首を傾げた。
「その名は、久しぶりに聞くな。劔劉士郎は死んだはずだ。もはや、戦後も半世紀以上を過ぎてから、先の大戦の生き残りの老人としてね」
無論、この男は老人ではない。僕が松本さんに見せられた、終戦直後の写真、そのままの風貌だった。しかしあの写真が表出出来ていないものが一つだけある。この凍えるような目線の異様な力である。
(普通の人間じゃない)
ひと目見て想った。この男の目からは切り立った断崖や、底も見えない奈落をのぞきこむような、虚無的な冷たさを感じる。いや、もっと言えば吸引力と言っていい。この男が映し出す不吉なものの核心に、自殺願望者がふと、引き寄せられていく、とでも表現したくなるような。
「越後は寒いな。大地も険しく広い。だが、シベリアほどじゃない」
(吹雪だ)
僕はその瞬間、はっきりと認識した。この不可思議な男の目に、どこか遥か果てを見通すような途方もない遠さがあるのは、そのせいなのだ。極寒の大地の吹雪が、この男の瞳の中ではいぜん、吹き荒れ続けている。見ているだけで、まさに立ち往生してしまいそうな不吉な昏さは、この男の経てきた地獄の経験によるのだ。
「詭弁は止そう。真人くん、君も私たちが生んだ戦後の世代の子だ。そう、私が劔劉士郎だ。しかしまさか私の名を知ってくれているとは、光栄だよ。現代の学校教育では、昭和戦中史は、まず教わらんのだろう?」
「あなたに直接、会った人がいる。その人から、聞いたんだ」
僕は以前から聞いていた、松本さんの筆名を告げた。
すると劔は、ほとんど間髪入れずに思い出したようだった。
「松本…ああ、彼か。確かに何度か、取材を受けたおぼえがある。そうか松本氏が…彼もこっちへ来ていたと言うわけだな。ぜひ会ってみたいものだ。彼は今、どこにいるのかね?」
僕は、無言で肩をすくめてみせた。向こうも分かってやっているのだろうが、不毛な誘導に乗るつもりはない。
「彼と私は、よく似ている。私の記憶では、私より早く鬼籍に入ったはずだからね。まさかこんな場所で会えるとは、思ってもみなかったよ」
「あんたは死人なのか?」
「違う」
皮肉げな笑みに貌を歪めると劔はにべもなく、首を振った。
「この通り、生きている。彼もそうだろうが、確かに現代では死んだ。そして生まれ変わったのだ。別人ではなく、現代ではなく、自分の肉体と精神がもっとも充実していた時に、全く別の戦国時代にな。陸大時代、私が専門にしていた戦国時代だ。私は無神論者だが、運命の示唆を感じたよ」
劔の言葉を、言下に否定できないと、僕は思った。
確かに荒唐無稽な話だが、僕がこの戦国時代の長尾家にいる、と言う事実すら、すでに荒唐無稽なのである。そして僕たちの前に立ちはだかった男は、正真正銘、旧帝国陸軍の亡霊だ。だが本当の亡霊ではない。その実態は、十界奈落城を率いて、この戦国時代に自らが果たせなかった妄執を実現しようとする、かつてない恐ろしい人種だ。
有り得ないことは、有り得ない。
信玄が謂い、そして僕がこの時代に来て常に肝に銘じてきたその言葉が、狙撃弾のように脳裏を撃って焼き付いたのはそのときだ。
もしこれを運命だと言うならばそれはなぜ、すでに百年も生きたこの男に、再び野望を果たそうとする力を与えたのだろうか。全盛期に若返り、再び滅亡した旧日本陸軍の軍服をまとうことを択んだ男に、なにをさせようと言うのだろう。
「飛行機の中で、ふいに訪れた今わの際に直面した私は、夢を見たよ。…遠い昔、関東軍の戦後処理のためにハルピンに飛んだときのことだ」
本土の終戦が玉音放送によりなされた明くる八月十六日、中国大陸の関東軍も幕僚会議で終戦を決した。まだ通信手段は生きていて、それはすぐに東京の大本営に報告されたと言う。
関東軍はその三週間後にソ連から武装解除を受け、現地の軍司令官、総参謀長以下約四十名の将校が三台のダグラス機に載せられ、ハルピンに向かった。武器を没収された彼らはソ連の取り調べを受け、そのままシベリアへ抑留されたのだ。
「ハルピンに着いたのは、昭和二十年九月五日の昼過ぎだ。飛行機の中で、私は微睡んだ。私の心臓が停まったのは、その機内でのことを思い出しているときだったはずだ」
回想に耽りながら、劔は月明かりの照らす漆黒の空を見上げた。
「目覚めたら、越後の雪の中だ。言葉もなかった。私はまた、かの地に抑留されたものだと、恐怖に慄いたものだ」
やはりだ。僕は思った。
(この男の目の中には、抑留されたシベリアの吹雪が吹いているんだ)
虚無と、どこまでも茫漠とした、しかしながら絶対の死。
「松本氏とはまた、存分に語り合いたいものだ」
平静な口調で話しながら劔は、腰の十四年式拳銃を引き抜いた。
「シベリアの地獄については、氏も知っているはずだ。私の記憶が確かなら、彼もまた抑留の経験者だ」
「ま、真人くん」
玲が思わず、声を呑んだ。
劔の銃口はぴたりと、僕に向けられている。なんの準備も、出来なかった。まるで劔は立ち話のついでのように、ごく自然な動作で銃を引き抜いたからだ。
「怖いかね?真人くん」
試したり脅したりする風もなく劔は、尋ねてきた。僕が答えても、答えなくてもどうでもいい、そんな感じだった。
「今、君が感じている恐怖を、極寒の大地で私は十一年間、毎日味わっていた。そして痛感したものだ。このような屈辱を二度と、私たちは味わうべきではないと。そしてあたうるなら次は、どんな手段を用いてもその屈辱を、与える側になろうと」
その指はしっかりと、引き金を絞ろうとしていた。
乾いた銃声が木魂した。
ひゅん、と言う弾丸の飛来音まで聞いたとき、僕は正しく撃たれたのだと思った。
しかし頬を掠めた弾丸は、僕の背後から前へ飛んだのだった。
劔の頬にひと筋、弾丸が掠めた痕が血を刷いて現れた。
「そこまでだ」
信玄の声が立った。たった一人、銃を構えて立っていた。今のは信玄が、劔に狙撃したのだった。
「卑怯者ッ、ぬけぬけと逃げおおせたつもりかッ!」
劔の横に居た男が、声高に痛罵した。
信玄は黙って肩をすくめた。
「笑えない冗談だ」
にべもない信玄の答えに、僕たちは信じられない想いだった。林の中の敵は相当な人数いたのだ。誰でも上手くそこをやり過ごして、くぐり抜けてきたのだ、と思う。しかし、林の中は不気味に静まり返っている。まさかだ。
全滅が目的だと言ったが、信玄は、まだあの人数を一人で皆殺しにしてきた、とでも言うのだろうか。
「現場の労働は、とかく疲れるものだ。大抵の場合、私はこんなことはしない。何しろ完璧を求める性が、災いするのでね」
証拠だと言うように信玄は、何かを振り落とすように地面に突き刺した。それは刃が欠け、ぼろぼろになった血まみれの軍刀だった。
「総勢二十名、よく訓練されていた。実に組織的な、綿密に組まれた攻撃だったよ。我が武田にも、これほどの遊撃隊を召し抱えたいものだ。この作戦の立案者は、あなたかな?」
信玄も、挨拶をするように尋ねた。劔に銃を突きつけたままだ。
「御坊、その通りだ。貴下のお名前は?」
「私は武田大膳太夫晴信、まだそう名乗ってはいないが後世の人間には信玄、の法名が通りが良いようだね」
劔は目を見開いた。言葉には出さなかったが、ぎらりと目を剥いた、と言ってもいい。この男は声を上げずに、笑った。
「光栄だよ、信玄公。私は御前で、あなたの講義を行ったのだ」
「話は聞いているよ。貴殿こそ、外国を相手にした大戦を取り仕切ったそうだね?」
「まさか世界大戦をご存知か信玄坊、これは益々光栄だ」
「光栄に思うことはないよ。だって君たちは、『敗けた』のだろう?そしてそれ以上に、多くの兵士たちが、無為のうちに犠牲になったと聞いている」
「敗戦は否定せんよ。しかし、戦後を取り返したのも、正しく我々だった」
劔は銃口を、信玄に向かって移した。
対する信玄は、なぜか引き金を絞らない。
「くっ」
その瞬間、劔は、何とも可笑しげに失笑を漏らした。それから僕たちを撃とうとした銃を、なぜか引っ込めたのだ。
「不毛な議論だ、信玄公。貴下も経験があるだろうが、過ぎ去ったことをいくら掘り返しても甲斐などない。過去に意味があるのは、それが現在に生かしうるときのみだ」
「貴殿は敗戦を活かして今がある、と言いたいのだろうね。今度は十界奈落城の主として。だが、二度あることは、三度あるとも聞かないかね?失態の轍は中々踏むことは出来ないものだよ」
「それは、そうだ。証拠に貴下も、戦場の技術革新による弱点を克服できなかった。貴下が今握っているその銃は、武田家滅亡の主因の末裔だよ」
そこまで言うと劔は、くるりと踵を返した。
「小鷹」
声を掛けたのは、傍らの若い軍人である。
「今夜の作戦は終了だ。撤退する。連中を喰い止められるな?」
「はッ!お任せ下さい」
小鷹は直立不動で敬礼した。
「逃げるのかね?」
「戦略的撤退だよ。見るべきものは見た。これ以上、私がここにいても何の意味もない」
と、言うと劔は、拳銃の銃口を僕たちに誇示する。
「今夜はここで、失礼するよ。実に、楽しかった。信玄公、貴下とはまたじっくりと、語り合いたいものだ」
劔は僕たちを銃でけん制して逃げる気だ。
(信玄さん)
僕は銃を持っているはずの信玄に、目で合図したが、なぜかこっちは銃を抜かない。代わりに大きくため息を吐くと、大儀そうに言った。
「もう帰るのなら、今夜の土産に一つだけ、忠告しよう。確かに貴殿の作戦は綿密で、完成されていた。しかし、致命的欠陥がある。それは、完成されすぎていることだ」
劔は、色のない目で信玄を見た。
「完璧に作戦を組めば組むほど、現実の齟齬に対応しきれなくなる。恐らく計算では、秋常の伏勢がやられてから、貴殿たち陸軍の部隊はもう少し早く、包囲攻撃を開始するはずだったんじゃないかな?そう言えば、うちには信長と言う、聞かん坊がいてね。彼が出会い頭にいきなり、秋常を攻撃しなければああはならなかった。違うかな?」
劔は何も応えない。しかし、信玄の言は中っていると思う。何しろ、あの天才、織田信長である。本人は当然、無自覚だが、陸軍エリートである劔の作戦の段取りを、破壊してしまっていたのだ。
「私は床几大将、などと言われるが、見ての通り現場の人間だ。いくさ場は生きものなんだよ。常にその息遣いを感じて動かないと、不確定要素に大きく足元をすくわれることになる」
「忠告、感謝する。非常に勉強になったよ」
劔は底錆びた声で、ようやくそれだけを答えた。
「では、私からも忠告しよう。信玄公、貴下は遊び心に過ぎる。その不確定要素とやらで、遊ぶのは危険だからやめた方がいい」
「忠告、痛み入るよ」
信玄は悪びれずに、肩をすくめてみせた。
「真人くん、君の顔も見れて良かった。次は、例の虎千代姫とやらも連れてくるがいい」
「に、逃げるのかっ」
玲が武器を持って前に進み出そうになったのを、僕は制止した。
「おっと。なんだ君が、春水の息子か。確かに大きくなったものだ。私がこの手で抱き上げたのを、君は憶えていないだろうな?」
玲は、はっと息を呑んだ。劔に言われて、思い出したことがあったのだろうか。
「息子の君も、剣をとって私たちと、殺し合うようになったと言うわけだ。泉下の百震もさぞや、喜んでいることだろう」
「百震…?」
劔は無論、それには答えなかった。
「また会おう。新たな作戦を練らねばな。何しろ、君たちは私たちがせん滅すべき脅威だからね」
部下の小鷹一人を置いて、劔は雪原の彼方へ消えていった。馬の用意があるのだろう。遠ざかる蹄の音が、ややあって遠ざかっていった。
「なんで撃たなかったんですか!?」
劔が去ってから僕は思わず、信玄に詰め寄った。さっきもさっきだ。ったくどうして、信長みたいに出会い頭、劔を狙撃しなかったのだ。
信玄は含み笑いをすると、僕に向かって今さら銃口を向けてきた。
「わっ」
そのときだ。かちん、と引き金だけが虚しく絞られたのは。
弾丸切れである。
「したくても出来なかったのさ。この銃は、人のを奪ってきたものだからねえ。もちろん、あの劔と言う男は知っていたさ」
僕は密かに舌を巻いた。なんと、あの状況下で極限の詐術である。じゃあ、あの時、信玄は、実弾の装填されていない銃で、銃を持った劔と渡り合ったと言うことじゃないか。
「それでもあの男は撃たなかった。私に敬意を表したのか、それは判らないが、こっちのはったりに、知ってて乗ってくれたんだ。ならば気持ちよく逃がしてやるのが、筋と言うものじゃないか」
いかにも嬉しそうに微笑む信玄はまさに、自らの命すらも平然と賭けてしまう策略の鬼の風貌である。思わず背筋がぞくっとした。つまり劔はその気になれば、僕たち三人を射殺できたと言うことだ。あの失笑のわけがやっと分かった。それにしてもこの二匹の鬼は、謀略と言う、地獄の遊戯をどこまで弄ぶ気なのだろう。
「さて、それで劔氏は置き土産を遺してくれたわけだが」
空の銃を棄て、信玄は僕と玲を控えさせた。
大柄な体躯に見合う大刀を構えた小鷹が、そこに立ちはだかっていたからである。
「自分は撤退せん。ここで三人、斬り殺していく」
「いいだろう」
信玄は、肩をすくめた。こっちは丸腰である。
「今夜の作戦の最後の犠牲者は、君だ」
信玄は構えをとると少し、腰を落とした。堂々たる徒手空拳である。足を開き、軽く握った手刀を上下に龍の顎門のようにして構えた。脇がしまり、無駄のない構えだ。リーチはそれほど長そうではない。
信玄の隠れた特技は中国拳法だが、そもそも古式すぎて源流が分からない。
北京王朝に武技を以て仕えた魏玲の拳法が詠春拳に似ているとするならば信玄のそれは、八極拳に最も近いだろうか。フットワークと手さばきで翻弄する魏玲の拳と較べれば、信玄の構えはどっしりと腰が落ちて、重心が大地に根を下ろしている感じである。
「それで戦う気か」
対する小鷹は、古流剣術に謂う引の構えである。相撲取りのように腰を踏ん張り、右構えにした大刀の切っ先を、信玄の眉間に向かって突きつける。しかし両手の位置は、常の八相より高く、薩摩示現流のトンボ撃ちをさらにアレンジしたようなものにも見える。
「そうだ。いつでも来るといい。その様子では大分、斬り覚えたようだね?」
無言のまま、じりじりと間合いを詰める小鷹には、言い知れぬ緊張感が漲っている。大柄の体格が振りかぶると、相手はその巨きさに呑まれる錯覚を覚える。
鉄骨のような太い腕が握る日本刀は、長巻並みに長くしかも思い切って身幅が厚い。小鷹が得意とするのは紛れもなく、一撃の必殺剣だ。あの剣ではどんな相手も受け切らず、一刀両断に斬り下げられるに違いない。
「卑怯とは言わんだろうな」
「その、長い刀が、かね?」
信玄は怪訝そうな顔をした。
「長い得物が有利だと、誰が決めたんだい?」
「セエッ」
なお理屈を謂う信玄の頭をぶち割ろうと、小鷹は一気に斬り下げた。膂力任せの剣ではない。刃筋が空気そのものを断つような、恐るべき斬人剣であった。
しかし、信玄の両手は柳のように動いて、懐の深い大刀をいなす。驚くべきは次の瞬間だった。小鷹が振りぬいた剣の腕を、信玄は左手で掴んだ。いや、その勢いを駆って小鷹のあごに掌底でも叩きこむのかと思いきや。
その拳は、小鷹の顎にぴたり、とつけられたのだ。
「なっ」
(何のつもりだ?)
もちろん、寸止めではなかった。信玄が小鷹の重心を左手で引きこんで崩した後にそれは起きた。ドン、と芯に響く不気味な音とともに、寸止めした掌底が奥深くに突きこまれたのだ。顔の中にそのまま掌底が突っ込まれた。そう錯覚するほどに、信玄の拳は小鷹の中に喰いこんだのである。
「ぐうッ!」
くぐもったうめき声を漏らして、小鷹は顔から墜ちた。空を斬った剣が放り出され、雪に埋もれた顔から、一気に血が噴き出す。身体が痙攣し始めていた。もはや二度と立ち上がれまい。
(すごい)
なんと、超接近距離の掌底である。ただの掌底ではない。発勁を使ったゼロ距離での掌底だ。そう言えば聞いたことがある。
例えば八極拳においては震脚と言う独自の体重移動法によって、通常攻撃しえないゼロ距離の間合いでも、必殺の発勁が撃てるのだと言う。
今のは、まさにそれだ。信玄は八極拳における発勁の技法を使い、小鷹に乾坤一擲の一撃を放ったのだ。必殺を狙っていたのは小鷹ではない。実は丸腰の信玄の方だったのだ。
「分かったかい?長い得物が必ずしも、有利と限らないんだ」
信玄は夜話において長刀・短刀、いずれが有利かの議論を家臣にさせ、長刀有利論を自ら覆してみせたと言う。
だが、今の絶技、達人にしか出来ない。




