届かぬ君へ
エルへ
久しぶり。元気か?
俺はどうにか元気にやってる。
戦も落ち着いて、やっと手紙を出すことができた。
だから、ずっといえなかったことをいうよ。
俺は知っての通り隣国の王子だ。
だけど、俺の国は正直危険だった。命狙われることなんて日常茶飯事のことだ。
そこで、今一番平和だと言われているエルのいる国で過ごすことになったんだ。
もちろん俺が王子だっていうのは極秘事項だからエルにいうことはできなかった。
本当にごめん。
だけど、その他でお前に嘘ついたことはないんだ。
それだけは信じて欲しい。
俺にとってはエルは唯一の友達だった。親友だった。
本当に…お前に隠し事なんかしたくなかったよ。
姫との婚姻の話が出たのも偶然だ。
まさか、お前が惚れている人と結婚するなんて思ってなかったし。
そうそう、姫はお前のこと覚えてたぞ。
あれから元気になったって言うと喜んでた。
心の綺麗な人というのはこういうことをいうんだなって思ったよ。
戦のことだけど、もう安心していいぞ。
落ち着いたって最初に書いたように、そっちに被害がいくことはないだろう。
もちろん、姫も子どもも守っていくから安心しろ!!
これから、きっと会うことは出来ないだろう。
だけど、どうしてもいっておきたかったんだ。
謝りたくて、お礼いいたくて、ガラじゃないけど、手紙をだした。
笑うなよ?
俺はお前に会えてよかった。
ありがとな。
ディオ
「ふぅ」
やっと書き終えた。
ずっと出せずにいた手紙を。
エルと共にいた頃は楽しくて、王子ってことを忘れられたのに、今ではそんなこといってられない。
「あーあ…」
後ろのベッドでは幸せそうに姫が寝ていた。
「ごめんな…」
姫にたいして謝る。
好きでもないのに結婚して。
君を本気で愛せなくて。
だけど、それを彼女にいうことはない。
もちろん、彼女のことは嫌いじゃない。
守りたいとは思うけど、俺が好きなのは
エル
だったんだ。
「エル…」
自分もエルも男だからこんな感情おかしいのはわかってる。
でも、本気で好きだった。
愛していた。
だから守る。
エルが好きだからエルの国を。
エルが好きだからエルの好きな人を。
結婚式の時に、全てを許してくれるといった。
俺を信じてくれるといった。
それが嬉しくて、切なくてたまらなかった。
決して顔に出さないようにこたえて、それ以来エルにはあっていない。
きっと、あいつのことだから、この手紙に返事はこないだろう。
出したとしても、俺の手まで届かないだろう。
そして、俺の本当の想いも一生届かないだろう。
それでいい。
君を守ることができるならそれでいい。
エルの幸せを願って、封をとじた。