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竜契の巨人 血を啜れ約束を果たせ 闘技場の王  作者: 織部


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祝勝会

その夜、ライラの優勝祝勝会が開かれた――とはいえ、顔ぶれはいつも通りだ。

 俺とライラ。看守のアミンに、カインとサーミヤ。そして闘技委員のワッド。


 ちなみに、ライラはアマゾネスたちや女奴隷の間でも祝勝会に誘われているらしい。……あれほど冷たくしていたくせに、手のひらを返すとは実に都合がいい。


 だが、俺は不思議と嫌な気はしなかった。少しだけ、愉快にすら思える。……だが、それでも、俺たちが先だ。


「おめでとう、ライラ!」

 カインが市場と食堂から仕入れてきた高級な肉料理にワイン、手に入りにくいフルーツや砂糖菓子まで、机の上は小さな饗宴のようだった。


「……なぜ、ワッドまで呼ぶ?」

 サーミヤが眉をしかめて問いかける。

「そんなぁ、おめでたい席じゃありませんか。私も少しは出資してますし」

「全部出せばよかろう」


「いえいえ、私、闘技委員ですから。皆さんのように賭けで儲けてるわけではありませんし、お菓子も食べませんし」

「なら……まあ、いい」


 サーミヤは不満そうにしながらも渋々頷いた。いや、お前のお祝いじゃないし、と俺は内心で苦笑する。


「それでは、ライラから一言どうぞ!」

「はい。皆さんのおかげで、トルサン様のおかげで、優勝できました。これからも従者として頑張ります!」


「ふむ、良き心がけだ」

 サーミヤがやけに偉そうに頷いた。いや、それは俺の台詞だろうと、軽く頭を叩こうとしたら――ライラは、ぬるりと身をかわす。


「お前の主人は、どうにも殺気が消えんようだな」

 その一言に、場がどっと笑いに包まれる。……いや、笑いごとじゃない。


 ライラはワインをひと口だけ飲み、俺の胸に顔をうずめるようにして、そのまま眠ってしまった。


 よほど、張りつめていたんだろう。

「まあ、今日は許してやろう」

 サーミヤとカインが、顔を見合わせて同時に言った。


 翌朝、ライラと武器庫を訪れた。彼女にとっては初めての場所らしく、倉庫の中を目を輝かせて見渡している。


「楽しい!」

 壁には高級そうな剣や鎧が整然と並び、奥にはさまざまな長さ・形の剣が棚に収められている。光を反射するそれらに、ライラの目は忙しなく泳いでいた。


「好きなのを選べ。お前なら、大男みたいに武器を粗末に扱ったりはせんだろうしな」

「どれでもいいって、シャーヒナの書状にもあったしな。高いの選んでおけ。実は、裏の倉庫にもっと良いのが隠してある」


 俺がそう囁くと、武器庫の管理者が露骨に嫌な顔をした。

「どんな剣をご所望で?」


「“剣一振り”と書いてあったが、防具一式も選べるのか?」

 もし駄目なら、俺が金を出すつもりでいた。


「……もちろんですとも」

 管理者は渋い顔をしながらも頷く。根は悪くない。ケチでコレクター気質ではあるが、筋は通す男だ。


「ライラ、優勝おめでとう。道場主が荒れ狂ってるそうだな」

 その声に振り向くと、シフリーが愉快そうに笑っていた。


 この闘技場で一、二を争う魔術師にして魔剣師、そして上級剣闘士でもある女エルフ。もちろん年齢は聞けない。サーミヤよりは少し若く見えるが……エルフに歳の話は禁忌だ。


 それに彼女と道場主カルブ――つまり、シトリーという本名を持つこの女とは、犬猿の仲だ。いや、犬とエルフの仲と言うべきか。


「ああ、免許皆伝ってやつで、道場に行けなくなった。まあ、アマゾネスたちとも訓練してるし、問題はない」


「約束は、覚えているか?」

「ああ。俺は闘技場では一切、魔術を使わない。ライラも剣闘士にはしない。前にそう言った通りだ」


 ……俺が本気で魔術を使ったら、勝てる相手なんて限られる。サーミヤくらいのものだろう。


「それなら良い。雲行きが怪しいからな」

 シフリーが小ぶりの杖を取り出して差し出す。


「まず、これが魔術具だ。魔術を使うには、魔力を拡張する道具が要る」

 俺は興味津々でそれを眺めたが、彼女は決して触らせようとしない。


「さて、ここからが本題だ。人族は、周囲の魔素を使って魔術を発動する。なぜなら、体内の魔力が少ないから。対して、魔族や他種族は体内の魔力を使う」


 そして、彼女は問いを投げてきた。

「さて、一番魔力の大きい種族は?」

「お前たちか?」と、俺は適当に答える。

「違う」


「魔族です」

 ライラがすかさず答えた。

「だが、人族に敗れた。なぜだ?」

「……」


 俺は黙った。答えが出てこない。

「道具の差だ。人族の魔術具が進化したからだ。ただし、人族は魔族領に本格的には攻め込まない。できないからだ。なぜか?」


「……」

「魔族の領地には魔素が存在しない。つまり、人族は魔術を使えない」


 ライラがまた答えた。そういえば――あのドラゴンがそんなことを言っていた。今さら思い出す。


「正解だ。トルサン、お前、ちゃんと勉強しているのか? シャーヒナ様が泣くぞ」

「俺だって真面目に通ってるさ。今じゃライラの方が上のクラスだけどな」


 少しは褒めてほしくて言ったが、シフリーの目は冷たい。やれやれ、これだからエルフは。


「これが基礎だ。例外もあるが、それは追い追い話す。さて、座学は終わりにしよう。トルサンがそろそろ舟を漕ぎそうだからな」


「ああ、助かった」

「ではまず、体内の魔力を測ってみよう。ライラ、この杖を握ってみて」

 ライラが杖を握ると、杖がまばゆく輝いた。


「おお……なかなかの量だな。エルフの中に混じっても上位だ。これなら魔術具なしでも、多少の魔術は扱えるかもしれん」


「トルサンも測ってみろ」

「……今日はやめとく」

 測られたら厄介なことになる。サーミヤに魔力の抑え方を習ってからにしたい。


「ふうん」

 シフリーは疑わしげな目を向けてきたが、それ以上は追及しなかった。

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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