6.星の天蓋 2
…まあ、端的に言ってしまえば。
僕らはバケモノだ。
「…エミリ。上、見てごらん」
意図して出した明るい声は、夜の闇と静かに溶けあう。
恐る恐る、という感じで彼女が顔を上げた気配があった。
「……!わぁ…!」
歓声が聴こえた。
少し開けた木々の間。
砂をこぼしたような、満天の星空が広がっている。
「綺麗だろ?森の中は暗いから、星がハッキリ見えるんだ」
返事は無い。
だけど、首に回された腕から、少しだけ力が抜けた。
「僕は、夜のいきものだから」
あの星は、一角獣の角だとか、妖精の羽だとか、竜の瞳だとか。
「仕事が無い時は、星ばかり見てるんだ」
____そんな話をしているうちに。やがて、静かな寝息が聞こえてきた。
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朝焼けが東の空を染め、かすかに森に差し込み始めたころ、エミリが目を覚ました。
「おはよう、よく眠れた?」
なるべく穏やかに、問いかける。
「…うん」
「それは良かった」
応えた声から、昨日よりも緊張が抜けているような気がして、僕は微笑んだ。
森は、刻々と朝の気配を増していく。
不意に視界が開けた。
昇る朝日を背にした街が、遠く眼下に広がっている。
その中心では、教会支部の鐘塔が燦然と輝いていた。
この地方では比較的大きな街だ。
「……きれい」
ポツリとエミリが言った。
…よかった。
綺麗なモノを綺麗と思えるならば、大丈夫。
まだ、エミリの心は死んでない。




