表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/16

4.星の天蓋 1


 夕暮れ時。

 橙色(オレンジ)のあたたかい光が、やさしく世界を染めている。


「それじゃ、行こうか」


 少女は何も言わない。

 けれど、黒外套の裾を掴んだ手に、少しだけ力がこもった。


「…知ってる人に挨拶とか、しなくて良い?」

「…いい」


 まるで、必要最低限しか口を開かないと決めているかのよう。


 僕は苦笑して、歩きだす。





「……名前」


「え?」


 少女が不意に発した言葉を、聞き取ることが出来なくて立ち止まった。



彼女は、まっすぐに僕を見つめていた。



「お兄さんの、名前は?」


「僕の?」



 ちょっと戸惑ってしまった。


「…そうだなぁ」


 まだらに染まる空を見上げて、しばし考える。


「____ダンピィ、とでも呼んでくれれば良いよ」


「…ダンピィ?」

「そう、ダンピィ。キミは?」


「……エミリ」

「エミリ、か。いい名前だね」


 彼女は、ゆっくりと僕から目を逸らした。

 別に、心をゆるしてくれたわけではないらしい。


「ま、いいや。行こうかエミリ」


 1つ伸びをしてから、歩き出す。




-*-




村はずれまで来た時、彼女の足が止まった。


「森…通るの…?」


「そうだよ」


 辺りはすっかり夕闇に包まれている。



そろそろ、僕らの時限だ。



「怖い?」


 立ちすくんだエミリが、息を()む。

 怯えを振り払うように、首を大きく横にふった。


「………」


 僕は、彼女の前に自分の背中を差し出す。


「ほら」


 彼女がたじろぐ気配がした。


「夜の森は暗いから。転んだりすると、危ない」


 …しばらくためらってから、彼女は僕にしがみついた。




 背中にかかる、重みとあたたかさ。


 なぜか、少しほっとした。



-*-



「ねえ」


 しばらく歩いたところで、それまで黙っていたエミリが口を開いた。


「なに?どうかした?」


「…ダンピィは」


 はく、と口を閉じ、ふたたび開く気配。


半吸血鬼(ダンピール)、なの?」


 思わず笑ってしまった。


「エミリ。それ、今ここで訊いて大丈夫?怖くなったり、しないの?」


「…怖い」


 正直でよろしい。


 ややあって、僕は口を開いた。


「…そうだよ、半吸血鬼(ダンピール)


 エミリが鋭く息を()む。


「……半吸血鬼(ダンピール)は、人の血を吸わない。その言葉を知ってるなら、知ってるだろう?」


 安心させるつもりで言ったのに、彼女の身体は震えた。



背中にかかる温かさが、遠のいたように感じた。



 …僕は重たいため息をつく。


 理屈でどうこうという話では無い。

 生き物は、自分にない力を持つ存在を恐れるものだから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ