第三惑星 「可能なら友達を見て安堵したい」
特別休暇が終わり、軌道横須賀鎮守府に帰還した瑠海は提督から600年前に竣工した旧式艦『日高型戦艦三番艦 大八洲』の艦長に任命される事になる。提督執務室を出た瑠海は早速その準備を始めるのだった。
提督執務室を出た瑠海は貰ったタブレットに表示された計画書を見ながらある場所を目指していた。風は吹いていないのにも関わらず、海軍旭日旗はたなびいている。
「えーっと確か…船渠第十七棟2号ドックは…っと。うわっ遠い。というかやっぱここ広すぎる…本当にこれが宇宙港?人口惑星の間違いじゃないのかな…」
「って…あれは…」
歩いていると瑠海の方に一台の車が向かってくるのが見える。カーキ色の車体に丸っこいフォルム。バンパーには桜と錨をあしらった黄金の海軍紋章が輝いている。
「おーーい!!!!綾火ー!!こっちこっち!!!」
瑠海が大声でそう言うと車はピタリと真ん前で停止する。少し強引にドアを開けると、躊躇なく中に入り、助手席に座る。
「よっと…いやぁーありがとね。助かったよ~」
「あんたほんと相変わらずね…遠慮って言葉を知らないのかしら?」
女の子はもう見慣れた光景を見る様な呆れた顔でため息を混ぜながらそう言うと、アクセルを踏み車を走らせた。
「まぁまぁ、良いじゃん。私を送る為に来てくれたんでしょ?」
「かっ…勘違いしないでよね!こ…これは提督に頼まれたから来ただけ!どうせ瑠海の事だから乗用車も借りず歩いて向かうだろうからってね」
「あはは…正解…まさか船渠第十七棟がこんな遠いとは思わなかったよ。こんな奥の方行った事無いし」
「そうね。私も行った事無いかも。確か日本海軍が保有するドックの中で一番大きい所じゃなかったっけ?あんな大きい戦艦、普通のドックじゃ入りきらないからね」
「やっぱあの戦艦の事も提督から聞いてるんだ。どこまで聞いたの?」
「あんたが600年前の大八洲って戦艦の艦長に任命された事と、船渠第十七棟2号ドックに行ってその戦艦の状況を確認しに行くって事くらいよ。っていうかあんた…本当に私が来なかったら船渠第十七棟まで徒歩で行くつもりだったの…?…馬鹿?」
「だって乗用車借りる為の申請書書くの面倒くさいんだもん!」
「絶対この道のりを徒歩で行く方が面倒くさいと思うわよ…」
「ふっふっふっ私は綾火が来てくれると信じてたのだよ!」
「はいはい。でも…あんたが元気そうで安心したわ」
綾火は少し微笑むと安堵した様な口調なでボソッと呟いた。
「…そういえば私が休みの間、随分私に会いたがってた様だけどぉ?」
瑠海はニヤニヤしながら、運転中の綾火に顔を近づけた。
「そっ…それはなんというか…アレよ!えっとその…」
「ありがとね。心配してくれて」
しどろもどろになった綾火に瑠海はふとそう言った。
「…当然よ。あんたは私のと、友達…なんだから…!」
顔を赤くして言葉をところどころ詰まらせながら言う綾火を、瑠海は優しく微笑みながら見つめていた。
「ふふふ、そうだね。友達だもんね」
「っ…ほ、ほら!瑠海!前を見なさい!!見えてきたわよ!あれが船渠第十七棟よ!」
綾火は分かりやすく話を変えると前を指差し、巨大な鉄の建築物を指差した。
誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。




