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第二惑星 「可能なら今すぐ辞退したい」

時は紀元一万千三百六年、英弘六十九年、西暦10788年。

列強国の一国。宇宙と言う大海原に輝く偉大なる太陽『大日本皇国』は列強国が自らの勢力圏の拡大を競い争う『グレートゲーム』への参加を表明した。それから数日、与えられた特別休暇を楽しみ終わった海軍大佐「天霧 瑠海」は仕事の為、軌道横須賀鎮守府に向かうのだった。

『帝都東京大惑星』…それは大日本皇国の首都惑星であり、大日本皇国宇宙領圏を束ねる皇国政府、そして万世一系(ばんせいいっけい)の帝、天皇陛下がおわす日本の中心星である。

その惑星軌道上には日本四大宇宙軍港の一つ『軌道横須賀軍港』が鎮座し、皇室と皇国政府を敵の脅威から守っている。


瑠海はその軌道横須賀軍港に向かっていた。沖縄惑星県からシャトルに乗り、沖縄宇宙軌道ステーションで惑星間飛行船に乗り換え…軌道横須賀軍港に到着した。

無数のレトロな建物が立ち並ぶ。前地球時代、それも元号明治から昭和にかけて造られた様な重厚な石作りの建築物が通りに堂々と置かれている。


「…本当にいつ見ても時代遅れ。地球にあったっていう横須賀軍港をイメージしてるんだろうけど…ホント上層部って伝統主義とか保守主義拗らせすぎてるわ。…まぁ嫌いじゃないけど」

「ってやばい!早く鎮守府の方に向かわなくちゃ!」


『軌道横須賀鎮守府』…それは軌道横須賀軍港に設置された艦隊後方を統轄する機関。帝都東京大惑星を守る軌道横須賀鎮守府の権限は凄まじく、それに比例するように軍港自体も大きく、指揮する艦艇も膨大である。


“…ねぇ…あの人…” ”…あれ瑠海大佐じゃない…?” ”…最近居なかったよな…” ”…特別休暇中だったらしいよ…” ”…あんな出来事があったのに…” ”…よく軍人を続けられるな…” ”…にしても可愛いよな…”


「…って鎮守府に着いてこの部屋に入るまで言われ続けました。いやー人気者って辛いですね」

瑠海は笑いながら陽気な声で言った。


「多分人気だからという訳じゃないと思うぞ…。というか最後のセリフ本当に言われた?」

前に座る男は呆れた様な顔をして言う。


「まぁそこはいいじゃないですか、提督。それでは改めて…」

瑠海は背筋をピンと伸ばし、足を揃え、腕を上げ、手を水平にし敬礼する。

「大日本皇国海軍大佐、軌道横須賀鎮守府所属、天霧 瑠海。特別休暇任務を終え、ただいま帰還致しました」


「あぁ、よく帰ってきてくれた瑠海大佐。帰って来たばかりで悪いのだが、貴君の新しい軍艦への配属が決定した。今日から早速準備に取り掛かって貰いたい」


「了解しました。大日本皇国軍人として、天皇陛下の為、日本の為、尽力したいと存じます。して、新しい軍艦とはどの様な物なのでしょうか」


「……えっとだな…『日高型戦艦三番艦 大八洲』という名の戦艦だ。貴君にはその艦長になってもらう」


「日高型三番艦 大八洲…知らない軍艦ですね。新型とかでしょうか」


「新型…あぁうん…見方を変えれば新型…かも…とりあえずこれが上層部から渡された本戦艦に関する計画書だ。一応目を通してくれ…」

提督は何故か動揺しながら机の上に置いてあるタブレットを渡した。手には冷や汗がつたっている。


「ありがとうございます。確認致します。それと見方を変えれば…とは?」


「うーんそれはだな…」

提督は呻くような声を発し瑠海の言葉をのらりくらりかわし続ける。


「まぁとりあえず確認を……へぇーかなり大きい戦艦じゃないですか!…でもなんか変わった見た目の戦艦ですね。何というか古いというか…見た目もボロボロだ…し…」

瑠海はタブレットに表示された計画書をゆっくりスクロールし、確認していく。

「ん…?提督、これ竣工日が紀元一万六百五十二年になってるんですけど。えっと第一竣工日…?」


「あぁ……もう言ってしまうか…瑠海大佐、貴君には今から600年前に建造された宇宙戦艦『日高型戦艦三番艦 大八洲』の艦長になってもらう…!」


「…え?………600年前…?なっなんの冗談ですか…?」


「冗談ではない。その計画書に書かれている事が全てだ。大日本皇国海軍は600年前の旧式艦『日高型戦艦三番艦 大八洲』を現役艦に復帰させ、軌道横須賀鎮守府に属する一線級の戦力として扱い、その艦長に貴君を割り得てる事を決定した。まだ所属艦隊は決まっていないが、時期に決まるだろう」


「マジですか。可能なら今すぐ辞退したいのですがよろしいですか?」


「今さっき皇国軍人として天皇陛下の為日本の為尽力したいって言ってたのに変わり身早いな…」


「そりゃ600年前の軍艦配属って言われたら誰だってそうなりますよ!何ですか600年前って!!よくそんな昔の軍艦を海軍も残してやがりましたね!?!?」


「まぁ大体そんな感じの反応をされるとは予想してた。俺だって最初聞いた時は耳を疑ったさ。しかしもう上の方で決まった事だ。すまないが辞退する事は出来ない」


「理由は…理由は何ですか…?今更そんな旧式艦を現役復帰させないといけない程、我らが祖国の国力は低くないはずです。どうしてその様な判断に至ったのでしょうか」


「私にも分からない。これは大日本皇国海軍本陣で可決されたものだ。理由を聞いても答えてくれなかった」


「提督クラスの方でも教えられなかったというのですか」

「…もしかして…私への罰なのでしょうか…」

瑠海は頭を少し下に向け考え込むとらしくない細々とした声で呟いた。


「それは断じて違う。軌道横須賀鎮守府提督として保証する。そもそも()()はお前の責任では無い。お前に罪なんて無いし、罰を与えられる理由も無い。それにお前に罰を与える事は俺が許さない」

強く、自身に溢れた声…少し怒りが混じっている様な表情で言い放った。


「ッ!?…はっはい。あ…ありがとう…ございます…」

「そっそれにしてもこの大八洲って変わった見た目してますよね!なんか強そう?っていうか昔の艦!っていうか!」

赤らめた顔を全力で隠すように何とか言葉を思いついては出して大きな声で言った。


「そうだな。我が国の艦艇は前地球時代の軍艦、つまり水に浮かぶ船の形を残した宇宙船になっているが…大八洲は今から600年以上前の戦艦。現代より前地球時代の軍艦に近い…いやむしろそのまんまの見た目になっている。中身こそ宇宙船だが…これを地球至上主義者に見せたら感動でぶっ倒れそうだな」


「あっなるほど。つまりこれは平和主義傾向の強い地球至上主義者を抑える為のプロパガンダって訳ですか」


「まぁ確かにそれもありそうだが…それだけの為にこんな骨董品を持ってくるとは思えない。何か別の理由があるんじゃないかと俺は踏んでいる」


「別の理由…というか骨董品とか言わないで下さい。私これに乗るんですけど」

目を細めジトっとした顔をしながら言う。


「ははは、すまない。でも安心してくれ。大八洲は軌道横須賀軍港が全身全霊を持って修理し近代化する。幸い致命的な故障は見られないし、船体自体は現代のレベルから見ても最高品質だ。だから貴君には自信を持ってその手腕を生かしてもらいたい。これは幾多もの海戦を勝ち抜いた貴君だからこそ任せれるモノだ」


「提督…了解しました!大日本皇国海軍大佐、軌道横須賀鎮守府所属、天霧瑠海。『日高型戦艦三番艦 大八洲』艦長への任命、謹んでお受けいたします」


「……ありがとう…瑠海。そういえばお前が留守の間、綾火(あやか)がお前を探し回って居たぞ。1日一回は執務室に尋ねて来ては瑠海は来たかってな」


「…そうですか。お礼を言わなければ…なりませんね」

誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。

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