5対人戦闘
戦闘開始の合図はコメント
〈やったれ!〉
最初は私が踏み込んだ。
刹那どころか、六徳にも届きうるレベルでコメントが来たのとほぼノータイムで詰めた。
が、まだまだ素人、技術があっても強さが足りない、速度は余り出ない。
「甘いな」
【スキル"大振り(縦)"】
そんなテキストが浮かび上がったと同時に男がもつ大斧がキラキラと発光し大きく下に向かって振り下ろされた。
(喰ったらヤバそうか)
そう思い悠々と避ける。
さっきのゴブリンより遅い楽勝だ。
「チッ、一発避けたからって調子に乗るんじゃね!ー」
そんな声を挙げたかと思うと男は避けた所を狙って横振りしてくる。
(これはやばいか?)
頭素早く回った。
かの有名映画のごとく、腰をギリギリまで曲げて回避する。
「んな?!」
男がそんな素っ頓狂な声をあげたと同時、ガラ空きの相手の顔面に向かって殴りを入れる。
【15ダメージ】
そんなダメージの表記が出る。
男はさすがに相手が初心者であれど直撃したパンチによりよろけてしまう。
これきに一旦距離をとる。
〈今の避け方えぐぅぅー、もしかして制作者か何か?〉
「流石に違うよ、でも今のはちょっと再現性ない高揚感に身を任せたヤケクソ回避かな」
「普通ヤケクソでもあんなの出来ませんって!リゼさん凄い!最強!」
そんな喧しい完成を他所に、再び構えを取る。
「へへ、テメー…ぶち殺ろしたらぁぁ!」
(ふぃ〜ブチギレ、ブチギレ…ま、冷静さを欠いてくれる分にはとっても嬉しいんだけどね)
男は全力で走ってくる、やはりあまり早くはないがだからといって逃げきれるかは微妙。
しかもここで逃げるも癪だ。
【スキル"大振り(横)"】
今度はそんなテキストが表示されて、男の大斧はキラキラ発光する。
勢いよく振られた大斧。
それをしゃがむことで回避する。
「へぇ!引っかかりやがったバカが!」
男はそんな発言をしたと同時、私の腹を強く蹴り飛ばす。
【20ダメージ】
私の眼前にそんなメッセージが出る。
身体は吹き飛び、そうして轟音が響いた。
ただこの音は別に私が木に叩きつけられた音じゃない、全く別の発砲音である。
【50ダメージ】
そんな文字が男の腹からは表示される。
「は…?」
男は何もわからないと言う表情を浮かべている。
男の横腹からはダメージのエフェクトが光っている。
「ふー危ない、危ないあんな乱雑な蹴り読めるって話、まぁ?当たるかどうかは1/2って感じだったけどね」
倒れ込む男を下目にそんな事を言う。
「ていうかダメージの表記って出てたんだ」
〈うん、ずっと出てたよ〉
「ゴブリンの時は私の場合速攻終わったし、ユウナちゃんの時は飽きて見てなかったから気づかなかった…」
「え?!なんか失礼じゃないですか?!」
そんなくだらない会話をしながら笑い合う。
「さてと…」
そんな言葉で一拍付くと男の方へ歩く。
「さてさて、どんな利益をもたらしてくれるのかな?」
ニヤニヤしながらそんな事を問うてみる。
「く…早くやれよ」
男は倒れながらそんな事を言う。
「それが、許されるのは女騎士だけだからな」
〈そうだそうだ!野郎のくっ殺は需要ないんだぞ!〉
どうしたものか…と考えてから一つの結論に至る。
足を大きく振り、サッカーをする如く男の腹を蹴り上げる。
【1ダメージ】
「ぐはぁ?!」
そんな声を挙げるが正直関係ない。
「ほらほら美女が蹴ってやってるだ、喜べ、狂喜乱舞しながら所持品を全部捧げろ」
そうやって楽しんで蹴っていると男の体が光の粒子となって消えた。
「あ、加減ミスった」
〈何してんねん!〉
「うわーリゼさん人殺したよ?やばいやばいこれ捕まっちゃう?」
「大丈夫、プレーヤーキラーにワンちゃんペナルティーがあるかもぐらいだから」
「大丈夫なんです?それ」
そんな会話を交わす。
男が居なくなった場所にボトンとリュックの様な物が落ちる。
「あ、戦利品だ、ユウナちゃん貰っちゃえ」
取り敢えず得体の知られないのでユウナに回収させる。
「あ、はい!」
ユウナは何も考えてないのか何の疑いも無く、リュックを開ける。
【戦斧の大斧】
【スキルの書("大振り(縦)")】
【Fランクダンジョンの鍵】
【5800sp】
【以上を入手しました。】
そんなテキストがユウナの前に表示される。
「ほうほう…なんかあったらと思ってユウナちゃんに開けさせたけど、普通に戦利品だった、じゃ私が取ったほうが良かったな…」
「酷い?!」
〈草〉
そんなこんなで初対人戦は終わった。