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第10話 ジョブとスキルとレベリング


 エリュシオンのジョブとスキルの制度はやや独特だ。


 まずは生まれた時に全員がもらう『固有スキル』。

 個性やギフトとも呼ばれ、すべての生命が必ず一つは持つとされている。冒険者や勇者(プレイヤー)であれば各種宗教施設で変更可能であり、かなりの種類がある。ある程度習熟すると上位スキルに変化したりする。


 次が『普通スキル』。

 炎魔法や毒魔法、木工といった固有の技術で、よくあるRPGゲームのそれと同じ意味だ。それぞれ一〇〇までのレベルがあり、通常は特定行動を繰り返すことにより習熟レベルアップする。例えば「木を伐る」という行動を繰り返すと「伐採」スキルのレベルがどんどん上がっていくわけだ。


 そして複数スキルを育てると獲得できるのが『ジョブ』。

 これが一般的な「職業」であり、剣士や盗賊、黒魔術師や学者など、おなじみのファンタジー系ゲームに出てくるものと同じ。エリュシオンでは育てたスキルの組み合わせによってステータス上にジョブが自然発生し、さらに成長すると上位ジョブへ変化したり、ジョブ称号やジョブ奥義なんかも獲得可能になる。


 スキルもジョブも成長に応じて勝手に発生する場合が多いので「ジョブが生える」「スキルが生える」などと表現されていた。


 エリュシオンはスキル数が全体300とかなり多く、組み合わせにより発生するジョブの数も200を超えると言われていた。隠しジョブも多いとされており、イベントをクリアすると得られる超レアジョブもあったはずだ。


 プレイヤーでなくても、この世界に生れ落ちた者――ゲーム上のNPC、あるいは現地人――なら同様の仕組みでジョブが得られるが、固有スキルだけは変更できない。


 また生まれた環境や身分によっては特定ジョブしか選べない人物もおり、皇帝や貴族、特殊な宗教指導者などはこれにあたる。アルヴェリトもクロが現れるまではこの区分だった。


 ちなみにスキルを使うには戦士も魔法使いも『MP(魔力)』を使う。この辺は他の異世界ファンタジーゲームと同じで、『HP(生命力)』『MP(魔力)』のオーソドックスなリソース管理になっている。


 ふうん、とクロも首を傾げる。


「辞職と共に『皇帝特権』のスキルが消えて、新しい固有スキルが生えたはずだニャ。しかし……読めニャい。文字が青紫っぽいから鑑定系か言語系ニャ?」

「クロにも分からないのか」

「ミーはただのナビペットだから、初期設定的なことしか知らないニャ★」


 可愛くウィンクした顔は胡散臭いが、猫だから仕方ない。


「あとは、なぜか古代魔術ルーンLv一〇〇だけ残ってる」

「古代魔術は血族系の特殊スキルだニャ。代々受け継がれるタイプのやつ」


 バルディオス帝国の始祖は古代魔術の解読者であり、もっとも最初に使いこなした者であると言われている。代々の皇帝も各地の遺跡の管理者であることを求められ、古代魔術の基礎は帝王学と共に学習の最優先とされた。


「なるほど……。でもそれ以外は見事にLv1だな」


 攻撃魔法はもちろん、治癒や鑑定、愛用していた防御魔法や調薬まで戻ってしまったのは素直に悲しい。またやり直しだ。

 クロは画面をざっと眺めて目を丸くした。


「ご主人、三〇〇のスキル全部使ったことあるニャ? おまけにこの痕跡、レベルMAXの一〇〇まで上げてた?」

「え? そうだけど……まあ普通だろ? 前世ではむしろスキルレベリングのためにログインしてたまであったよ」

「レベ上げやりこみ勢ニャ」

「そうだな、レベル上げとジョブ開放ばっかりでメインストーリーを進めなかったので、友人にはしこたま怒られた」

「だから展開の細部が曖昧なんニャね」


 その頃はゲームだけでなく現実世界でも資格取得にハマっていて、仕事が忙しくない時期に次々と取得していったものだ。資格というのは努力に成果が分かりやすい。やればやれだけ報われるのがとにかく嬉しかったし、やるからには結果を出したいという生真面目な性格に合っていたのだろう。


「でも悪役皇帝になってからは、どれだけスキルを上げてもジョブが解放されなくて……おまけに毎回全部レベルMAXにするのはけっこう大変で」

「毎回!? ご主人は七回処刑されてるから、七回とも上限まで!? 三〇〇スキルを!?」

「そうだよ」


 クロは金色の目をさらに丸くして瞬かせた。


「凝り性ニャ……」

「……まあそんなスキルカンスト勢でもコミュニケーションスキルだけは育たなかったんだけどね……ハハ……」

「前の職場のことはいったん忘れて!? 誰にでも合わない環境ってあるニャ!」


 ちょうどその時、クロとアルト、ナーシャのお腹が同時に鳴った。そうだ、昨夜から何も食べていないのだ。


「ちょうどいい、スローライフと言えばレベリングだし、久しぶりに一気レベリングするか」

「一気レベリング?」


 アルトは余裕たっぷりで頷いた。


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