強くなければ彼女にも観覧車にも乗る資格はない
観覧車に乗り夜景を見ながらプロポーズ。その計画だったが予定は前倒しになる。女性が昼間に乗りたいと言い出したからだ。良い雰囲気になるのなら別に夜景でなくても構わない。クリスマスを迎えた夜の遊園地はライトアップされるので彼女は喜ぶだろうと思ったが、昼でも大喜びだったのでエヌ氏は満足だった。これならイケる! と判断しコートのポケットから小箱を取り出し中の指輪を見せる。彼女の目が大きく開いた。今だ!
「結婚して下さい」
「ごめんなさい」
カウンターを喰らったエヌ氏はノックダウンされ椅子に倒れた。そんな彼に娘は申し訳なさそうに言った。
「私の結婚相手はね、もっと筋肉質じゃないといけないの」
それを聞いてエヌ氏はガバッと体を起こした。
「マッチョになればいいの?」
「うん、でも、見せかけだけの筋肉なら要らない。求めているのは、強くたくましい肉体なの」
交際中、彼女は筋肉への嗜好を示さなかった。普通の体格のエヌ氏に満足しているように見えたのだ。だが、そういうのが好みなら、そうなるまでだ。
「わかった、僕、体を鍛えるよ。君のために、マッチョになるよ!」
彼女は頬を真っ赤に染めてエヌ氏の頬に口づけをして、言った。
「あなたが素敵な肉体を手に入れるのを待っているから……私のために、頑張って!」
好きな女性からそう言われて頑張らない男はいない。エヌ氏は自らの肉体を鍛えに鍛え抜いた。そして、それをお披露目する日が来た!
「どう?」
「素敵ぃ!」
晴れて求婚に成功したエヌ氏は彼女の実家を訪問した。彼女の両親はエヌ氏の来訪を喜んでくれた。両親に結婚を認められ、彼女は嬉しさで涙ぐんだ。
「いい時期に来てくれて、本当に良かった。私の夫になる人を街の皆にお披露目できるもの。さあ、あなたの鍛え抜いた肉体を見せる時が来たのよ!」
ちょうど夏祭りの時期で、街は大変な賑わいだった。御神輿でも担ぐのかと尋ねるエヌ氏に彼女は言った。
「男たちが体を組み合わせて人間観覧車を作るの。あなたもよ! 皆と一緒に!」
娘に案内されて出向いた広場には全裸の男たちが手足を絡ませ人間を材料とする観覧車の土台となっていた。
「あなたは軽いから観覧車本体になって」
娘に促されエヌ氏は土台の上に作られた巨大観覧車の一部となった。裸の男たちと抱き合って密着しゴンドラとなる。そこに娘が乗り込むと観覧車は回り始めた。そして立派な観覧車になった婚約者を娘は地上の皆に自慢するのだった。




