表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

ある少年の猫カフェ⑥

「復讐なんて、馬鹿なことを考えるんじゃない」

 当時、父にはそう言われて反対されたし、母や姉にも眉をひそめて窘められた。

 みんな、口をそろえて、ぎゃおの不幸は悲しいけれど、遺された俺のことの方が大事で大切。そう言って、俺が復讐に心を歪めることを心配してくれていたのだ。


 その気持ちは良く解る。

 俺だって逆の立場なら同じことを思うだろうから。


 ──だけど、でも──


 それでも、やっぱり──


「うん………」

 だから家族にはそう言って諦めた風を装っていたが、実を言えば今現在もその気持ちに変わりはなかった。


 引っ越しして素性を隠し、何ごともなかったように生活し、犯した罪から逃れようとする犯人。

 そんな卑劣な奴を、俺は決して『許せない」と思ったのだ。

 今はどこにいるのか、今何をしているのか、なにもかも解らない状況であったとしても。

諦めなければいつか、犯人の男と巡り合うかも知れない。


 儚い期待を胸に、俺は高校生になった今もまだ、放課後、日が暮れるまで、街中をあちこち自転車で走り回っていたのだ。


 そうしてほんの稀に、今日みたいな出来事に遭遇すると、俺は何か考える前に走り出してしまっている。


「とにかくこの子猫の件は俺に任せておけ…犯人らについても、な。だから、お前はもう何もするな。もしどこかでやつらを見掛けても、けっして無謀なことはするんじゃねえぞ?」

「…………わかったよ」

 佐野巡査の言葉に頷きはしてみせたものの、俺は完全に納得なんてしていなかった。

 帰り道のどこかであいつらを見掛けたら、やっぱり殴りかかってしまうかも。

 どうしようもなく湧き上がる怒りを、自制できる自信はなかった。

 だってあいつらはそれくらい酷いことをしたのだ。


「ミャウ……」

 小さなケージの中で震えている仔猫。

 なにも罪のないこの子の兄弟を、面白半分で殺した非道を、あいつらは身をもって償うべきだ。


「…………こいつのこと、頼む」

「任せておけ。あと、お前は真っ直ぐ家へ帰るんだぞ?絶対だからな??」

 しつこいくらいに念を押してくる巡査に背を向けて、無言のまま俺は派出所を後にした。


 自転車を押して歩きながら、とりあえずは家へと向かう。

 見慣れた田舎の住宅街。

 日も暮れたせいで人通りもほとんどない。

 なんだか世界に俺しかいないような静寂。


「………………??」


 ──変だな。

 ふと、気付く。

 いくらなんでも、静かすぎる気がした。

 それに、歩いても歩いても、何故か、ずっと同じ光景が続いている。

「………ループしてる?」

 まさか。気のせいだ。

 ぼうっとしていたから、そんな感覚に陥っただけ。

 なにかの漫画じゃあるまいし。

 そう馬鹿馬鹿しく思いながら次の角を曲がると、やっぱり目の前にまるで同じ住宅街が続いていた。

「…………え?」


 そして俺はこの後、突然、有り得ない世界に足を踏み入れることになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ